厚生労働省労働局長登録教習機関
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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。
第50話「猫井川、吊りしパイプで板倒す」 |
保楠田と猫井川、鼠川は、型枠支保工を行なうことになりました。
型枠支保工とは、一度に大量のコンクリートを打ち込む時、通常の型枠で押さえこむだけでは、コンクリートの内圧に負けてしまいます。 型枠がコンクリートの内圧に負けないためには、かなり強い力で外部から締め付けてやる必要あります。 ちょうど、掘削作業で土砂崩壊を防ぐために、土止め支保工を行なうのと同じなので、これを型枠支保工といいます。 保楠田は、型枠支保工の作業主任者資格を持っているので、今回の作業の指揮に当たることになったのです。 今回、犬尾沢は不在ですので、少しだけ緊張感が和らいでいるのでした。 「猫ちゃんは、型枠支保は初めて?」 作業に先立って、保楠田が尋ねました。 「はい。土止めはあるんですけど、型枠は初めてです。 「そうだな。ワシが現役の時は、よくやったけどな。 猫井川の問いに、鼠川が答えました。 「そうだね。この10年は、かなり減ってきた気がする。 保楠田がそう言うと、今回の作業の段取りにかかりました。 「まあ、基本は土止めと同じで、型枠に腹起しをつけて、ハリで支えるんだよ。 普段は、仕切りを犬尾沢に任せている保楠田が、今日は活き活きと指示しています。 「じゃあ、型枠を作っていこうか。」 設計図に従い、コンパネを並べ固定していきました。 「ちゃんと水平に固定してね。猫ちゃん、左をちょっと上げ。」 保楠田の指示で、どんどん組み上がっていきます。 作業がある程度進んできた時でした。 「あ、猫ちゃん、パイプが足りないや。 「分かりました。」 猫井川は、そう言うと、ユニック車に乗り込み、自社の倉庫に向かったのでした。 「猫ちゃんが帰ってくるまで、休憩しましょうか。」 保楠田が、鼠川にそう言うと、 「おう、久しぶりの作業だから、少し疲れたな。 鼠川もほっとした様子でした。 猫井川の分のコーヒーも買うと、2人は日陰で休憩しました。 「今年は、まだまだ暑いですね。」 「ああ、そうだな。年をとるときつい。 「そうなんですよ。急にしんどくなって。 「おお、そうか。大丈夫だったんだな?」 「ええ、軽い熱中症ということでした。 「昔に比べ、気を使うようになったな。」 「そうですね。 「お前もいい人を見つけなければだな。 「全然ですよ。帰っても、母親とテレビ見るくらいです。」 「それは寂しいな。 「そうですね。 「見合いとかどうだ?聞いてやるぞ。」 「まあ、いい人がいれば、お願いします。」 「そうか、じゃあ知り合いに聞いてみるよ。」 おっさん2人が恋話をしている一方、猫井川は倉庫で1人作業していました。 「さて、コンパネも何枚か持っていったほうがいいな。」 持っていくコンパネを5枚壁に立てかけて、仮置きしました。 「鉄パイプを荷台に載せて、上からコンパネで押さえよう。」 ユニック車のクレーンを操作すると、鉄パイプを数本束ね玉掛けしました。 パイプが持ち上がった時、少しバランスが崩れたのでしょうか、鉄パイプが宙でくるくると回転しました。 「あ、やべ、1回降ろそう。」 そう言って、クレーンを操作した時でした。 回転する鉄パイプが、立て掛けてあったコンパネに当たり、コンパネが倒れてきたのでした。 バタバタバタと、猫井川のすぐ側をかすめて倒れていきました。 しばらく、ユニック車のエンジン音だけが響く以外、何も音がしない状況が続きました。 「やっべ。当たりそうだった。パイプをとりあえず降ろそう。」 我に返った猫井川は、すぐさま鉄パイプを地面に降ろしました。 気を改め、コンパネを持ち上げようとした時、 「こらー、猫井川。玉掛けをきちんとしろ!」 響き渡る怒声。 ちょうど、倉庫に入ってきた犬尾沢にバッチリ目撃されていたのでした。 何ともタイミングの悪いことか。 |
ヒヤリ・ハットの補足と解説 |
今回は、鉄パイプなどを使った、型枠支保工での現場で起こったヒヤリ・ハットです。
実際には、パイプをトラックに載せるときに、起こしてしまったものですけども。
コンパネ板や鉄板など、すぐに使う材料は、地面の上に置かず、立て掛けていおくということはよくあります。 多くの場合は倒れたりすることはありません。
しかし、今回の猫井川のように、クレーン作業中に吊り荷が接触してしまったり、突風が吹いたりすると、立て掛けた物は倒れこんできます。
倒れこむ先に、誰もおらず、何もなければよいのですが、もし人が居ようものなら。
実際に、足場の鉄板が倒れ、近くを通りかかった人に当たっという事故もあります。
ほんのちょっとした時間の仮置きに過ぎませんが、もしもということがあります。
そして、このもしもが大事故になってしまうことが多いのです。
それでは、ヒヤリ・ハットをまとめましょう。
ヒヤリハット | 鉄パイプを吊り上げたらコンパネに当たり、倒れてきた。 |
対策 | 1.コンパネなどは立て掛けて、仮置きしない。 2.鉄パイプなどの玉掛けは、回転しないようにする。 |
保楠田と鼠川のおっさん2人も、恋の話をするんですね。
この2人の話なのですから、中身は、非常に濃そうです。