○書評

書評「元気な職場をつくる実践的安全活動」

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著者の古澤先生の、講演を一度聞く機会を得ました。
その時の先生の印象は、明るくエネルギッシュな方という感じです。

講演のテーマも、安全管理にかかわる人を元気にして、元気な職場を作ろうというものでした。
元気で明るい職場は、事故が少ない。
残念ながら統計的に表れるものではないかもしれません。
しかし古澤先生の長年の経験から、職場の雰囲気と事故は関係していると導かれたようです。

古澤先生の講演については、別の記事で書いていますので、そちらもご覧ください。

講演は大阪の中災防で開催されたのですが、帰りには著作を買い、帰りの電車の中で一気に読み終えました。
その時は、講演の興奮もあり、講演内容の再確認という感じがありました。しばらく時間をおいて読んでみると、なるほどなと感じることも少なくなかったので、少し書いてみたいなと思います。

いくつも勉強になるところはあるのですが、今回は2つに絞ります。
1つ目は、安全が安心をつくるということ。
2つ目は、安全管理はコミュニケーションが大切ということです。

index_arrow 安全は安心があってこそ

古澤登先生は、トヨタ自動車で長く安全衛生に携われていました。

トヨタではトヨタウェイ2001中で、基本理念として、こんな言葉を掲げています。

「人がモノを作るのだから、人を作らねば仕事も始まらない」

トヨタ車の品質の高さは、高い評価を受けています。
高い品質を効率的に製造する方法は、トヨタ式として知られ、お手本にしている会社も少なくありません。

そのように高い品質を求められる会社で、古澤先生は安全管理に携われ、安全精神を培われたそうです。

「事故は起こったことに対する事後対応にしか過ぎない。」
そのようなことを言われたことに発奮し、事後対応から未然防止に意識されたそうです。

怪我や疾病は、職場問題の代表特性である。
そのために問題を明確にし、全員で共有、見える化することが事項防止のみならず、事業の改善になるというのです。

事故の原因のほとんどは人によるものです。
設備などの不備もありますが、それだけで事故が起こることは少ないのです。危険な状態に危険な行動が伴い、事故になる。常に事故の中心には人がいるのです。

事故が起こる環境や作業は、現場にあります。
危険な環境を作るのも、危険な行動を行うのも人です。モノを作る前段階として、人を作ることが何よりも求めらます。

仕事内容や、設備の特性上、危険をゼロにすることが難しいでしょう。
しかしどこに危険があり、何に注意すべきかがはっきりして、みんなが理解していれば、事故が起こる確率が低くすることができます。また誰かが危険におちいる前に、周りの人が注意することが出来ます。

事故の芽は、全て現場にあります。
安全を管理する人は、何を差し置いても、現場を知ることが大事です。 見るのではなく観る。聞くのではなく聴く。
現場、現物、現実という三現主義という言葉もありますが、現場に全ての答えがあるのです。

現場を知り、現実的な事故防止対策を作り、徹底すれば、作業者は恐れず仕事ができます。
怪我や病気の恐れがない環境は、安心を産みます。
安心とは気持ちのことですから、まずは安全という環境を作ってあげるのが、安全管理者や事業者の役割ですよね。

index_arrow 安全の心を芽生えさせるために

現場を知るためには、安全管理者に限らずマネジャーの現場巡視は、重要な機会です。
しかし、安全巡視はただ見て回っていては意味がありません。危険を見つけ出すのが安全巡視の目的です。

危険を見つけ出すだけでなく、見つけた危険に対してどのように対処するかも大事です。
これは私も経験があるのですが、作業場を見ていると危険な作業というのは珍しくありません。

例えば、通路にカートが置かれたままになっていたり、足元がガタつく脚立に乗って作業しているなどです。
この時、すぐに注意して、是正させられるか。実はこれは結構勇気のいることです。

作業状況に配慮すると、手を止めるのが悪い気がします。反発される可能性もあります。
しかし、それを放置しておくと、何の改善もありません。それが原因で事故になる可能性もあります。
作業の手を止めること、反発を恐れないこと。安全管理者には勇気が必要です。

古澤先生は、「迎合ではなく、あるべき姿の追求」が大切だと言われます。
安全な状態とは、あるべき姿です。事故がない状態もあるべき姿です。安全管理者が、そのことに妥協しててはいけませんよね。

古澤先生が大切にされていることは、コミュニケーションのようです。
先生が、職場巡視をされると、作業者の方が元気になるそうです。確かに講演を聞いた時のお人柄は、元気を与えてくれました。

労働安全コンサルタントも、ある意味臨時の監督者です。
監督者は「気づかせ業」ということで、作業者に問いかけ、自分で考え、行動に移せるようにすることを大切にされているようです。

先生は、作業者に「この作業場のどこで死ねる?」という問いかけをされることもあるそうです。とてもショッキングな問いですが、この質問で、危険な場所はどこかと考えるきっかけになることもあるそうです。

安全巡視などでも、できてないことをダメ出しばかりすると、相手の気持ちは沈んでしまいます。
どの作業場でも、安全管理が全く無いことはありません。足りてないかもしれませんが、実行していることはあります。それは、それで評価し、褒めることも大切です。

今の古澤先生は、コミュニケーションが得意な方なのだと思います。しかし元々コミュニケーションが得意だったかは、わかりません。おそらく多くの人に関わり、先生御自身の努力と使命感が今のスタイルを作られたのだと思います。

私もコミュニケーションが得意とは言えませんが、しかしそれを言い訳にするのは無意味だなと、この本を読んで感じたのでした。著作からも、何かしらの勇気を頂いた気がします。

もし機会があれば、古澤先生の著作だけでなく、講演を聞かれることをおすすめします。
ほんの1時間お話を聞くだけでも、安全意識が高まり、元気が出ると思います。

成功された方の話を聞くとモチベーションが上がりますよね。もし安全管理に少しでも携わられる人であれば、成功者の話を聞いた時のような高揚感があるのではと思います。

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