厚生労働省労働局長登録教習機関
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本当は最初でやっておくべきことですけども、安衛法での用語の定義をまとめたいと思います。
安衛法では、「労働災害の防止」に関する法律をまとめています。
この法律では、労働災害を防止するために、「事業者」や「労働者」が守るべきことを規定しています。
この「労働災害」や「事業者」、「労働者」とは何かを、安衛法第2条で定義しています。
【安衛法】
特にひねった内容ではないので、分かりにくくはないと思いますが、分かりやすくまとめると、次のとおりです。
・「労働災害」
労働者が業務中に怪我、病気、死亡すること。
・「労働者」
労働基準法第9条では「職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」とあります。
つまり、会社から賃金を得て、仕事をしている人のことですね。
・「事業者」
事業をする人、つまり会社または経営者です。管理者も含みます。
・「作業環境測定」
仕事場の環境の測定分析のこと。
全て言葉のイメージ通りです。
私もこの定義にそって文章を書いているつもりですが、言葉の揺れはあると思います。
特に労働者のことは、「労働者」と書くこともあれば、「作業者」、「作業員」などと書いているとともいます。
揺れはありますが、大体同じような意味なので、そういったのはどうかご看過いただけたらと思います。
さて次に、細かに守るべきことが安衛法及び関連令則でまとめられているのですけども、まず前提となることが第3条と第4条にまとめられています。
第4条 労働者は、労働災害を防止するため必要な事項を守るほか、事業者 その他の関係者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように 努めなければならない。 |
事業者は、労働者が安全で快適な作業環境を提供しなくてはいけません。
機械を扱ったり、建設工事は特に危険を伴うので、2項、3項では特に注意しなくてはいけませんとしています。
労働者の安全については、事業者が責任をもって管理していかなければなりません。
しかし事業者のみの責任ではありません。労働者も事業者が決めた労災防止の取り組みに協力しましょうということですね。
さて、事業者について、建設業では特殊な事業形態があります。
公共事業の建設工事では、自治体等が工事を告示し、いくつかの事業者が入札を行います。
入札の結果、値段など最もよい条件をつけた事業者が、工事を受注することになります。
工事を受注することができる事業者は、原則1社です。
しかし、工事の内容や入札条件によっては1社だけでは、入札参加することが難しい場合もあります。
特に規模の大きな工事になるについて、1社単独では条件クリアが困難になります。
そういった場合、複数の事業者が集まり、仮に1つの事業者を結成し、条件をクリアし、入札に参加することができます。
これを共同企業体(ジョイント・ベンチャー。通称JV)といいます。
建設業の工事現場では、JVは一般的に行われているのですが、安衛法第5条では、このJVについて規定しています。
JVは複数の事業者の共同体ですが、比率は50/50ではない事が多いです。主たる事業者とサブになる事業者があるのが一般的です。
第5条では、JVの代表者を都道府県労働局長に届けねばならないとあります。
代表者を「1名」と人扱いと書かれていますが、これは会社と同義です。「事業者」なので、人扱いなのです。
この場合の代表者は、メインの事業主を届け出るのが、一般的ですが、届出がなければ都道府県労働局長が指名しますとあります。
なおサブになる事業者の代表者は届け出る必要はありません。
建設業特有の特殊な事業形態でも、事業主や労働者としての責務を果たしてくださいということです。
さて、以上が法の冒頭にある定義と原則です。その他細かな定義については、初出の条文で規定されています。
これらについては、()内で、「以下、○○という」と定義されています。
次章以降は、安全管理体制など、詳細な規定になっていきますので、それは徐々に見ていければと思います。
とはいえ、ついでなので、もう幾つかの定義をまとめたいと思います。
事業者はほとんど企業などの組織とイコールだと、先ほど書きました。
事業者は立場により、「注文者」、「元方事業者」、「関係請負人」と言われ、それぞれで責務が違ってきます。この定義について、まとめていこうと思います。
文章だけでは、分かりづらいかと思いますので、拙いですが図にまとめてみました。
図では、「注文者」、「事業者」、「関係請負人」の枠があります。
それぞれ、条文で定義されていますので、抜粋してみます。
「事業者」については、もういいですね。
まず青枠の注文者について。
明確な定義として書かれているわけでないのですが、文脈から定義できます。
安衛法第3条3項の「建設工事の注文者等仕事を他人に請け負わせる者」、同法第15条1項の「事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が2以上あるため、その者が2以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)」等から、次のように定義できます。
「注文者」とは、「他人に業務を請け負わせているもの」ということです。
次に「発注者」についてです。
「発注者」は、仕事を他人に注文して、請け負わせているので、「注文者」に含まれます。
定義としては、安衛法第30条2項に「発注者(注文者のうち、その仕事を他の者から請け負わないで注文している者をいう。以下同じ。)」とあるので、自分発の注文者のことです。
公共工事等であれば、国や都道府県、市町村などの自治体がこれに当たります。公共工事以外でも、ビルを作るなどであれば、注文した企業が発注者ですね。
他から仕事を請け負わず注文するものが「発注者」ですが、注文者には他から請け負って、その仕事の一部を他の事業者に注文することもあります。
発注者から、最初に仕事を請け負った事業者は、「元方事業者」と言います。
そして「元方事業者」から仕事を請け負った事業者を「関係請負人」と言います。「関係請負人」から仕事を請け負った事業者も「関係請負人」といいます。
これらの関係は、元請→1次下請→2次下請などとも言いますね。
下請けに、仕事を注文しているので、最後次の事業者以外は、「注文者」になります。
さてこれらの定義は、安衛法第15条にあります。
「元方事業者」は「事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が2以上あるため、その者が2以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)」とあります。
「関係請負人」は「請負人(元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によって行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。以下「関係請負人」という。)」とあります。
引用条文が長くなってしまったのですが、要約すると次の通りです。
「元方事業者」は、「一の場所で行う仕事のうち、一部を請負人に請け負わせて、自分も仕事の一部を行う最も先次の請負人」のこと。
「関係請負人」は、「元方事業者から仕事を請け負っている後次全ての事業者」のことです。
まだ分かりづらいので、さらに簡単にします。
つまり、「元方事業者」は「発注者から仕事を請け負って事業者で、他の事業者(協力会社)に仕事を回す最初の注文者」です。 「関係請負人」は、「元方事業者以外の協力会社」です。
少しややこしいですが、発注者→元方事業者→関係請負人の関係であると考えて下さい。
さて、元方事業者の一部の業務を行うものは「特定元方事業者」と呼ばれます。一部の仕事とは、建設業と造船業なのですが、責務も増えます。
詳細については、改めてまとめます。
今回は、安衛法などで使用される定義についてまとめました。
私の文は、多少揺れはありますけども、その点はどうかご容赦下さい。
まとめ。
【安衛法】
第2条 労働災害、労働者、事業者、作業環境測定の定義を指定ます。内容は言葉のままです。 |
第3条 事業者は、労働者の安全で快適な労働環境を提供しなくてはいけません。 |
第4条 労働者は、事業者に協力して、安全な仕事をする努力しなければいけません。 |
第5条 事業者は、共同企業体(JV)を作る時は、都道府県労働局長に届出をしなくてはいけません。 |
その他用語のまとめ(条文はカット)
・注文者 他人に業務を請け負わせているもの。 ・発注者 ・元方事業者 ・特定元方事業者 |