厚生労働省労働局長登録教習機関
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荷物を運ぶ仕事には、フォークリフト等の荷役運搬機械を使用します。
そのような機械使用にあたっての条文は、個々の機械については、まとめてきました。
今回は機械の使用によらない、作業方法についての規定をまとめます。
機械の使用規定と重複しているものも多いので、どこかで見たようなものがほとんどです。
全ての荷役運搬機械に共通しているものなので、まとめていきます。
また、機械によらないものとして、「はい」の取り扱いもまとめます。
「はい」とは、倉庫、上屋又は土場に積み重ねられた荷物のことです。
穀物や鉱物のバラ状態は除くので、梱包された状態の荷物になります。
倉庫にうず高く積まれた荷物を想像してもらえれば、「はい」のイメージはつくかなと思います。
荷役運搬作業については、安衛則に規定されています。
【安衛則】
第7章 荷役作業等における危険の防止
第1節 貨物取扱作業等 第1款 積卸し等 |
(不適格な繊維ロープの使用禁止) 第418条 事業者は、次の各号のいずれかに該当する繊維ロープを貨車の 荷掛けに使用してはならない。 1)ストランドが切断しているもの 2)著しい損傷又は腐食があるもの |
(点検) 第419条 事業者は、繊維ロープを貨車の荷掛けに使用するときは、 その日の使用を開始する前に、当該繊維ロープを点検し、 異常を認めたときは、直ちに取り替えなければならない。 |
(中抜きの禁止) 第421条 事業者は、貨車から荷を卸す作業を行うときは、当該作業に 従事する労働者に中抜きをさせてはならない。 2 前項の作業に従事する労働者は、中抜きをしてはならない。 |
第422条 削除 第423条 削除 第424条 削除 第425条 削除 |
この章では、削除されている条文がたくさんあります。
これらがいつ削除されたのかまでは、調べていないのですが、理由としては、荷役運搬作業についての条文の追加に伴い、重複している箇所を削除になっとのではと、考えられます。
まずは、トラックなどの貨物自動車などで、荷物を運ぶときには、荷台に荷物を載せただけでは、走行中に落ちたり、動いたりしてしまいます。
走行中に、荷台から荷物が落下してきたら、周りを走っている車はたまったものじゃありませんよね。
ビニールが落ちてくるだけでも、後ろを走っている車は危なくて仕方ありません。
走行中に落下させないためには、しっかり固定する必要があります。
固定には、ロープなどを使用するのですが、このロープが弱かったら、固定する意味がありませんよね。
そのため、十分な強度のものを使用するのは当然ですが、切れていたり、腐食していたりするロープは使用してはいけません。
そしてロープを使用する前には、ロープの状態を点検します。
当然ですが、点検して、異常があることが確認されたら、そのロープは使ってはいけません。
荷役作業において、1つの荷物で100キロ以上の重さのものを積み降ろしする場合は、作業指揮者を指名し、作業を指揮させなければなりません。
単体で100キロとなると、かなりの大きさになります。
人力も何人もの力を合わせれば、できなくもありませんが、クレーンを使うことが多いはずです。
このクレーン作業でも、指揮者が周囲の状況を確認し、安全に確実に作業を指揮する必要があるのです。
また荷物が何段かに積み重なっている状態であれば、中抜きをしてはいけません。
必ず一番の上のものから、順に荷物を取っていきます。
この場合のだるま落としは、命にかかわるので、やめましょう。
これらの条文は、構内運搬車や貨物自動車でも規定されています。
あえて、荷役作業として規定しているということは、それ以外の荷役運搬機械、フォークリフトなどでも適用されるということです。
フォークリフトは、荷物を車体前方のフォークに載せますが、100キロ以上の単品を載せる場合は、作業指揮者が必要ですし、複数段のものであれば、中抜きをしてはいけないのです。
状況としては、多くないかもしれませんが、作業時の注意として理解し、守らなければならないということですね。
さて、機械にかかわらない条文が1つありますね。
それは、ふ頭での荷役作業についてです。
ふ頭とは、港の岸壁のことです。
