厚生労働省労働局長登録教習機関
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酸欠作業時には、しっかりとした安全対策が生命線となります。
命の危険が伴う作業なのですから、少しも疎かにしてはなりません。
酸欠状態は、作業前に測定することが何よりも大切です。
測定したところ、酸素濃度が18%に満たなかったり、硫化水素濃度が基準値を超えているということがわかった場合、その場での作業は控えるという選択肢もありますが、多くの場合、そうもいきません。
酸素濃度が高ければ、相応の対応を行った上で、その場で作業しなければならないこともあります。
例えば、地下室で配管から水漏れがあった場合、水を止めなければなりません。この時、室内の酸素濃度が高いからといって、水漏れを放置するということはできませんよね。
酸素濃度にかかわりなく、水は漏れ続け、どんどん溜まっていきます。
やはり、危険と分かっていても、その中に入り、作業しなければならないのです。
この例以外にも、同様の状況はあります。
酸欠環境の中での作業を行うためには、対策が必要です。
対策には大きく2つあります。
1つは、環境改善。
もう1つは、保護具の着用です。
今回は、これらの対策について、酸欠則の条文をまとめていきます。
【酸素欠乏症等防止規則】
酸素が18%に満たない場所、または硫化水素の濃度が100万分の10以上の環境に、生身の人間が入れば、身体に重大な影響を与え、場合によっては、死に至ります。
こういった環境は、空気がよどみ、酸素が消費され、ガスが溜まっている場所で起こりやすいです。
この環境を改善し、人が入れるようにするためには、何をさておき、換気を行います。
換気とは、文字通り空気の入れ替えです。
新鮮な空気を送り込み、溜まった空気を外に出す。空気の循環を生みます。
新たな空気が送り込まえることによって、酸素濃度等が改善するのです。
換気の方法としては、送風機を使うなどの方法があります。
室内の大きさによって、求められる送風量も異なるので、能力を確認することが大切です。
酸素濃度を上げには、てっとり早く酸素を送り込めばいいんだと思って、純酸素で換気するのは禁止です。
純酸素は、可燃性が高く、猛毒で、取り扱いが困難です。
換気の時に、爆発などの事故を起こしかねません。
普通の空気を送り込みましょう。
換気を行っているからといって、すぐに室内に入るのは待ってください。
換気を行い、測定をして、安全を確認するのが先です。
また、一度基準濃度に達したから、換気を停止というのも避けたほうがよいでしょう。
風が影響して、仕事ができないというのでなければ、作業中ずっと換気しておくのがよいですね。
酸欠環境改善には、換気が一番なのですが、場合によっては換気ができない場所もあります。
空気を送り込むと爆発する、酸化する物質を保管している保管庫などです。
このような場合は、換気そのものができませんので、別の対策が必要になります。
その対策が、保護具の着用です。
(保護具の使用等) 第5条の2 事業者は、前条第1項ただし書の場合においては、同時に 就業する労働者の人数と同数以上の空気呼吸器等 (空気呼吸器、酸素呼吸器又は送気マスクをいう。以下同じ。)を 備え、労働者にこれを使用させなければならない。 2 労働者は、前項の場合において、空気呼吸器等の使用を |
酸欠作業で使用する保護具は、呼吸器です。
口をすっぽり覆うマスクと、そのマスクに酸素を送り込むタンクがセットのものです。
スキューバダイビングで使用する装備とほぼ同様です。
マスクは口元だけを多くものもあれば、顔全体を覆うタイプのものもあります。
目的は、外気を吸わず、タンク内の酸素で呼吸するためです。
この保護具は、換気ができない場所や、換気しても有害物質がある場所などで使用します。
酸欠で倒れた人を救出に向かうときにも、無防備に向かうと救出に向かった人も倒れ二次被害にあいます。救出時にも着用が必要になります。
呼吸器とは別の保護具として、安全帯(要求性墜落制止用器具)も重要です。
酸欠症状になると、意識を失うなどの障害が起こります。
もし階段やタラップを使用していたり、開口部付近で作業していたりすると、意識を失った拍子に、転落してしまい、被害を大きくしてしまいます。
