○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

牛黒、度を越す悪ふざけに激怒す

entry-406

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第52話「牛黒、度を越す悪ふざけに激怒す 」
猫井川たちが、事務所ん戻ってくると、大きな声が響いていました。

「なんで、オレが謝んなきゃいけないんですか?」

怒鳴っているのは、どうやら牛黒ベコのようでした。

「確かに、お前の言う分はわかるがだな。」

話し相手は、課長の虎島甲子のようでした。

「オレは悪くないから、謝らんよ。」

牛黒はなおも言います。

「虎島さん、どうしたんですか?
 声が外まで聞こえてますよ。」

事務所に入った犬尾沢が聞きました。

「おう、犬尾沢。お疲れさん。
 いや、ちょっと牛黒が今行ってる現場でトラブってな。」

「はあ、トラブルですか。」

それを聞いていた、鼠川が牛黒に聞きました。

「おい、牛黒。何があったんだ?」

「いや、それがですね・・・」

羊井や牛黒が行っていた建設現場での話です。

羊井たちはコンクリート打設のための準備をしていました。

この現場には、羊井や牛黒だけでなく、別の業者も作業を行っていました。この業者は、敷地内に溝を掘り、擁壁を作る工事を行っていました。

牛黒たちが、コンクリート打設のために型枠を加工したりしていると、擁壁工事の作業者の声が聞こえてきました。

「ちょっとー、危ないですよ。」

「仕方ないだろ。お前がそんなところにいるから悪いんだ。」

「そんなこと言われても、早く均していかないと、砕石が来ちゃうじゃないですか。
 ここはもう終わらせて、離れてくださいよ。」

「まだ掘れてないところもあるから、仕方ないだろ。
 お前も近づきすぎなんだよ。」

「さっきも、そんなこと言ってたじゃないですか。」

「ゴチャゴチャ言わずに、やれるところをやれよ。」

そんなやり取りをしていました。

牛黒が気になって、ひょいと覗くと、どうやら掘削作業の進め方でもめているようでした。

1人がショベルカーを使い、もう1人が穴の底を均しているようでした。
どうやら、均し作業をしているすぐ側をショベルカーで掘ったりしているようでした。

体のすぐ側をバケットがかすめているので、傍目にも危険な感じです。

「ちょっと、近いですって。危ないですよ。」

「だから、お前が離れろって。」

どうやら、これはわざとやっているよう。
いつもやっているのか、このふざけている様子も息があっているようでした。

最初は、ふーんという感じで見ていた、牛黒ですが、あまりに長い間続くので、少しずつイライラしてきました。

「何なんだ、あいつらは。」

思わず独り言もこぼれます。
それを聞いた羊井は、少し嫌な予感がして、

「牛黒さん、抑えて。
 気にしないでください。」

「いや、分かってるけど。でもな。。。」

羊井に諭され、イライラを抑えていた牛黒ですが、まだまだ続く悪ふざけに、またイライラが再燃してきました。

「あいつら。。。」

そんな時です。

「ちょっとー。痛いじゃないですか。今少し当たりましたよ。」

「ハハハ、そうか。すまんすまん。でもお前が近いから悪いんだぞ。」

そんなやり取りが聞こえてきました。
その言葉に、牛黒のガマンは限界に達しました。

「お前ら!いい加減にしろよ!!」

牛黒がブチ切れてしまいました。

ビタっと、止まる会話。
牛黒は2人に近づき、大声で怒鳴りました。

「そんなことしてたら、大怪我になるかもしれんだろう。
 ふざけすぎだぞ。」

「な、なんだよ。関係ないだろうが!」

相手も言い返してきます。

「さっきから近くで聞いてたら、関係なくもあるか。
 事故になったら、おれらにも関係するだろうが。」

かなりの迫力で怒る牛黒。

羊井は、まあまあと何とか抑えているのが精一杯でした。

「・・・というわけなんだよ。おれは悪くないですよね。」

牛黒が、経緯を説明しました。

「そりゃ、牛黒は悪くないな。」

鼠川も牛黒に同意します。

「しかし、揉め事になってしまったからな。」

虎島も困った様子。

「仕方ない。とりあえず、俺の方から相手には今の経緯を含め、話しておくよ。
 でも牛黒は明日からあそこの現場に行かないようにな。」

「なんか、納得行かないですけど。
 まあ、それなら仕方ないです。」

牛黒もしぶしぶ出禁を受け入れます。

「牛黒の代わりに、明日から猫井川が羊井の現場に行ってくれるか?
 牛黒は、猫井川のチェンジな。」

「え、俺っすか?」

突然の飛び火に驚く猫井川。

「羊井のところも手が足りないから、頼むよ。」

虎島の言葉に、猫井川もしぶしぶ納得せざるを得ません。

ふざけた業者のせいで、なんとも迷惑な。

心の中で、毒づく猫井川なのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回のヒヤリ・ハットは、自分たちの身に起きたものではありません。 別の業者で危ないなーと思われたものを見たというものです。

普段は、ミスも多く、ビッグマウス気味の牛黒ですが、事故を招きそうな危険に対しては怒りを覚えるのでした。 義憤に駆られたという感じでしょうか。

状況としては、作業者の側で、ショベルカーを使うというものです。 狭い作業場では、作業者とショベルカーが近接することがあります。 もし接触したら、怪我をしてしまいます。

もちろん、ショベルカーに接触する範囲に、作業者は入ってはいけません。
しかし、実際の現場では、ショベルカーのバケットが土を掘っている側で地均しをしている光景はよく見ます。

実はこのヒヤリ・ハットは、つい先日私が見たものなんです。
まさにこんな状況で、ショベルカーで穴を掘っていたところ、1人の作業者が掘削深を測っていました。

人がいるのですから、ショベルカーをしばらく止めるかなと思っていたら、気にせず作業を続けたのです。
バケットが降ろされた位置と、深さを測っていた作業者の間は、ほんの数十センチしか離れていません。
2人はいつもやっていることからなのか、大事にしていませんでしたが、見ている方がヒヤヒヤしました。

もちろん、注意しましたよ。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 掘削穴の底を均している作業者のすぐ側を、ショベルカーで掘削していた。
対策 1.ショベルカーの作業範囲には立ち入らない。
2.作業手順や範囲を確認してから、作業する。

作業時に、ちょっとノリでふざけたりすることもあります。
そんなに大事になることも少ないでしょうが、一歩間違えれば大事故になりかねません。

仕事の時の悪ふざけは、休憩時間などに、ほどほどにしておきましょう。
特に危険作業の時は、絶対してはいけません。

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