厚生労働省労働局長登録教習機関
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クレーン作業は、ずっと携わっていると忘れがちになりますが、大変な危険を伴います。
人の手では全く動かないようなものを、軽々と持ち上げます。
もし操作ミスで荷物が落下し、運悪くその下に人がいたとしたら。
人間では、その重さに耐えられるものではなく、原型を留めないほどぺちゃんこになってしまいます。
とても恐ろしいことですね。
こういった事故は、少しの操作ミスで起こる可能性があります。
しかし、実際のところ、ミスがすぐに事故になるということはありません。
人はミスをするものです。
クレーンにかぎらず、機械はそれを前提に製造されています。
人が犯すミスをカバーするもの、事故に至らないようにする装置があるのです。
そういった装置を、安全装置といいます。
クレーンにも安全装置はあります。
クレーンの安全装置は、クレーンならではの装置になっています。
安全装置を備え付け、いつも正常に機能することは、法律で定められているのです。
【クレーン等安全規則】
(巻過ぎの防止) 第18条 事業者は、クレーンの巻過防止装置については、 フック、グラブバケット等のつり具の上面又は 当該つり具の巻上げ用シーブの上面とドラム、シーブ、 トロリフレームその他当該上面が接触するおそれの ある物(傾斜したジブを除く。)の下面との間隔が 0.25メートル以上(直働式の巻過防止装置に あっては、0.05メートル以上)となるように 調整しておかなければならない。 |
クレーンは、荷物をフックなど吊具に掛け、ワイヤーで吊上げます。
荷物を持ち上げたり、下げたりするのは、ワイヤーを伸ばしたり、巻き取ったりすることで行われるのです。
ワイヤーの長さには限界があります。
限界には、これ以上伸びないというものもありますが、もう1つこれ以上巻き取れないというものもあります。
ワイヤーの先にはフックが付いています。
そのため、巻き取る限界は、フックがあるところまでとなります。
フックがジブの先に引っかかっているのに、ワイヤーを巻き取ろうとすると、どうなるか。
限界まで伸びに伸びて、最終的にはワイヤーが切れてしまいますね。
巻き取り過ぎが事故に至るのです。
この事故を防ぐための安全装置が、巻過防止装置というものです。
クレーンには、吊具の上面などに巻過防止装置を設け、調整しておかなければなりません。
巻過防止装置は、吊具の上面から25センチ以上の位置で働くようにしておきます。
移動式クレーンのような直動式の場合は、5センチ以上で調整します。
直動式と間接式という巻き上げ方法があるのですが、方式の違いについては、クレーンの構造を詳細に説明しているサイトに譲ります。
巻過防止装置が働くことで、吊具がジブと接触することを防いでいるのです。
ジブの先からワイヤーが出ている場所は、非常に高所で、オペレーターが目で確認するのが難しい時もあります。
巻過防止装置は、知らず知らずに限界以上にワイヤーを巻過ぎ、切断させる危険を防止する安全装置ななのです。
第19条 事業者は、巻過防止装置を具備しないクレーンについては、 巻上げ用ワイヤロープに標識を付すること、警報装置を 設けること等巻上げ用ワイヤロープの巻過ぎによる 労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。 |
巻過防止装置は、吊り荷重が3トン未満のクレーンでも必須です。
備えておかなければならない安全装置です。
ただ、万が一備えていない場合の措置についてです。
巻過防止装置があれば、これ以上巻き取れないとなると、自動的に動作がストップしますが、これがなけば手動で止めるしかありません。
手動で止めるにしても、ただ目で見ているだけでは判断しづらいものがあります。
巻過防止装置を具備しないクレーンでは、ワイヤーに限界位置を示す標識をつけたり、巻き過ぎのおそれがある時は警報が鳴るようなどの措置をとらなければなりません。
目で見てわかりやすくすること、音で判断できるようにすることなどの対策が必要になります。