船が接岸し、人や荷物を載せたり、降ろしたりするスペースのことです。
ふ頭での作業は、主に船に関わるものですが、特に注意すべきことは海への転落ですね。
ふ頭での作業では、灯りを点け、しっかりと照度を確保しなければなりません。
荷役では、少なくとも70ルクスというのが一つの目安ですが、少なくとも海と岸壁の境がはっきりと分かり、荷物や機械がはっきりと分かる明るさは必要ですね。
そして、岸壁に通路を設ける時は、少なくとも90センチ以上の幅を確保しなければなりません。
狭いと海に落ちてしまいますからね。
当然ですが、通路には荷物や障害になるものを置くのはダメです。
通路の中でも、橋や、パナマ海峡にあるような船を上げ下げする水路(こう門)など、特に海に転落する危険が高い場所には、囲いや柵などで、転落防止措置をしなければなりません。
これは、港湾で備えるべきものかもしれませんが、荷役作業時は事業者の責任において、これらの設備を設けなければなりません。
港の船舶への荷物の積み下ろしは、転落の危険があるため、十分に注意が必要になるのです。
では、次は倉庫内の荷物、「はい」の取り扱いについての規定をまとめます。
(はい作業主任者の選任) 第428条 事業者は、令第6条第12号 の作業については、 はい作業主任者技能講習を修了した者のうちから、 はい作業主任者を選任しなければならない。 |
(はいの間隔) 第430条 事業者は、床面からの高さが2メートル以上のはい(容器が袋、 かます又は俵である荷により構成されるものに限る。)については、 当該はいと隣接のはいとの間隔を、はいの下端において 10センチメートル以上としなければならない。 |
(はいの崩壊等の危険の防止) 第432条 事業者は、はいの崩壊又は荷の落下により労働者に危険を 及ぼすおそれのあるときは、当該はいについて、ロープで縛り、 網を張り、くい止めを施し、はい替えを行なう等当該危険を 防止するための措置を講じなければならない。 |
(立入禁止) 第433条 事業者は、はい付け又ははいくずしの作業が行なわれている箇所で、 はいの崩壊又は荷の落下により労働者に危険を及ぼすおそれの あるところに、関係労働者以外の労働者を立ち入らせてはならない。 |
(照度の保持) 第434条 事業者は、はい付け又ははいくずしの作業を行なう場所については、 当該作業を安全に行なうため必要な照度を保持しなければならない。 |
(保護帽の着用) 第435条 事業者は、はいの上における作業(作業箇所の高さが床面から 2メートル以上のものに限る。)を行なうときは、墜落による労働者の 危険を防止するため、当該作業に従事する労働者に保護帽を 着用させなければならない。 2 前項の作業に従事する労働者は、同項の保護帽を |
第436条 削除 第437条 削除 第438条 削除 第439条 削除 第440条 削除 第441条 削除 第442条 削除 第443条 削除 第444条 削除 第445条 削除 第446条 削除 第447条 削除 第448条 削除 |
「はい」とは、ダンボール箱や木箱、麻袋などでまとめられた荷物であり、倉庫ではこれらが山積みに保管されています。
「はい」の山は、当然ですが、自然に積み重なるものではありません。
人為的に積み上げげられ、必要応じて崩されて、倉庫の外に持ちだされます。
いつも積み上がっている「はい」の中身は、常に出たり入ったりしているのです。
「はい」の積み上げ、積み降ろし作業で、注意しなけれればならない事故は、墜落と倒壊です。
これらの事故防止を目的としたものが、主な規定になります。
「はい」は、積み重ねて保管しますが、高さが1.5メートルを超える場合は、安全に昇り降りできるようにハシゴや階段などの昇降装置を設けなければなりません。
ただし、「はい」の積み方が階段状になっており、「はい」を使って安全に昇り降りができる場合は、除外されます。
垂直に積み重なった「はい」を、ロッククライミングのようによじ登るというのは、禁止なのです。
やる人はいないでしょうけども。
「はい」を積み上げ、高さが2メートル以上になる場合は、はい作業主任者を選任しなければなりません。
はい作業主任者は誰でもなれるわけではありません。
資格が必要です。
その資格は技能講習を修了することで得られます。
はい作業主任者は、安全に作業するために、現場を仕切らなければなりません。
