○安衛法と仲良くなるクレーン作業

クレーンの安全 その12。悪天候時は使用禁止

entry-302

クレーンは荷物をワイヤーで吊上げ、空中を移動させるという性質から、時として作業の制限を受けることがあります。

悪天候、特に風が強い時は、クレーン作業は不向きどころか、危険がいっぱいになります。

宙に浮いた状態の、荷物は上から吊られているだけに過ぎません。 土台がしっかりしているならば、外部からの力にも耐えられます。 しかしどんなに重量があるものでも、地に足がついていないと、どうしようもありません。

悪天候時の作業については、通達が出されたり、各種条文で規制されています。

それらをまとめたものは、こちらをご覧ください。

悪天候時にできること

これらの規制は何のためにあるかというと、言うまでもなく事故を防ぐためです。

クレーン作業は、風の影響を受けます。

強い横風は、走る車のハンドルを取り、背の高いトラックなら倒してしまいます。

そんな風の中では、宙に浮いた荷物など紙くずのように、右往左往してしまいます。 またクレーン本体も、風に押し倒されかねません。

今回は悪天候、特に暴風、強風の時の制限についてです。

なお、悪天候の定義は、次のとおり定められています。

基発第309号(昭和46年4月15日)

「大雨」 1回の降雨量が50ミリメートル以上の降雨

「大雪」 1回の降雪量が25センチメートル以上の降雪

「強風」 10分間の平均風速が毎秒10メートル以上の風

「暴風」 瞬間風速が毎秒30メートル以上の風

これらの風速は基準になりますが、体感で風が強いと感じたら、クレーン作業は中止指示を出すのは、事業者の責務といえるでしょう。

【クレーン等安全規則】

(暴風時における逸走の防止)
第31条
事業者は、瞬間風速が毎秒30メートルをこえる風が
吹くおそれのあるときは、屋外に設置されている
走行クレーンについて、逸走防止装置を作用させる等
その逸走を防止するための措置を講じなければならない。

瞬間風速が毎秒30メートルの暴風とは、巨大な台風並の状態です。

数次ではピンと来ないかもしれませんが、屋根を吹き飛ばしたり、電柱や街路樹をなぎ倒すほどの力です。 台風まっただ中といえます。

当然、屋外でクレーン作業はやってはいけません。 屋内でも、仕事を早めに終わり、明るいうちに帰宅を促す必要がある状態でしょう。

クレーン作業はしなくとも、屋外にあるクレーンには対処しなければならないことがあります。

屋外に設置されている走行クレーンは、風で吹き飛ばされたり、動いたりしないようにしっかりと固定するなどの措置をとらなければなりません。

走行クレーンは、一定範囲動かせるクレーンです。 倉庫内などでは、天井付近にランウェイを設置した天井クレーンがあります。

しかし屋外には天井はありません。 屋外の走行クレーンは、地上にレールを敷き、ランウェイとするのです。 このレールの範囲内を前後に動くことができます。

時として、屋根を吹き飛ばすほどの風の力です。 巨大なクレーンは、表面積が広いため、風の力を広範囲に受けます。

風に押されたクレーンが、レールを外れてしまっては、大変です。 流れ流れて、建物に衝突するということも考えられます。 もし、道路まで押し出され、交通事故の原因になろうものなら、被害は甚大ですね。

暴風が警戒される台風時には、クレーンが動き回らないように固定することが、

(強風時の作業中止)
第31条の2
事業者は、強風のため、クレーンに係る作業の実施に
ついて危険が予想されるときは、当該作業を
中止しなければならない。

強風で、クレーン作業に危険が予想される場合は、作業を中止しなければなりません。

これは、吊り荷が振られてしまうからも、理解できますね。

風速10メートルというと、どれくらいの風の強さでしょうか。

目安として、木が大きく揺れている、電線が振られてピュウピュウ音がする、傘を差してられないくらいの風です。

荷物を空中に上げた途端、大きく前後左右に動きかねません。

振れた荷物がどうなるかは、想像つきますよね?

まずクレーン本体や、周囲の人に衝突します。 そして、振られた勢いで、フックが壊れ、荷物が落下してしまいます。

強風時のクレーン作業は、とても危険な状態なので、風が強いなと感じたら、中止するのが無難です。

(強風時における損壊の防止)
第31条の3
事業者は、前条の規定により作業を中止した場合で
あってジブクレーンのジブが損壊するおそれの
あるときは、当該ジブの位置を固定させる等に
よりジブの損壊による労働者の危険を防止するための
措置を講じなければならない。

強風で吊り作業は中止しても、風は止まってくれません。 動かぬクレーンに対して害を及ぼすことも、十分考えられます。

中でも怖いのが、クレーンのジブ、つまり上にワイヤーの支えとなる腕の部分が破損することです。

強い風を受けてジブが、揺れに揺れて、差した傘の柄を簡単に折れるように、壊れることもあるのです。

風に負けない対処が必要です。

強風で作業を中止した場合、クレーンのジブが損壊しないように固定するなどの措置をとり、危険が及ばないようにしなければなりません。

ジブが折れて、作業者の上に落ちてきたりすることは、防がなければなりません。

屋外クレーンにとっては、風は大敵です。 少々の風であれば、問題ありませんが、荷が触れる程の風であれば、見合わせも検討する必要があるでしょう。

たかが風、されど風。 侮ると、恐るべきことになります。

クレーン作業を行う時は、あらかじめ天候を確認しましょう。

安全な吊り作業は、空とにらめっこしながらが大切なのです。

まとめ。

【クレーン等安全規則】

第31条
瞬間風速が毎秒30メートルをこえる風が吹くおそれのあるときは、屋外に設置されている走行クレーンについて、逸走防止装置などの措置をなさなければならない。
>第31条の2
強風時は、クレーンに作業を中止しなければならない。
第31条の3
強風で作業を中止した場合ジブクレーンのジブが損壊するおそれがある時、ジブの損壊による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。