厚生労働省労働局長登録教習機関
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工場や倉庫では、材料や荷物を頻繁に移動します。
かなりの重量物が多いので、手で運ぶのは難しいです。100キロ、200キロのものを持ち運べとなると、かなり大変です。台車でも難しいのではないでしょうか。
重量物を運ぶための機械には、クレーンやフォークリフトがあります。
この他に、2階以上の場所に荷物を上げるのにリフトを備えているところもあります。
リフトとは、エレベーターを想像してもらえれば分かりやすいと思います。
工場などで使われるリフトは、エレベーターのように箱状で囲われているのではなく、床と手すりだけといった簡易なものも多いです。
リストは荷物を単純に上下に動くだけなのですが、事故を引き起こすこともあります。
大阪市住之江区で、リフトにはさまれるという事故がありました。
今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
工場リフトに首挟まれ派遣社員の男性死亡 大阪・住之江 (平成27年10月19日)
19日午後4時半ごろ、大阪市住之江区の容器洗浄会社の工場で「荷物搬送用のリフトに男性が首を挟まれた」と119番があった。男性は同市西成区内の派遣社員とみられ、現場で死亡が確認された。大阪府警住之江署が原因を調べている。
同署によると、リフトは床以外は枠だけの簡易な作りで、高さ2・6メートル、幅2・7メートル、奥行き1・6メートル。当時、被害にあった男性は工場の2階で作業。1階にいた男性作業員が2階から1階にリフトを降ろそうとした際、男性の首が枠の上部に挟まったという。 リフトは1階にいた作業員が操作したという。同署は作業員から事情を聴くなどして当時の状況を詳しく調べている。 |
産経新聞
この事故の型は「はさまれ・巻き込まれ」で、起因物は「リフト」です。
大阪の工場で、荷物運搬用のリストにはさまれて、亡くなるという事故です。
事故が起こったリフトは、床に枠だけくっついた簡易な作りで、本当に荷物を上げ下げするだけのものだったようです。
挟まってしまったのは、枠の上部ということですが、2階の床と枠との間にはさまったのでしょうか。
事故の時、2階にあったリフトを、1階の作業者が下ろそうとしました。
その時、2階にいた作業者の首に挟まってしまったのです。
何かリフトに載せようとしていたのか、たまたまリフトの枠の所で何かの作業を行っていたのか不明です。
1階で操作した作業者は、2階の様子がわからなかったのかもしれません。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
事故の直接的な原因は、リフトが動いた時、近くに作業者がいたことです。
さらに首が挟まってしまうということなので、リフトに乗り、首から上をリフトからはみ出した状態だった、もしくはリフトに載っていなかったけれども、首から先をリフトに乗り出していたかではないでしょうか。
いずれにせよ、リフトが動いている時に、すぐ側にいたため事故に巻き込まれてしまったといえます。
さらに、1階で操作する人と、2階で作業している人で十分に連携がとれていなかったことが、事故につながったのではないでしょうか。
1階で操作する人は、2階の状況が把握は難しいです。お互いに確認を怠ると、知らず巻き込まれる恐れがあります。
また別の原因として、被害にあった人がリフトが動いている時に、あえて乗り降りしたり、近づいたりしたことです。普段リフト作業に慣れていると、多少動いていても、安全な距離を保つ意識が低くなりがちです。
そのため、目測を誤った可能性はなくはありません。
仕事のやり方に問題があったことも、否定ができません。
それでは、原因を推測をまとめてみます。
1 | リフトが動いている時に、人が接近していたこと。 |
2 | リフト操作者と作業者の連携が取れていなかったこと。 |
3 | リフト作業のKYや安全教育が行われていなかったこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
リフトは動いている時が危険です。
リフトが動く時、乗るならしっかり枠内に乗ります。乗らないなら、十分な距離を保ちます。これだけで挟まれるリスクが減ります。
また操作する人は、きちんと周りの状況を確認することが欠かせません。
何より、別の階で操作する時には、注意しなければなりません。エレベーターであれば、どの階でボタンを押しても、きちんと扉が閉まり、人が挟まらないようにしてから動きます。
工場などのリフトは、もっと簡易な作りですから、エレベーターほどの安全確保を自動的にやってくれません。足りない分は人が補います。
階が異なる場所で操作する時、リフト付近に人がいないことを確認します。直接確認できない場合は、合図者などを仲介して確認します。
無線等がある場合は、それらで別の階の人と連絡をとりあうのも大切です。
いずれにせよ、リフトが動くときに、人が近づかないようにするのが、事故防止のためにできることでしょう。
また長年付き合ってきた機械は慣れるため、油断が生じます。
多少動いていても、平気で近づいたりもあります。そのような油断は事故になるので、機械作動中は近づかないようにしましょう。
対策をまとめてみます。
1 | リフトが動くときには、挟まらない位置にいる。 |
2 | 操作者が別の階にいる場合は、合図者や連絡を取れる体制をとる。 |
3 | KYや安全教育で、安全意識を高める。 |
機械は急停止できないので、気づいた時には手遅れということも少なくありません。
このリフトの事故に似通ったものでは、エレベーターのはさまれ事故というのもありました。あれは機械の不具合が原因のようでしたが、リフト事故は取り扱い方も問題がありそうです。
機械の取り扱いに慣れるのは大事ですが、慣れすぎて油断し過ぎないようにしたいものです。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【 クレーン則】
(運転の合図) 第206条 事業者は、簡易リフトを用いて作業を行なうときは、簡易リフトの運転について一定の合図を定め、 当該作業に従事する労働者に、当該合図を行なわせなければならない。 2 前項の作業に従事する労働者は、同項の合図を行なわなければならない。 |