○現場の安全高所作業・足場

足場組み立て時にもご注意を。手すり先行工法

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高所作業での事故は、高いところから落ちる事故です。

事故の種類は多様であり、ビルの屋上作業から落ちる、橋の上から落ちる、崖から落ちる、ハシゴや脚立から落ちるなど様々な場所からの墜落・転落です。

当然、足場作業中に墜落ということも少なくありません。

足場は、高所作業時に使う設備ですが、実はこの足場を組み立て解体するときの事故も多いのです。

高所作業のための設備を作るのも、高所作業になります。
特に何層も重なる足場の上は、高さ10メートル、20メートルになります。

作業途中は、設備が完全ではありません。
手すりなどの墜落防止柵もまだついていないことも多いのです。

そのような場所での作業するのですから、墜落の危険があるのは、考えてみればその通りです。

足場を組み立て解体する時の墜落事故を減らす。そのための工法があるのです。

それは、手すり先行工法といいます。

先行工法としては、今まで土止め先行工法や足場先行工法を紹介してきました。

手すり先行工法も厚生労働省より、ガイドラインが出ていますので、詳細はこちらをご覧ください。

手すり先行工法ガイドライン

先行工法と名のつく工法の共通点は、作業者が危険な場所に入る、危険を伴う作業を行うのに先立って対策を行うという工法です。

土止め先行工法であれば、掘削溝に入る前に土止め支保工をします。
足場先行工法であれば、建物を建てる前に、足場を組み立てます。

いずれも本作業の前に、安全対策を行うものですね。

では、手すり先行工法は、何をどのような作業に先立って行うのでしょうか?

何をかは明白ですよね。手すりです。
何に先立ってかというと、作業床です。

手すり先行工法とは、最上層の作業床を設置する前に手すりを先に設置する工法ということです。

これはどんな効果があるのでしょうか?

一般的な足場の組立方は、1段下の層から、作業床を置きます。
作業床を置いたら、次に最上層に登り、支柱や手すりなどを取り付けていきます。

これが通常のやり方です。

この時どんな危険があるでしょうか?

最上層に作業床だけを置いているということは、その周りに何もありませんね。
安全帯(要求性墜落制止用器具)を掛けるところすらありません。
風にあおられ、体がよろめいてしまっても支えになるものがありません。

足を踏み外せば、墜落する危険があるのです。

この事故を防ぐのが、手すり先行工法なのです。

手すり先行工法では、最上層の作業床を置く前に、1段下の段から、手すりを先に設置します。

周囲を囲ってから、ようやく作業床を置きます。
そうなると最上層の作業床に登っても、安全帯を掛けられる手すりがありますし、よろめいた時にも手すりを掴むことができますよね。

墜落の危険がグッと下がります。

これが狙いなのです。

最上層の作業床の上で、作業している時に墜落というのは、よく起こっていました。
実際怖い思いをした作業者もたくさんいたと思います。

手すりがあるというだけで、ずいぶん心理的にも安心感がでるものなのです。

では、手すり先行工法にはどのような方法があるのでしょうか。

代表的な方法として3種類あります。

これら3種類の作業方法を、簡単に紹介してみます。
もっと細かく知りたい場合は、上記のページのガイドラインをご覧ください。

1.手すり先送り工法

最上層の作業床を設置する前に、上まで伸びた支柱に伸縮またはスライド式の手すりを取り付けます。
この手すりを、最上層まで上げていき、固定します。

これで手すりの設置が完了になります。
その後、作業床を置いて、固定します。

2.手すり据置工法

最上層の作業床を設置する前に、下の段から手すり付きの枠を持ち上げ、市中にある所定のホルダーに取付ます。

大体作業床の1層の高さは、2メートル弱なので、手で持ち上げて、取り付けます。

その後作業床を取り付けます。

3.手すり先行専用足場工法

これは、手すり先行工法のための材料を使います。

支柱になる建わくと、手すりと筋交いが合わさった建わくを組み立てていきます。

支柱の高さは、1層の高さより、少し高いので、最上層の作用床より突き出ます。
これにピッタリと手すりの建わくを組み付けていきます。

この専用足場も市販されていますし、レンタルもされていますので、業者に依頼すれば利用することができます。

いずれも、使用する材料が異なるだけで、作業方法は同じです。

ポイントは、最上層の作業床を取り付ける前に、手すりを付けるです。

この手すり先行工法は、ある種盲点をカバーする工法といえるでしょう。

足場作業は、高所作業時の墜落を防ぐ設備ですが、今までは高所作業だけに注目し、足場組み立て時の事故にスポットは当たりにくい状態でした。

対策として、作業用の踏み板を設けることや安全帯を着用することが安衛則で規定されています。
これだけでは、事故を防ぎきれませんでした。

手すり先行工法で、完全に足場組立解体時の事故を無くすことは不可能でしょうが、最上層での作業時に墜落するリスクは軽減したと思います。

この手すり先行工法については、土木施工管理技士や建設施工管理技士などの安全管理でも、出題傾向にありますね。参考書には、必ず紹介されています。

建設業界を上げて、推進している工法だと言ってもいいでしょう。

足場での作業は墜落が多く、墜落事故撲滅は今までも、これからも重要課題です。

高所作業で、足場を組み立てる必要がある場合は、積極的に手すり先行工法を導入していけるといいですね。

コメント

  1. 木村雅夫 より:

    すいません、質問させて頂きます。
    我が家の前に9階建てのマンションが建てられています、鉄骨が立ち上がり足場が組まれましたが、その足場の組み立て形が疑問です。
    作業員が鉄骨の各階に1人づつ立ち手渡しで9階まで上げていましたが、長い物は手渡し出来ますが、小さな物は投げ上げていました。これが普通なのでしょうか?