小さな力で大きな仕事をするのに、油圧や水圧を用いているものが少なくありません。
車でも、何十キロや百数十キロで動いている時に、ブレーキが効くのはブレーキオイルのお陰なのです。
またハンドルが片手で回るほど軽いのも、油圧のお陰なのです。
油圧や水圧は、小さな力で大きな作用となるのです。
クレーンも油圧や水圧で、動きを制御しています。
油圧などは、クレーンを動かす上で、とても役に立ちます。
しかし圧が掛かりすぎてしまうと、問題です。
油を満たした容器や配管を破損してしまう可能性がありますし、機械自体も壊してしまうかもしれません。
圧は強すぎても、弱すぎてもよくないのです。
油圧や水圧が掛かりすぎた時には、適度に圧を逃してやるために安全弁を設けます。
安全弁は、一定以上の圧になると働きます。
安全弁は、定格荷重が掛かった時以下の圧になるように、調整しておかなければなりません。
一定の条件を満たした場合、定格荷重の1.25倍の重さのものを吊ることが許可されますが、この場合は、それ相当の圧で働くように調整します。
人もストレスが溜まって溜まってすると爆発してしまいますよね。
どこかで息抜きして上げる必要があります。
クレーンの場合、そのストレスは、油圧や水圧なのです。
機械が正常に動くためには、込められすぎた力を適度に抜いてあげることも大事なのです。
(外れ止め装置の使用) 第20条の2 事業者は、玉掛け用ワイヤロープ等がフックから外れる ことを防止するための装置(以下「外れ止め装置」 という。)を具備するクレーンを用いて荷を つり上げるときは、当該外れ止め装置を 使用しなければならない。 |
ワイヤーの先には、吊具がついています。
吊具としては代表的なものは、フックでしょう。
フックとは、ピータパンに出てくるフック船長の左手といえばイメージがつくでしょうか。
もしくは魚釣りで使う、釣り針の大きい物です。
広く開いた部分に、玉掛けワイヤーを引っ掛ける構造になっています。
吊り上げ作業中、吊り荷が動いたとき、それに連動して玉掛けワイヤーがフックの中で
動くこともあります。
この時に、フックから外れたら。
荷物は落下してしまいますね。
いつ何時、フックからワイヤーが外れることがあるかもしれません。
このようにフックに引っ掛けているものが、外れないようにする必要があります。
フックには外れ止めを備えなければなりません。
外れ止めとは、フックの開いた部分につけるカバーのことです。
このカバーは、内側方向にしか開きません。
フックの外側から、ワイヤーを入れる場合には、カバーは開きますが、内側からワイヤーが押し出ようとする場合は、開かない構造なのです。
この外れ止ですが、時折半開きのまま固まっているというのもみかけます。
これでは全く意味が無いのは、わかりますよね。
フックの外れ止めがなければ、しっかり掛けたワイヤーも外れるおそれがあるので、ぴったり閉じた状態でなければならないのです。
安全装置にはここに上げられたもの以外にもあります。
定格荷重を越えた荷重がかからないようにする過負荷防止装置も安全装置の1つです。
安全装置は、事故を防ぎ、人に危害を与えないようにするための装置です。
安全に使用するためには、これらの装置を備えることも大事ですが、正常に働く状態を維持することも大事です。
安全装置が壊れていては、危険を察知することも、防ぐこともできません。
安全装置が正しく動くかどうかは、定期検査でも確認されますが、作業前の点検でも確認することが大事です。
まとめ。
【クレーン等安全規則】
第18条 クレーンの巻過防止装置については、調整しておかなければならない。 |
第19条 巻過防止装置を具備しないクレーンについては、 労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。 |
第20条 水圧又は油圧を動力として用いるクレーンは、定格荷重以下で作用するように調整しておかなければならない。 |
第20条の2 玉掛け用ワイヤロープ等がフック外れ止めを備えたものを使用しなければならない。 |