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建設業の現場で欠かせない機械といえばショベルカーです。
ほぼ全ての作業現場で使用します。
ショベルカーの用途は、掘って、掘ったものを移動させることです。
掘るものは、土が多いのは言うまでもありませんが、その他にコンクリートを取壊したり、アスファルトを取り壊したりもできます。
ショベルカーの足周りは、タイヤのものもありますが、悪路でも動けるようにクローラータイプ、つまりキャタピラになっているものがよく使われています。
ショベルカーは、悪路でも動けますし、ちょっとした坂道や障害物も乗り越えるほど、機動性に優れています。
しかし、その機動性を過信ししてしまうと、足をすくわれ、事故になることがあります。
先日、神奈川県の横浜市で、文字通りショベルカーの足がすくわれたという事故がありました。
ショベルカーで大きな障害物を乗り越えようとしたら、転んでしまったというものです。
転ぶものがショベルカーですので、人が転ぶのとは影響が違います。
この事故では、残念ながら1人の方が亡くなられました。
今回はこの事故事例を取り上げ、原因の推測と対策を検討してみます。
重機が倒れ作業員死亡 青葉区の工事現場
(平成27年1月14日)
13日午後0時15分ごろ、横浜市青葉区千草台の千草台第2公園の工事現場で、作業員が倒れてきたパワーショベル(重さ約3・5トン)の下敷きになり、間もなく死亡した。運転手の男性(50)にけがはなかった。青葉署が事故原因を調べている。
同署によると、パワーショベルが斜面になっているコンクリート製の歩道を登っていたところ、コンクリート片(縦約3メートル、横約2・5メートル、厚さ約15センチ)に乗り上げた際にバランスを崩し後転。後方にいた及川さんが路面とパワーショベルの間に挟まれた。 横浜市青葉土木事務所によると、昨年10月22日から今年2月16日ごろまでの間、同公園を閉鎖し、歩道を補修するなど改修工事をしていた。 |
この事故の型は「はさまれ」で、起因物は「ショベルカー」です。
状況をまとめると、公園内の工事中に起こった事故です。
ショベルカーで斜面になっている歩道を登っていたところ、道の上にあったコンクリート片に乗り上げたら、バランスを崩してしまい、側にいた作業者の上に倒れてしまったというものです。
ショベルカーの足元はクローラーだったので、少々の障害物であれば、乗り越えられます。
おそらくコンクリート片をどかすよりも乗り越えるほうが手っ取り早いと思った上での行動でしょう。
少々の障害物であれば乗り越えられるのですが、どんなものでも大丈夫かというと、当然制限があります。
車体の大きさや、障害物の大きさにもよりますし、乗り越え方にもよります。
推測するに、後ろにひっくり返ったということなので、この事故での大きな要員の1つは、車体に対して、障害物が大きすぎた、嵩が高すぎたことではないでしょうか。
車体重量3.5トンいうと、ショベルカーとしてはかなり小型です。
当然バケット容量も0.1m3程度と小さく、クローラーも小さいものです。
厚さ15センチのコンクリート片を乗り越えるには、少々力不足といえそうです。
もし障害物のコンクリート片が乗り越えられると思ったのは、運転者の目測が誤ってしまったのでしょうか。
もしかすろと少々無理をすれば、大丈夫だろう。そんな判断があったのかもしれません。
それでは、以上を踏まえて、原因を推測してみます。
1.ショベルカーでコンクリート片を乗り越えようとしたら、バランス崩し後方に倒れたこと。
2.ショベルカーの車体サイズに対して、コンクリート片の厚さが大きかったこと。
3.通路にコンクリート片を置いていたこと。
4.ショベルカーの移動中、付近に作業者がいたこと。
5.ショベルカーの移動通路を、取り決めていなかったこと。
結果的には、後方に倒れてしまったのですが、バケットやアームでバランスを保てば、乗り越えられたのかもしれません。
しかし、そのような「かもしれない」運転は避けたほうが、運転者本人も周りに作業者も安心ではありますね。
直接的な原因は、ショベルカーの操作にありますが、間接的に被害を生み出した原因もあります。
まず、ショベルカーが移動するルートに障害物があったことです。
コンクリート片は何かの構造物か、舗装を取り壊したものと推測されますが、それが通行路に置いたままにしていては、通行の邪魔になります。
作業計画の段階で、機械の通行ルートは取り決めておかなければなりません。
取り決めていたならば、確実に通路は開けておく必要があります。
そして、動いているショベルカーの側では、作業者は立ち入らないようにする必要があります。
転倒にかぎらず、不意にバケットが旋回し、ぶつかることもありますし、クローラーに引かれてしまうこともあります。
では、対策を検討してみたいと思います。
1.ショベルカーでは、無理な障害物を乗り越えないようにする。
2.機械の通路には、障害物を置かないようにする。
3.機械の通行路を、作業計画で定めておく。
4.機械の作業範囲には、立入禁止とする。
ショベルカーは、少々の障害物はものともしませんが、限度があります。
判断ミスが命取りになることもあります。
無理をすれば大丈夫というのは、避けたほうがよいでしょう。
これは運転者本人だけでなく、事業者や職長も含めて、無理をさせないという教育と指導を行わなければなりません。
また事前の計画が大事です。
転倒や崩壊するおそれのある場所や、危険はあらかじめ排除しておくと、作業者の事故を減らせます。
ショベルカーなどの機械作業であれば、通行ルートを周知させることです。
当然ルート上には、物を置かないようにする必要がありますね。
そして、運転者以外の作業者も注意する必要があります。
ショベルカーなどは、毎日のように一緒に仕事をする機械なので、側で作業することに慣れ、何も危険を感じないのでしょう。
しかしこの事故のように一方間違えると、容易に人を押しつぶし、跳ね飛ばす力を持っているのです。
そのことを思い知った時には、取り返しの付かないこともあります。
そのため、職長等が意識的に、機械と人の間に距離を取らせるようにします。
実は危険なんだと、意識して距離をとって作業するだけでも、ひかれたり巻き込まれたりする事故は防げます。
今回の事故は、運転者の判断ミスだけでなく、作業場での仕事の進め方が背景にあるのかもしれません。