この事故を防ぐため、安全帯を着用しなければなりません。
安全帯を着用し、きちんと掛けておくことで、不意の意識障害時に備えるのです。
酸欠による意識障害、そして転落は地下室などに入る時に、起こりやすい事故です。
呼吸器とともに事前に安全帯を着用し、入念な準備を行った上で、酸欠環境に入らなければならないのです。
(保護具等の点検) 第7条 事業者は、第5条の2第1項の規定により空気呼吸器等を 使用させ、又は前条第1項の規定により要求性墜落制止用器具等を 使用させて酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合には、 その日の作業を開始する前に、当該空気呼吸器等 又は当該要求性墜落制止用器具等及び前条第2項の設備等を点検し、 異常を認めたときは、直ちに補修し、 又は取り替えなければならない。 |
保護具は、正常に動かなければ意味がありません。
マスクが空気漏れを起こしているなどでしたら、危険ですよね。
保護具は常に正常に機能するように、常に点検しておかなければなりません。
作業前には必ず点検して、異常がないかを確認しましょう。
仮に異常があれば、使用してはいけません。
また異常箇所も放置せず、補修などします。
異常があるのに使用していては、命取りになるので、注意しましょう。
(人員の点検) 第8条 事業者は、酸素欠乏危険作業に労働者を従事させるときは、 労働者を当該作業を行なう場所に入場させ、 及び退場させる時に、人員を点検しなければならない。 |
酸欠作業を行う場合、室内などに誰も倒れていないかを確認するのが重要です。
そのため、酸欠場所への入場時の人数と退場時の人数を確認して、必ず全員が退場していることを確認しなければなりません。
これは作業主任者や職長などが行いますが、事業者としては人員の確認は責務です。
酸欠場所は、換気を行ったり、保護具を着用するなど、十分な対策が必要になる場所です。
作業関係者ですら、一歩間違えれば、危険に陥ってしまう環境でもあります。
関係者以外が近づいたり、作業場に入ってしまうと、被害に合う可能性が高くなります。
そのため、関係者以外が近づかないように、立入禁止にしなければなりません。
バリケードなどで囲い、酸欠のおそれがあるので立入禁止という内容の掲示を示して、防ぎます。
(連絡) 第10条 事業者は、酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合で、 近接する作業場で行われる作業による酸素欠乏等のおそれが あるときは、当該作業場との間の連絡を保たなければならない。 |
酸欠作業は、広範囲に及ぶこともあります。
もし近くで行っている作業の影響で酸欠が起こってしまうかもしれないのに、何の連絡も通知もないのであれば、危険ですよね。
例えば大量に物を燃やしている、ガスで大量に噴出する作業などです。
何一つ知らされていなかったら、知らないうちに酸欠で倒れかねません。
酸欠のおそれのある作業が近くで行われる場合は、必ず連絡しあうようにします。
危険が発生したら、いち早く知らせる、退避させるなどの体制づくりが重要です。
酸欠作業は、危険が伴います。
危険をいかに小さくするかが、安全対策として大切なのです。
換気と保護具は何よりの安全対策。
常に正しく行うことが、酸欠作業で作業者の命を守るために重要なのだと覚えておく必要がありますね。
まとめ。
【酸素欠乏症等防止規則】
第5条 酸欠等の危険作業では、酸素濃度18パーセント以上、硫化水素濃度100万分の10以下となるよう換気しなければならない。 |
第5条の2 酸欠等の危険作業では、送気マスクなどの保護具を着用させなければならない。 |
第6条 酸欠等の危険作業では、要求性墜落制止用器具を着用させなければならない。 |
第7条 送気マスクなどの保護具は、常に正常に稼働するよう点検しなければならない。 |
第8条 酸欠等の危険作業では、作業前後に人員数の確認を行わなければならない。 |
第9条 酸欠等の危険作業では、関係者以外の立入りを禁止しなければならない。 |
第10条 酸欠等の危険作業では、作業間の連絡を常に取らなければならない。 |