墜落・転落○事故事例アーカイブ

足場解体中に落下する事故(神奈川県横浜市)

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平成27年7月より、足場についての法改正が施行されました。

どんな改正化については、こちらをご覧ください。

平成27年7月からの足場の規制強化について、結構しっかり書きます。

この改正でのポイントは、足場作業を行う人への特別教育の実施と、足場構造の強化です。
特に、足場の組立解体時の安全確保をしっかりしようというものです

実は、足場の事故では、組立解体時に事故も少なくありません。
よくよく考えれば、確かにそうですよね。

足場が出来上がってしまえば、手すりなどで墜落防止されます。
しかし組立解体中は、墜落防止がまだありません。 当然、墜落の危険性が高くになります。

そのため、足場作業だけでなく、組立解体時の事故を減らすことが目的でした。

今回事例として取り上げるのは、足場解体中に起きた事故です。

この事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

横浜で足場解体中に落下、作業員の男性死亡(平成27年7月7日)

7日午前9時45分ごろ、横浜市緑区長津田町のマンションの外壁工事現場で、足場の解体作業をしていた作業員が7階部分の足場から約16メートル下に落下して全身を強く打ち、搬送先の病院で死亡が確認された。

緑署によると、田中さんは事故当時ヘルメットと命綱を着用していたが、命綱の先端が足場に張った安全ロープに接続されていなかった。同署が詳しい事故状況を調べている。

産経新聞

この事故の型は「墜落・転落」で、起因物は「仮設構造物」です。

マンションの7階の高さで、足場解体中に墜落し、死亡しました。 亡くなった作業者は、19歳の若さでした。

命綱、つまり安全帯は着用していたものの、使用していませんでした。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

法改正により、組立解体時の安全性を高めることが義務付けられました。

1つは作業足場の拡大です。

今までは、組立解体時の作業足場は20センチ以上の幅を必要としましたが、法改正により40センチ以上の幅を必要とします。
これは本設備と同じ幅となります。 踏み外しを防ぐための措置と言えます。

もう1つは、墜落防止設備です。
本設備では、手すりや中桟などがありますが、組立解体中は、これも取ります。 そのため、親綱などを張り、安全帯を使用することになっています。

しかし、親綱があり、安全帯は着用していても、それだけでは意味がありません。
きちんとフックを掛けておかないと、墜落時に体を支えてはくれません。

この事故は、まさに安全帯を付けていたのにという事故です。

多くの作業者は、安全帯の胴ベルトに様々な工具をぶら下げて一体としています。
そのため着用はしているのです。 ただ掛けたがらない人もいます。

理由は、動きに制限を受けるからといのが多いようです。
あとは、忘れるというのも多いです。

いずれにせよ、使わない限りは、全く意味がありません。

被災者が着けていなかったことに対して、周りに人は何も指摘しなかったのか。
親綱等があったのか。

ベテランで慣れている人は、これくらい平気というもあったかもしれません。
しかし、若く経験の浅い作業者も同じではありません。

また2メートル以上の高所では、作業主任者が保護具の使用について監視し、指導します。 これがなされていませんでした。

危険に対する認識が甘かったのが、背景にありそうです。

それでは、原因を推測してみます。

墜落防止設備がなかったこと。
安全帯を正しく使用していなかったこと。
作業主任者は、安全帯の使用を監視していなかったこと。
安全教育、KYなどが行われておらず、安全意識が低かったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

親綱などの安全設備を設け、墜落防止を行なうことが何よりも重要です。

しかしこれだけでは十分ではありません。

不足している分は、各作業者がまかなう必要があります。

安全帯の使用は、今のところ唯一身につけられる墜落防止のための保護具です。

腰道具が一体になって着けている人は多いのですが、実際に使用しているとなると、その数は減ります。

安全帯を使用するのが当たり前の雰囲気を作ることが何よりも大切です。

そのためには、全員が安全意識を持つこと、作業主任者が責任をもって保護具等の使用を監視する必要があります。

また、足場の組立解体にあたる作業者は、特別教育を受けることが義務付けられています。
この教育の中でも、安全帯等の重要性は教えられています。 忘れてしまったのか、そもそも受講していなかったのか。

高所作業は、少し足を踏み外すだけで命を落とします。

とても危機感のある仕事だと、理解し作業に当たる必要があります。

対策をまとめてみます。

親綱などの墜落対策を設ける。
作業者は特別教育を受ける。
作業主任者が作業を監視し、指導する。
作業前にはKYなどで、危険に対する意識を高める。

建設業で、最も多い死亡事故は、墜落・転落です。

高いところでの作業は多く、一歩踏み外すと致命傷または大怪我になります。

ほんの少し墜落を防ぐ対策を行なうだけで、守れる命もたくさんあります。
安全帯も絶対大丈夫とはいえませんが、これで助かることも少なくありません。

持っているのに、使わないのは、意味がありません。 安全帯はアクセサリーではありません。 使ってこそのものです。

徹底しましょう。 全員で、墜落を防止していきましょう。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

第520条
  労働者は、安全帯等の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。
第521条
高さが2メートル以上の箇所で作業を行なう場合で、労働者に安全帯等を使用させるときは、安全帯等を安全に取り付けるための設備等を設けなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。
最も多い事故。墜落・転落事故の防止。 その3

第564条
足場の組立解体の作業を行なうときは、適切な措置をとって行わなけれればならない。
第565条
高さが5メートル以上ん足場組立解体作業については、足場の組立て等作業主任者を選任しなければならない。
第566条
足場の組立て等作業主任者に、作業指揮や材料の確認、保護具着用の監視などをおこなわせなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。
通路と足場 その6。足場の組立解体と点検 

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