作業方法を決定し、労働者を指揮し、倒壊防止策を取ってから、作業に着手するなどの措置を行います。
作業者が墜落や荷物の倒壊に巻き込まれないように、十分に注意して、作業を進めていく必要があるのです。
袋やます、俵の「はい」の並べ方ですが、ギュウギュウ詰めはいけません。
最も下の段で、10センチ以上の間隔を開けて、並べます。
袋状のものなどは、すぐに横に寄れてしまい、隣の荷物にもたれかかってしまいます。
もたれかかられた荷物が、そのまた隣の荷物にもたれかかりを繰り返すと、端の荷物は倒壊してしまうかもしれません。
そのような、もたれかかりを防ぐためにも、多少の隙間は確保しておく必要があるのです。
積み上げた「はい」を取り崩し、外に持ち出す作業時の注意です。
貨物自動車などの荷物などとも同様ですが、中抜きは禁止です。
そして、袋やます、俵などのものは、手前が低く、奥に行くほど高いというひな壇状に荷物を崩していきます。
この場合、各段の高さは1.5メートル以内とします。
これは、荷物が崩れてしまった場合に、勢いを軽減するためです。
垂直の壁であれば、後方の荷物に押されると、前方に倒れてしまいますが、段状になっていれば、倒れてくることはありません。
一番上の荷物が転がったとしても、段を下るごとに、勢いは軽減されます。
地山の掘削でも、崩れやすい地質であれば、法面に勾配をつけて掘削します。
荷物の山でも勾配をつけて、崩壊を防ぐのです。
しかしながら、積み上がった荷物は、地震などちょっとしたことで崩れてしまうこともあります。
荷物が崩れることを防止するため、ロープなどでくくったりして、固定する必要もあります。
その他にも網を掛けたり、杭で足元を固定するなども方法もありますが、いずれにせよ、「はい」が崩れないようにして、保管します。
「はい」が最も崩れやすくなるのは、積み上げたり、降ろしたりする作業中でしょう。
外部から力を加えるので、変な力がかかると、倒壊してしまいますし、持ち上げている荷物が落ちてくるかもしれません。
倒壊して、巻き込まれる危険があるので、作業中は関係者以外は立ち入り禁止としなければなりません。
倉庫内は、荷物を保管するためだけなので、薄暗い状態です。
しかし作業中も薄暗くては、危険です。
荷物を運びますし、場合によっては、「はい」の山の上に乗ることもあります。
作業中は、十分な照度を確保しましょう。
事務仕事より粗な作業なので、70ルクス以上が目安になりますが、きちんと荷物や作業状況が把握できる程度には明るくしましょう。
作業者は「はい」の山の上に、登ることもあります。
その場合に、注意しなければならないのが、墜落事故です。
2メートル以上の高所で、頭から落ちると、場合によっては致命傷になります。
2メートル以上の高所で作業する場合は、作業者に必ず保護帽、ヘルメットを着用させましょう。
この場合の保護帽は、内部に発泡スチロール製の衝撃吸収ライナーが付いているものを使用します。
飛来落下用の保護帽に比べ、墜落の衝撃を8分の1まで軽減してくれるライナーです。
必ず内部を確認して、発泡スチロールが付着しているものを使用しましょう。
荷役作業では、荷物の崩壊から作業者を守ることが大事です。
加えて、「はい」作業では、墜落から守らなければなりません。
荷物を運ぶ作業は、職種に関係なく発生するものですが、大きなものや、たくさんのものを運ぶ場合には、相当の注意が必要になるのです。
運送業の死傷事故で最も多いには、交通事故ではなく、実は荷物の積み降ろしの際の事故なのです。
交通事故は、致命傷や大怪我になる事故になるので、注意が向きますが、荷物の積み降ろしも同じくらい注意が必要なのです。
荷役作業は、一定の資格が必要なものもありますが、誰でもできることです。
誰でもできるものは、どうしても簡単に見られ、安全対策がおろそかになりがちです。
しかし、重大な事故になりうる作業でもあるのです。
荷物を運ぶ際には、自分自身も運んでいるのだという自覚を持って、安全で確実な荷役作業を心がけたいものですね。
まとめ。
【安衛則】
第417条削除 |
第418条 不適格な繊維ロープを貨車の荷掛けに使用してはならない。 |
第419条 繊維ロープを貨車の荷掛けに使用するときは、 その日の使用を開始する前に、点検しなければならない。 |
