○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

猫井川、泥にダイブする。

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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

今日も犬尾沢ガウたちは、水道管工事に来ています。

昨日は雨で作業を中止したので、今日は遅れを取り返さなくてはいけません。
犬尾沢、保楠田コン兎耳長ピョン猫井川ニャンは意気込んで現場に乗り込んできました。

材料や機械などは、現場に保管しているので、すぐにでも作業に取りかかれます。
準備は万端なのです。

全員が現場に到着すると、犬尾沢は全員を集めて、打ち合わせを始めました。

「今日は、昨日の遅れを取り戻していくから。
 俺がバックホウで掘っていくから、兎耳長さんは管の準備を、保楠田さんと猫井川は、配管をやっていってください。
 猫井川は、今日はカメラと黒板持って、撮影すること。」

てきぱきと各人の作業分担を振っていきます。

「今日は雨でぬかるんでるから、掘削した場所から滑り落ちないように注意して下さい。

 材料とか工具も、昨日は放置してたから、猫井川はまずチェックしてくれ。
 
 工具とか材料を、泥の上に置くと汚れるから、なるべく一箇所に集めて。
 整理整頓をするようにしてください。
 使ったものを、ぽいぽい放置しないように。

 それじゃ、今日も1日ご安全に!!」

犬尾沢の号令のもと、4人は作業に当たりました。

猫井川は、犬尾沢に指示されたように、材料置き場に向かい、材料や工具が壊れたり、ひどく汚れたりしていないかをチェックすることにしました。

「うわ、ビショビショ」

雨に濡れたブルーシートの表面には、水滴がたまり、一部水たまりにもなっています。

なるべく濡れないように、ブルーシートをまくり上げていきますが、残念ながら無被害にはならなかったようです。

「おう、猫ちゃん、雨にでもうたれたの?」

道具を取りに来た保楠田が、猫井川を見て、言いました。

「いやー、思った以上に濡れてしまいました。
 1人でブルーシート取るのは、きびしいですね。」

ブルーシートを外し終え、材料などのチェックを行いながら、猫井川は言いました。

「全部、問題なさそうです。

 それじゃ、道具持って仕事しましょうか。

 バタ角(角材)は今日使いますか?」

猫井川は、ショベルなどをまとめながら、保楠田に聞きました。

「配管を置く時に使うかもしれないから、一応持って行こうか。」

保楠田も道具を持ち、猫井川に答えたようにバタ角を数本抱えました。

「仕事する前に、服がドロドロに汚れちゃうね。」

本当に。
2人とも作業を開始して、まだ10分も経っていないのに、すでに作業服は泥で汚れていたのでした。

犬尾沢は、バックホウでどんどん穴を掘っていきます。
雨でぬかるんでいるせいか、土はどんどん掘れていきます。

穴の底に溜まった雨水を、ポンプで吸い上げつつ、水道管を設置していく作業を進めていきました。

掘削、配管、埋め戻しのサイクルをどんどん繰り返しながら、作業は進んでいきます。

「ちょっと、休憩しましょう。」

犬尾沢は、バックホウのエンジンを切り、3人に伝えました。

汗と泥にまみれた3人は、休憩の声で少しホッとしました。

「猫井川、あまりあちこちにショベルとかバタ角を置いておくなよ。
 つまづくぞ。」

穴の周りにバタ角や材料を置いていた猫井川に、犬尾沢はちくりといいます。

「はい、後で片付けておきます。」

ちらっと横目で、半分泥に埋まったバタ角を見つつ、猫井川もみんなともに休憩に入りました。

だんだん季節は進み、山は色づいています。
自動販売機では、飲み物もホットを選ぶようになり、プルタブを開く前に、しばらく両手を温めてしまいます。

「すっかり、寒くなってきたね」

保楠田がつぶやくと、犬尾沢が答えます。

「本当ですね。これから忙しくなりますよ。」

年度末工期の仕事が多い公共事業。
(株)HHCもこれからが忙しさのピークになっていきます。
こうした休憩時間が、一時ほっと息つく時間なのです。

「あ、そうだ、猫井川。
 カメラは持ってきてる?
 ちょっと見たいところがあるんだけど。」

犬尾沢が、猫井川に聞きました。

「カメラは、バックホウの所に置いてますね。
 持ってきましょうか?」

「うん、頼む。」

猫井川は、立ち上がると、掘削していた場所まで小走りにかけて行きます。

カメラはバックホウの近くで、黒板と一緒に置いていました。

カメラを取り上げると、振り返り、走りだしました。

その時です。

猫井川が一歩を踏み出した先には、バタ角が1つ泥に汚れて横たわっていました。

猫井川が後で片付けると言ったものです。

猫井川のつま先が、バタ角の端にかかると同時に猫井川の視界が傾きました。

あっ
という間もなく、目の前に茶色の固まりが近づいてきます。

バシャッ!

