飛来・落下○事故事例アーカイブ

滑車落下し男性死亡 新日鉄君津製鉄所(千葉県君津市)

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クレーンは製造、設置から、廃止まで厳重に管理されている特定機械になります。
設置から廃止までの間も、2年ごとに性能検査を受けなければなりません。

クレーンがなければ仕事にならないことも多いのですが、その管理には厳重さが求められているのです。

そんな厳重な管理下にあるクレーンも年月が経つと老朽化します。またクレーンを収めている建物も劣化します。
老朽化したものは、いつか撤去されます。クレーンも同じです。
クレーンは大きな機械です。そのため解体の時には、部品が落ちたり、倒れたりするなどの危険と隣り合わせといえます。

千葉県の新日鉄君津製鉄所のクレーン解体工事中に、滑車が落下するという事故がありました。
この落下に1人の作業者が下敷きになり、亡くなられました。

今回はこの事故の原因を推測し、対策を検討してみます。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

滑車落下し男性死亡 新日鉄君津製鉄所
(平成27年8月18日)

18日午後1時45分ごろ、君津市君津の新日鉄住金君津製鉄所で、スクラップクレーンの解体作業中にクレーンの滑車(約1トン)が落下、作業していた配管工の左腕と左足が下敷きとなり、搬送先の病院で間もなく死亡が確認された。君津署は、業務上過失致死の疑いもあるとみて原因を調べている。

同署によると、現場は工場脇の屋外で、原料を運ぶスクラップクレーンの解体作業が先月から行われていた。クレーンは台座に載せられ、その下で作業をしていた。落下当時は被災者を含む2人が現場近くにいたという。

被災者は孫請け会社の作業員とみられ、近くにいた別の作業員が警備員を通じて119番通報した。

ちばとぴ

この事故の型は「飛来・落下」で、起因物は「クレーン」です。

この事故は、屋外のクレーンを解体している最中に起こりました。
クレーンの台座の下にいた被災者は、落ちてくる滑車の下敷きになったのでした。
大きなクレーンだったのでしょう。滑車の重さは1トンにもなりました。

1トンの鉄の塊の下敷きになったのです。 体は簡単に壊れてしまいます。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

直接的な原因は、上から落下物ある場所で作業を行っていたことです。 また落下のおそれのある場所にも関わらず、何ら対処が防止対策がとられていなかったことです。

高所作業では、下に物が落ちることがあります。
もし下で人がいれば、危険ですよね。

そのため、落ちる範囲には人が立ち入らないようにする必要があります。

また1トンもあるような巨大な物が落ちる可能性がある場合、安易に止めているナットを外すのも避けたほうがよさそうです。 意図せず外れてしまったとしても、落下を防ぐような措置も必要だったのではと思います。

落下物の危険がある場所では、作業者に教育が必要です。 作業前にきちんとミーティングで話ができていなかったのではないでしょうか。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

落下の危険のある場所で、作業させていたこと。
滑車の落下防止措置をとっていなかったこと。
危険個所などのミーティングやKYで周知していなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

頭の上で作業していて、落下する危険のある場所は、立入禁止措置にする必要があります。

どうしても、危険個所で作業を行う必要がある場合は、落下させないような措置が必要です。 足場であれば、足元に巾木を置き、床から工具や道具が落ちないようにします。
今回の事故のように大きな部品があれば、ボルトナットを緩める前に、別のクレーンで吊るなどしておく必要があります。

何より、安易にボルトやナットを緩めてはいけません。 また1つの部品を緩めると、他の部品を緩めたりするので、影響を考えて作業を進める必要があります。

作業前には、ミーティングやKYで、立入禁止場所の確認を行います。 また落下がある場合での作業は、危険がなくなってから行わせるなどの、スケジュール調整も重要です。

対策をまとめてみます。

落下の恐れのある場所は、立入禁止とする。
落下するおそれのあるものは、クレーンなどで固定する。
危険個所などは、ミーティングやKYで周知する。

落下物は、ナットのような小さなものでも、落下速度が加わり、強い衝撃になります。 ヘルメットをかぶっていなければ、かなり痛い思いをしてしまいます。

ましてやクレーンの部品のように、数百キロ、数トンの物が落ちてくると、ひとたまりもありません。

一番の危険回避は、落下の危険個所に入らないことです。
そして、落下させないような作業方法をとることです。

上から落ちるというものは、人であっても、物であっても、非常に危険なのです。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【安衛則】

第537条
物体が落下して危険がある場合は、防網や立入禁止などの措置をとらなければならない。
第538条
物体が飛来する危険がある場合は、飛来防止設備や保護具などの措置をとらなければならない。

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