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冬場は乾燥しているので、火事になりやすいといいますが、実際のところ、季節に関係なく火災は起こっています。
家庭での火事も損害としては非常に大きのですが、工場ともなると、その被害は甚大となります。
火災による怪我等がなかったとしても、会社も従業員も後始末に負われてしまいます。
そして、操業ができなくなると、製品の生産がストップし、流通に支障をきたしてしまいます。
兵庫県の朝来市にある、グンゼの工場で火災が起こりましたが、この火災によって、製品の生産、流通に大きな支障をきたしてしまいました。
幸い死者や重傷者は出なかったものの、大きな損害であることには違いありません。
ちょっとした火の手が、多くのものを奪ってしまいます。
今回は、この工場火災を取り上げ、原因の推測と、対策を検討してみます。
グンゼ工場で火災、3人搬送140人避難 兵庫・朝来
(平成27年3月26日)
26日午後3時25分ごろ、兵庫県朝来市山東町楽音寺のグンゼ梁瀬工場で「黒い煙が上がっている」と119番があった。地元消防によると、敷地内の縫製工場が千平方メートル以上燃え、約6時間半後に鎮火した。従業員の男女3人が救急搬送されたが、のどのやけどなど、いずれも軽傷とみられる。
朝来署によると、爆発音がしたといい、縫製工場と裁断工場の間にある油煙除去装置が出火元の可能性が高い。グンゼは取材に「染色の工程で使うボイラーから出火した」としている。朝来署が原因を調べる。 グンゼによると、約140人の従業員が避難した。梁瀬工場は女性用肌着で国内生産の大半を担い、年間700万枚製造している。工場復旧の見通しは立っていない。 現場はJR山陰線梁瀬駅の南約1キロで、付近には住宅や幼稚園がある。 工場の東側にある市立梁瀬小の教頭は「太陽が隠れる高さまで黒い煙が上がっていた」と話した。梁瀬小は春休みで児童はいなかった。 |
この事故の型は「火災」で、起因物は「工場機械」です。
従業員は全員避難しましたが、3名の方が救急車で搬送されました。幸い、軽傷で済んだようです。
出火元は、油煙除去装置ともボイラーとも見られています。
原因は、今後調査で明らかになると思われます。
考えられる原因としては、機械の故障、可燃物が近くになったなどが考えられます。
可燃物には、紙や繊維などだけでなく、機械に溜まったホコリ等も含まれます。
家庭でも、コンセントに溜まったホコリに、静電気などで起こった火花が着火して、火の手が上がるということも、あるそうです。
機械の可動部には、潤滑油やグリスが塗られているのが通常ですが、定期的に替えてやらないと、グリスが劣化して動きに支障がでるだけでなく、ホコリが蓄積したりするここともあるのです。
それでは、考えられる原因について、推測してみます。
1.機械から出火し、燃え広がったこと。
2.機械が故障していたこと。
3.周囲に可燃物があったこと。
4.機械のメンテナンスが十分でなかったこと。
ボイラーからなのか、他の機会からなのかは、記事からでは分かりませんが、機械が出火元になったのは間違いなさそうです。
この工場では、繊維織物の工場だったので、メインとなる機械は織機や縫製、切断等のラインにあるものです。
油煙除去装置やボイラー、また換気装置などは、直接製品の制作に関わらない、補助機械であるといえます。
製造ラインにある機械やボイラーなどについては、細かに作業、修理、メンテナンス等について定められているでしょうが、補助の機械全てまでとなると、なかなか網羅できるものではありません。
1年に1回など、定期的に点検できればよいほうです。
また点検時も、操業をストップさせるわけには行きませんから、機械も動かしながら状態確認を行うのがほとんどではないでしょうか。
多くの場合、機械は故障したら対応するというのが、多いのではないでしょうか。
もし故障等であるならば、火災は定期的にメンテナンスしていたら防げたかかもしれません。
しかし、突発的な故障であったり、他の原因があるならば、予測は困難でしょう。
対策を検討します。
1.機械は定期的にグリス交換なども含めた、メンテナンスを行う。
2.製造ライン以外の機械も定期点検、メンテナンスの体制を整える。
3.機械の周辺には、可燃物を置かない。
4.火災時の避難、消火に備えた、体制づくりを行う。
機械の分解整備などは、調子悪くなったら行うと思いますが、グリスの取替などは、定期的に行うとよさそうです。
車のオイル交換と同じですね。定期的に交換してあげると、車も長持ちしますし、トラブルも防ぐことができます。
またボイラー等を設置する場合、周囲の壁は不燃物としなければなりません。
壁が不燃物でも、すぐ近くに紙や布など可燃性のものがあると、意味がありませんね。
機械周辺には、可燃物を置かないようにすると、もし機械から火が出ても、燃え広がることを防げます。
つい置いておくというのも、無しにしなければなりませんね。
今回、大きな火災にも関わらず、重傷者を出さずに、避難できたということは、工場で避難時の備えができていたからだと思います。
避難用設備、通路などの他、避難訓練などで備えられていたのではないでしょうか。
こういった備えは、緊急時のものです。
いざという時役に立ちます。
避難訓練も、一度でもやっておくと、いざという時、体が動くものなのです。
怪我人を出さなかったのは、このような備えがあったからだと思います。
しかし、この火災によって大きな被害がでました。
この工場では、女性用の肌着等を作っていましたが、生産がストップするため、流通に影響が出るのは必至です。
ほんの少しの失火が、甚大な被害を生み出します。
火災は、備えで防ぐことができます。
この工場では、数年前も失火があったとのこと。
冬の乾燥時期を過ぎたとはいえ、火の用心の時期はいつまでも続きます。