猫井川は、泥の中に前半身を埋めてしまったのでした。

「いって~、うわ最悪・・・」

立ち上がりながら、猫井川はつぶやきます。

「口の中がシャリシャリする。」

顔も服もドロドロになってしまいました。

「あははは~、猫井川大丈夫か~?」

遠くから、犬尾沢たちの笑い声が聞こえます。

「大丈夫ですけど、最悪です。」

顔の泥を拭いながら、猫井川はみんなの所に近づいてきました。

「あっちで水道使えるから、洗って来い。
 いや~、見事にコケたな~。あははは。
 だから、バタ角を負いておくなと言ったろう。」

カメラは防水だから大丈夫なものの、大丈夫じゃないのが猫井川。
水道水で顔と服の汚れを洗う猫井川。

ヘックシと、くしゃみが出る寒空の下でした。

雨でぬかるんだ土の地面に、転けてしまうのは、なかなか悲惨です。

夏ならともかく、秋から冬にかけて寒い季節に、水で汚れを落とすのも、きついものがあります。
少し体を冷やせば、風邪をひきますから。

今回は、転倒ですね。
猫井川は怪我なく、ドロドロに汚れてしまったくらいですみました。
しかし世の中では、転倒事故というのは、ものすごく多いのです。

死亡事故にまで至らなくとも、休日4日以上の死傷事故との原因として、転倒事故は、全体の約20%を占め、原因のNO.1なのです。

猫井川が所属している建設業では、他の原因が上位を占めますが、製造業や小売や福祉などの第三次産業では、上位を占めます。

転倒とは、つまづいたり滑ったりして、転んでしまうことです。

足元の不注意と言ってしまえば、それまでですが、転ぶ要因は不注意だけではありませんね。

例えば、通路に段差がある、濡れてツルツルしているなどは、転倒する原因になりますね。
ほんの数ミリの段差でも、つまづく原因になったりするんですよ。

また今回のヒヤリハットのように、材料や工具が通路にあり、それにつまづくというのもあります。

どのような仕事であっても、通路や事務所内を歩かないことはありません。
つまり誰しもが転倒する可能性はあるのです。

一方で、転倒を防ぐことも可能です。
足元に注意するだけでなく、段差を解消するなどで、対処するのは大切ですね。

そして何より、通路になっている所に物は置かない。
これが最も大切なことではないでしょうか。

さて、今回のヒヤリハットをまとめてみたいと思います。

ヒヤリハット ぬかるんだ場所を走っていたら、バタ角につまづいて、転んだ。
対策 1.作業上でも、物をあちこち置かない。一箇所にまとめておくなどする。
2.「整理」、「整頓」、「清掃」、「清潔」、「しつけ」の5Sを徹底する。

「整理」、「整頓」、「清掃」、「清潔」4S、これに「しつけ」を加えた5Sというのは、耳にしたことはあるのではないでしょうか。

5Sは、今回のヒヤリハットのような転倒に限らず、事故を防ぐために最も大切なことです。
材料や工具が、雑多に置かれている場所では、それだけで事故や怪我の要素が増えてしまいます。
安全に作業をするためには、整理や整頓等は重要な事ですし、すぐに実行できるものです。

さらに5Sは、安全な作業だけでなく、作業も効率化してくれます。
使いたい道具がすぐに使えるのと、どこにいったのか探して探してするのでは、どちらが効率的かは、誰でもわかりますよね。

ちょっと気になったら、片付ける。
このことだけでも、充分に安全活動になるのですよ。

猫井川は、バタ角を放り出しておいたがために、それに引っかかってしまいました。
後で片付けようと考えていたようですが、ちょっと片付けるのが遅かったようですね。

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