○コラム

日本人ならではの事故というもの

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かなり衝撃的な動画を見ました。

中国でエスカレーターを登ってきた母子が降りたところ、床パネルが外れ、母親が巻きこまれて亡くなったというものです。 従業員も、床パネルが危ういことを知っていたようですが、エスカレーターを使用禁止にすることも、注意を呼びかけることもなさそうでした。
なんともずさんで、危機意識のない対応ではないでしょうか。

日本では絶対ないとは言いませんが、多くの場合使用禁止などの措置をとるのではと思います。

事故のパターンにも国民性が出てくるように思います。
大雑把な性格の人が多い国では、細かい所のチェックが行き届かず、ちょっとしたほころびが原因で事故になるということもあるでしょう。
効率を重視する性格の人の多い国では、安全性などは後回しにされ、事故を引き起こすといったものです。
もちろん、個人個人の性格もあるので、一概にはいえません。

先日、労働基準連合会主催の安全講習に参加した時、元厚生労働省の半田有通さんがこんな話をされました。 「自分が見てきた事件には、日本人ならではの事故ある」

日本人ならではの事故パターンとは何でしょうか。 半田さんは、2つの事例を紹介されました。

キーワードは「責任感」と「生真面目さ」です。

index_arrow 責任感がもたらす事故

「責任感」と「生真面目さ」がもたらす事故というのは、どういうものでしょうか。

1つ目の事例は、こんな事故です。

この事故は、鉄道の補修作業で、線路の砂利を敷き均す作業中に起こりました。

線路内の補修作業は、電車がストップする深夜に行われることが多いのですが、営業時間中に行われることもあります。 事故は営業時間中に起きました。

砂利の敷き均し作業は、電車が通らない間に行います。 電車が近づくと合図者が避難を呼び掛けます。 この合図に従い、作業者は手を止め、安全な位置まで移動します。

被災者も同じように避難するはずだったのですが、電車にはねられ亡くなりました。

事故後、状況を確認していたところ、電車が近づくギリギリまで作業をしていた形跡がありました。 電車来るまで、あと少しだけ、キリの良い所まで、作業を進めようという生真面目さが仇となり、逃げ遅れたのでした。

他の国だったらと一概に比較できませんが、避難指示が出たら、すぐさま手を止めたのではないかと思われるのです。

もう1つの事例は、こんな事故です。

この事故は建設現場で、ショベルカーが転落し、運転者が下敷きになって亡くなったという事故です。

事故のあった作業場には、大きな段差がありました。ショベルカーでは乗り越えられない段差です。 本来の作業手順では、砕石を持ち込み、段差にスロープを作る予定でした。 ショベルカーは、このスロープを登ることになっていたのです。

しかし、いくら待っても砕石が来ません。 そこでショベルカーのアームと排土板を使って、車体を持ち上げ段差を越えようとしました。

こんなかんじです。

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見ての通り、非常に不安定です。 車体が持ち上がった時に、バランスを崩し倒れ、投げ出された運転者を押しつぶしたのでした。

半田さんは、この事例も日本人ならではないかと言われました。 他の国では、砕石が来なければ何もしません。 砕石が遅れて、仕事が遅れても、自分の責任じゃないし、関係ないということです。

しかし、被災者は、早く、少しでも作業を進めたいという思いが、危険な作業になり、事故に至ったのです。 仕事が遅れることを、自らの責任としても感じたとの分析でした。

話を聞いていて、なるほどなと思いました。 よくありそうなことですが、仕事に対して過剰に捉えるところは日本人ならではなのではと思います。

index_arrow ブラック企業を招く体質

日本人ならでは事故には、「責任感」と「生真面目さ」というものあるようです。 確かに、就業時間が終わっても、周りの人が残業してたら、1人帰りにくいと感じてしまいます。
こういうのも一例じゃないでしょうか。 もし外国なら、関係なしで帰るんじゃないかと思うのですが。

ここ数年、長時間労働などを強いるブラック企業が問題になっています。 鬱になるほどの過労を強いられるなら、辞めればいいのにという外野の声をよそに、簡単に辞められません。

辞められない理由として、再就職への不安、生活の不安があるのは確かです。 これに加えて、仕事への責任感も辞められない理由ではないでしょうか。

自分が辞めたら顧客に迷惑がかかる、取引先に迷惑がかかるという危惧も、足を留めているのではと思います。 これは私の経験もあるのですが。

近頃は、学生アルバイトに、授業やテストを受けさせないなどの、ブラックバイトなんてのもあるとか。
ブラックバイトの一例として塾講師があります。 授業以外の勤務にはバイト代が出ない上に、長時間の高速があるというものです。 良くない状況だと分かっていても、担当する子どもたちのことを考えると、簡単に辞められないというものです。

アルバイトが辞めたときに、その穴を埋めるのに、奔走すべきは経営者です。 本来、責任は経営者にしかありません。 アルバイトが責任を負うべきは、仕事内容であって、運営や経営ではありません。
しかし、迷惑がかかるかもという責任感が、自らを必要以上に追い込んでしまうのです。 結果として、自分の本業に支障をきたしていたら、本末転倒です。

もしあなたがいなくなったとしたら、一番困るのは、経営者や子どもたちではありません。 一番困るのは、もっとあなたの身近な人たち、家族や恋人、友人です。 あなたがその人たちが苦しむ姿を見たくないのと同様に、その人たちもあなたが苦しむ姿を見たいと思っていません。 そのことも頭の片隅に置いてほしいなと思います。

私の場合ですが、かなり精神的に辛くて前職を辞めましたが、意外とあっさりしていました。 担当していた顧客は、別の担当者が即連絡をとっていて、私は完全にいないもの扱いでした。 これはこれで、寂しい気もするのですが、何とかなります。 何とかする責任は、経営者にあります。

仕事に責任感は大事です。 でも、命を天秤にかけるほどの責任まで、負わなくてもいいんじゃないでしょうか。

生真面目に仕事を少しでも進めようとして、事故を起こしては仕方ありません。 危険な作業になりそうな時は、ぐっと堪えることも大事です。 危険な方法の工夫も避けましょう。
見方を変えると、危険なことをして事故を起こすほうが、周りに迷惑をかけるとも言えます。 むしろそちらの方向に、生真面目さや責任感が働くといいなと思います。

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