○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

牛黒トラック、縁石に突きささる

entry-445

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第57話「牛黒トラック、縁石に突きささる 」
連休明けのある日、今日も牛黒は猫井川の代わりに、犬尾沢の現場に行くことになっていました。
犬尾沢から、

「牛黒さんは、ダンプに乗って現場に行ってください。」

と指示を受けたとき、大きなあくびを1つかましました。

「いや~すまん。休み明けはどうも頭が働かん。ダンプだな。まかしとけ。」

あくびもさることながら、寝ぐせも付けたままの牛黒を見ながら、犬尾沢は「まあ、いつものこと」だと思うのでした。

「俺は準備してから行くので、先に行っておいてください。」

「おう。他に誰か乗せていくのか?」

「保楠田さんとお願いします。」

また大きなあくびをしながら、牛黒は保楠田と連れ立って、車庫に向かいました。

ダンプの運転席に着くと、牛黒はまたも大きなあくびをしまいた。

「連休はは旅行とか行ってたの?」

あまりに眠そうな様子に、保楠田が尋ねました。

「いえ、特にどこへ行ったとかはないんですけど。ずっとテレビ見てダラダラしてました。
 家から出たのは、飯買いにコンビニに行ったくらいかな。」

「それだけダラダラしてたら、逆に疲れない?」

「そうっすね。おかげで今日はえらいです。」

「保楠田さんは、休みにどっか行ったんですか?」

「いや、俺もずっと家にいたな。掃除したりしてたよ。」

「俺も似たようなもんっすね。掃除はしてませんけど。
 ふあ~。」

「頼むから、事故とか起こさないでくれよ。」

「大丈夫ですって。任せておいてくださいって。」

そんな話をしながら、牛黒と保楠田は現場に向かったのでした。

現場に到着すると、すでに誘導員が待機していました。
作業場は、道路際にあります。
車道から歩道を挟んで、すぐの所に入口の扉がありました。

まだ作業場の扉は閉まっていたので、とりあえずダンプを道路上に停車させました。

「おはようさん。」

保楠田が車から降りると、誘導員も挨拶を返しました。

「もう少ししたら、親方が来るから、少し待機しておいて。」

保楠田が誘導員にそう指示し作業場の扉を開けようとすると、誘導員も手伝うために保楠田のもとに向かいました。

作業場が開いたら、とりあえずダンプを中に入れて置く必要があります。

牛黒は、少し前進し向きを変えると、ダンプをバックしました。
歩道の縁石の切れ間、ちょうど車1台分の間に、ピーッ、ピーッと警報音を鳴らしながら、進んでいきます。

ガゴッと妙な音が響きました。
続いて、ヒュルルルルとタイヤが空回りする音。

保楠田も誘導員も作業場内に入り、バリケードなどを整理している時でしたので、どうしたのかと見てみると、そこには歩道の縁石に乗り上げてたダンプがありました。
どうやらダンプの中心に縁石が入り込み、後輪が少し浮き上がっている様子でした。

ピーッ、ピーッと音を鳴らしながらも、タイヤはシュルル、シュルルと空回り。
身動きが取れていません。

すぐに保楠田は、

「バックは無理ー!前進して、前進。」

と叫びます。

しかし当の牛黒は、いまいち状況が分かっていなさそう。

誘導員が運転席に近づき、状況を伝えると、ようやくバック音が鳴り止みました。

誘導員が車道に出て、通行車両に注意しながら、ダンプを前進させます。
何度かタイヤはシュルルと空回りしたものの、何とか縁石から脱出することができたのでした。

「何やってんの!?」

少し呆れ気味の保楠田。

ダンプは再度体制を整え、今度は誘導員がに従い、場内へ入って行きました。

残ったのは、少し欠けた縁石だけです。
牛黒はまたあくびをしそうになりましたが、バツが悪いのか、このあくびだけはかみ殺したのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

実は今回のヒヤリ・ハットは、この前私の現場であったことです。
今回の話とほぼ状況は一緒のことがありました。

少し違う点は、縁石にはまってしまったダンプは、前進もできなくなったことです。結局ショベルカーで荷台を押し、脱出することができました。全く、何でこんなことがと思う出来事でした。

建設業では、ダンプなどの車両を欠かすことができません。これらの作業車は、車体が大きいので、後ろがよく見えなかったりします。
またかなり荒っぽい使われ方もします。

ダンプは多少の接触程度ではこたえませんが、当たられた方は叶いません。それに公共物に接触して、壊すのもダメですね。

牛黒も、後輪のタイヤ周りまでは目が届かず、縁石が見えていなかったようでした。
せっかく近くに誘導員がいるのですから、誘導してもらっていれば、こんなことは起こらなかったのにと思います。

ちょっとバックで、車を動かすだけといった簡単なことなので、誘導員など不要だと思ったのかもしれませんね。

でも、油断しているとこんなことも起こるんですよ。

それでは、今回のヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット ダンプでバックしていたら、歩道の縁石にはまった。
対策 1.誘導員の指示に従う。
2.あらかじめ進行方向の障害物を確認する。

建設業などで、交通事故が少なくありません。このような物損事故も実は多いようです。これくらいなら当たっても大丈夫という意識でいると、大きな事故につながります。
このヒヤリ・ハットを教訓に、運転するときの意識を引き締めたいものです。

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