第420条 一の荷でその重量が100キログラム以上のものを 貨車に積む作業等を行うときは、指揮者を定め、 その者に次の事項を行わせなければならない。 |
第421条 貨車から荷を卸す作業を行うときは、中抜きをさせてはならない。 r> |
第422条 削除 第423条 削除 第424条 削除 第425条 削除 |
第426条 ふ頭、岸壁等の荷役作業を行なう場所については、照度の確保、通路の確保、危険箇所には囲いなどの措置をとらなければならない。 |
第427条 はいの集団上で作業を行なう場合において、高さが床面から1.5メートルをこえるときは、安全に昇降するための設備を設けなければならない |
第428条 はい作業主任者技能講習を修了した者のうちから、 はい作業主任者を選任しなければならない。 |
第429条 はい作業主任者には、安全対策や作業指揮などを行わせねばならない。 |
第430条 床面からの高さが2メートル以上のはいについては、隣接のはいとの間隔を、はいの下端において 10センチメートル以上としなければならない。 |
第431条 床面からの高さが2メートル以上のはいについて、はいくずしの作業を行なうときは、中抜きをしないなどを守らせなければならない。 |
第432条 はいの崩壊又は荷の落下の危険のおそれがあるときは、ロープで縛るなどの措置をと慣れなければならない。 |
(立入禁止) 第433条 事業者は、はい付け又ははいくずしの作業が行なわれている箇所で、 はいの崩壊又は荷の落下により労働者に危険を及ぼすおそれの あるところに、関係労働者以外の労働者を立ち入らせてはならない。 |
第434条 はい付け又ははいくずしの作業を行なう場所については、作業を安全に行なうため必要な照度を保持しなければならない。 |
第435条 はいの上における作業を行なうときは、墜落による労働者の危険を防止するため、保護帽を着用させなければならない。 |
第436条 削除 第437条 削除 第438条 削除 第439条 削除 第440条 削除 第441条 削除 第442条 削除 第443条 削除 第444条 削除 第445条 削除 第446条 削除 第447条 削除 第448条 削除 |
はい作業についての記事を拝見いたしました
色々調べてわからない点がありましたので、教えてください
荷の高さが2メートル以上であれば、はい作業主任者を選任しなければいけないとありますが、2段以上の棚に在庫品を置いてる場合、地面からの高さだと2メートルを超えますが、棚からだと2メートル以内であれば、はい作業主任者は不要でしょうか?
作業は脚立使用で手積みとなります。
コメントありがとうございます。
質問の件ですが、安衛則第431条に「床面から2メートル以上のはい」という表現があるので、床面からの高さで考えるのがよいのではないでしょうか。
ありがとうございます!
いつも必要な時に拝見させていただいております。
上記、はい作業ですが、床面からの高さ2m以上ということは、理解できますが、同時に、重さについては、いかがでしょうか?
420条に、100kg以上のものを貨車に積む・・・とありますが、
床面に積むときも、重量制限はあるのでしょうか?
もしよろしければ、お願いします。
こんにちは。
返信が遅くなり、申し訳ございません。
ご質問の件、調べてみたのですが、重量について規定は見当たらないようです。
調べ方が十分でないかもしれませんが、構造物や建物の強度を考えて積む必要がありそうです。
420条は作業指揮者選任についてなので、重量制限というわけでありませんね。
危険だから、作業指揮者を選び安全に作業してくださいという意味です。
はい作業主任者技能講習を受講するにあたり要件として「3年以上従事 した経験を有する者」とありますが、新規にはい作業をすることになった場合(作業スペースの問題からあらたにはい作業が追加)は経験を積むことができません。
このような場合は はい作業を他社で経験する(3年?)、はい作業主任者資格者を外部から受け入れるといったようなことしか思いつきません。
パレットの移動などフォークリフトの運転など含め物流部門での従事があっても「はい付け」「はい崩し」の作業にあたらない場合はやはり実務経験年数には含められませんでしょうか?
はい作業主任者が不在のまま実務経験をすることになってしまうため
何か手段はないか検討しています。