厚生労働省労働局長登録教習機関
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労災で最も多い事故は、「転倒」です。
転倒とは、文字通り、転ぶことです。
転んで、体を打ったり、切ったり、ひどい場合は骨折などの怪我をしてしまいます。
転倒は、ごくごく日常的にありふれた事故ともいえます。
そのため、実際に転んでも、「転んじゃった」と思う程度で、危険だと思いづらいものでもあります。
実は、転倒による死亡者数は、交通事故よりも多いのです。
これは驚くべき事実だと思います。
そして転倒事故は業種によらず、起こります。
特に店舗や飲食店、福祉介護の業種では、転倒による怪我が非常に多いのです。
何となく大したことがなさそうだけど、実は結構重大になるのが転倒事故といえそうです。
この転倒事故を減らすために、厚生労働省が主導して、「STOP!転倒災害プロジェクト2015」という取り組みがスタートしました。
今回は、このプロジェクトを紹介し、転倒事故防止についてまとめてみたいと思います。
厚生労働省サイト内では、こちらのページで紹介しています。
「STOP!転倒災害プロジェクト2015」
まず、このプロジェクトの期間に触れておくと、平成27年1月20日から12月31日までです。
平成27年の1年間を通して、実施になります。
年内はこのプロジェクトに則って、何かしらのキャンペーンや活動があるかもしれません。
このプロジェクトの目的は、明確ですね。
ズバリ、「転倒事故を減らす」ことです。
このプロジェクトの紹介ページでは、大きく3つのコンテンツがあります。
1.転倒の原因は何か?
2.転倒事故を防ぐためには?
3.転倒事故を防ぐ設備や教育
これらについて、簡単に紹介していきたいと思います。
1.転倒の原因は何か?
一口に転倒といっても、その原因は大きく3つに分類できそうです。
原因1 「滑る」
原因2 「つまづく」
原因3 「踏み外す」
どれもよくありそうですね。
1つずつ見ていきます。
「滑る」は、ツルッと足が滑り倒れるというものです。
滑る原因には、床が滑りやすい状態、水や油で濡れている、ビニルなど滑りやすいものの上を歩くなどがあります。
冬場であれば、凍結している道路なども滑りますね。
「つまづく」は、主につま先がひっかかり、前のめりに倒れたりすることです。
床の上の荷物や、階段、段差などで起こりやすいですね。
年をとると、足の筋力の衰えで、つま先が上がらず、平らなところでもつまづくことが増えるそうです。
「踏み外す」は、階段などで起こりやすく、着地すべきところを誤るものですね。
大きな荷物を持って階段を降りる時、足元が見えずに踏み外すという事故が多くなるようです。
どれも、日常的に起こりやすいものですね。
倒れ方にもよりますが、ほとんどの場合は、ぶつけて痛むことはあっても短時間で治まるものだと思います。
しかし、階段を踏み外すなどは、大きな事故になってしまいかねませんね。
原因はありふれていても、結果は大事になりうるのが転倒事故なのです。
では、どのように防げばいいのでしょうか?
2.転倒事故を防ぐためには?
今回のプロジェクトで、転倒事故防止のために掲げているものは大きく2つです。
対策1「現場から危険をなくす」
対策2「見える化で情報共有」
この2つです。それぞれ見て行きましょう。
「現場から危険をなくす」
危険をなくす前に、何が危険で、どんな危険があるかを確認しておく必要があります。
上記のページには、危険箇所を洗い出すチェックリストもあるので、これを活用してもいいかもしれません。
職場の危険を洗い出そう!チェックリスト
※このリンクは、PDFファイルを開くので注意して下さい。
危険箇所を洗いだしたら、危険をなくします。
具体的には、職場ごとでの工夫になると思います。
その際に徹底すべきなのが、4SとKY活動になります。
4Sは、「整理」、「整頓」、「清掃」、「清潔」を行うことです。
4Sについては、こちらの記事もご覧ください。
4Sは安全と品質向上、そして思いやりの活動
転倒する原因となる、床の上の物や濡れを取り除くことです。
ポイントは、すぐに行うということ。
後でまとめてと放置してしまうと、忘れてそのままになります。
それに、片付けるまでの間に、別の人が転倒するかもしれません。
4Sは安全な職場づくりのためにも重要なので、徹底したいものですね。
KY活動は、あらかじめ、「どこに」、「どんな」危険があるのかを話し合い、「どのように対処する」のか共有することです。
作業場の危険ポイントを把握し、対処法を頭に入れておくだけでも、危険を回避する可能性は増えるものです。
現場から危険をなくすこととして、2点が重点対策としています。
「見える化で情報共有」
これは、ここが危険だから気をつけましょうというのを全員で共有することです。
見える化というは、目に見える形で、はっきりと分かるようにすること。
通路のコーナーや階段、出入り口付近で、雨が降ったら濡れやすい場所など、よく転倒する場所に、注意を促す掲示物を張るのは見える化ですね。
ただ口で伝えたり、資料で渡していただけでは、忘れてしまいます。
しかし、事故が起こりやすい現場で、注意掲示があれば、注意しようという気持ちになりますよね。
この他、ページでは具体的な転倒防止対策等が紹介されています。
冬場の転倒には、少し力が入って紹介しています。
このブログでも、以前冬場の転倒事故防止について、取り上げていますので、ご参考までに。
冬の転倒にご注意
なお、雪道で滑らない歩き方は、歩幅を小さく、足の裏全体で踏むことです。
かかとから着地すると、滑ってしまうので、注意です。
3.転倒事故を防ぐ設備や教育
転倒を防止する対策をとるだけでなく、そもそも転倒しにくい設備や保護具をつけようという取り組みです。
雪が積もった時、玄関がタイル地だと滑りやすくなりますよね。
これを防止するために、ヒーター付きのマットを敷くなどは、転倒防止の設備といえます。
そのような設備もありますが、今回注目したいのは靴です。
靴を正しく選ぶことで、転倒を予防しようというものです。
どのような靴かというと、まずサイズがぴったりであることが大切です。
小さすぎても、大きすぎても転倒の原因になるそうです。
その他注意するところは、踏み出した時にきちんと曲がること、重すぎないこと、前後のバランスがよいこと、つま先が上がっていることなどのポイントがあります。
特につま先!
年をとると、筋力の衰えのため、足を上げて踏み込む時に、つま先が上がりきらず、かかとより先につま先が着地し、つまづいてしまう事があります。
実はこのタイプの事故は少なくないそうです。
この手のつまづきを防ぐために、あらかじめつま先が上がった靴というのがあります。
高齢者に限らず、転倒防止のために、つま先が上がった靴を選ぶのが、転倒防止のために有用だそうです。
さて、設備や靴の他に、転倒事故を防ぐために、知ることが重要です。
そのための教育やセミナーを活用するのも、事故防止に役立ちますね。
プロジェクト期間中は、このような教育の場も企画されるかもしれませんので、積極的に活用して、活かしていけるといいですね。
転倒事故は、よくある事故ですが、ひどい災害になりうるものです。
今回のプロジェクトは、もっと転倒事故について知ろう、そして防ごうというのが趣旨です。
まずは、転倒も事故なのだということを知ることが重要です。
誰もが一度や二度、職場で転んだり、転びそうになったことはあると思います。
それを共有し、危険箇所を洗い出し、事故防止につなげていく機会になるのではないでしょうか。
これをいい機会として、職場を見直すのもいいですね。