○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

兎耳長、アオリ、アオラれ、回転す

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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第65話「兎耳長、アオリ、アオラれ、回転す 」
その日、トラックには多くの型枠材料が運び込まれてきました。

猫井川が今いる現場では、鉄パイプやコンパネなどの材料をたくさん必要とします。
毎日のように、何らかの材料が運び込まれ、使い終わったものが、運び出されているのでした。

「あれ、兎耳長さんが運んできたんですか?」

猫井川は到着したトラックに近づき、驚きました。
普段は別の現場にいる兎耳長が、運転席に座っていたからです。

「うん。今日はこっちに人手がないから、頼まれたよ。」

「向こうの現場も忙しいんじゃないですか?」

「まあ、こっちほどじゃないんだと思うよ。今日は運搬員だよ。」

「そうですか。俺が倉庫整理をしている時にも、トラックで運搬する仕事もなかったのに。」

「そんなことあるよね。今日はこれを下ろしたら、もう1回往復してくれと言われているよ。」

「確かに、今日はコンパネをたくさん入れると言ってましたから。
 兎耳長さんと一緒の現場に入るも久しぶりですね。」

「そうだね。最近は別々の現場にいるからね。
 早速、荷物を下ろしていこうか。」

久しぶりの兎耳長とのからみ。
普段は口数が多くない兎耳長ですが、今回はなかなか長い会話になりましたが、ここらが限界のようです。
兎耳長に促され、猫井川は荷降ろしを行っていったのでした。

兎耳長が、トラックのアオリを下ろし、荷物を縛っているロープをほどきます。
積載されるコンパネの量は、なかなかのものです。

「運んでいきますか。
 兎耳長さんは、上に乗って荷物を下ろしていってください。俺は材料置き場まで運んでいきますよ。」

「わかったよ。それにしてもユニックが使えればいいんだけど。」

「そうですね。ユニックだったら、吊ってまとめて下ろせるんですけど。今は他で使ってるんで、仕方ないです。」

兎耳長は、トラックの荷台に上がりました。そしてうず高く重ねられたコンパネを1枚ずつ持っては、下ろしていったのでした。

「トラックに立て掛けていってください。どんどん持って行きます。」

兎耳長が下ろしていったコンパネを、猫井川が持ち、運んでいきました。
材料置き場までは、10メートルくらい離れています。トラックで限界まで近づけたものの、建物の中に保管するため、後は手で運ぶしかなかったのでした。

歩いて運びこむのと、荷降ろしするのでは、やはり荷降ろしの方が仕事が早いものです。
トラックの脇には、どんどんコンパネが立て掛けられていくのでした。

猫井川が数回往復した頃には、全てのコンパネが降ろされていました。

「ぼくも運んでいくよ。」

兎耳長も一緒に運び始めました。2人で運んでいくと、山のようなコンパネもあっという間に片付いていきます。
しばらくすると全て運び終えたのでした。

「これをあと1回分ですか。」

「うん。たぶん同じくらい運んでくる。」

「大変ですね。積むのはどうやってるんですか?」

「ああ、それは、天井クレーンがあるから。」

「それだと早いですね。」

「うん。それじゃ、取りに行ってくるよ。」

「はい、お願いします。」

そう言って、トラックのアオリを元通りにしようとした時でした。

兎耳長が持ち上げた側面のアオリの重さに負けたのか、兎耳長は後ろにバランスを崩してしまいました。
その勢いで、アオリは兎耳長に向かって倒れてきました。
まだ兎耳長は体は、アオリの射程距離内にいます。

「兎耳長さん危ない。」

猫井川が、とっさに叫びました。

その時です。

兎耳長は、すばやくバックステップを踏み、その勢いでバック転を決めたのです。

スタッと両足で立ち、体操選手のように両手を広げる兎耳長。
一瞬、辺りが静まり返ります。

「う、兎耳長さん・・・」

「いやー、昔ロスにいた時に身につけたスタントが役に立ったよ。」

「ロス?スタント?」

猫井川は混乱しています。
そんな猫井川の肩にぽんと手が置かれました。

羊井でした。

「まあ、兎耳長さんだから。」

そう一言。
でもこの一言で、納得してしまう猫井川なのでした。

そんな2人を気にすることもなく、当の兎耳長はアオリを戻し、トラックに乗って出かけていったのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

兎耳長の謎の能力は、まだ底知れません。
どうやら、ロスにいた経験はあるようです。なぜスタントを学んでいたのか。
それらの能力は、危機回避には役立っているようですが、普段の仕事ではどうでしょう。

さて、今回は頻繁に使われるトラックやダンプでのヒヤリ・ハットです。
トラックやダンプの荷台には、周りを囲うアオリというものがあります。これは荷台から積荷が落ちないようにする壁や塀の様なものです。

このアオリは、倒すことが出来ます。これで荷台を完全にフラットにし、荷物の上げ下ろしをしやすくできるのです。

アオリも荷台などと同じように鉄製です。そのため重量もそれなりにあります。
よいしょっと持ち上げることはできるのですが、固定するまでしっかり持っておかないと、倒れてしまいます。

足の上に落ちてくるということまではないでしょうが、倒れるアオリにぶつかるとかなり痛いです。

しっかりと固定する、持ったままにしておくというのが解決策ですが、普段何気なくやっている作業にも、危険があるということは知っておくといいかもしれませんね。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット トラックの荷台が倒れかけてきて、当たりそうになった。
対策 1.固定するまでは、手を離さない。
2.持ち上げる時は、体制を整えてから行う。

トラックなどに限らず、荷物の上げ下ろしは普段何気なく行うことです。
何気ないからこそ、危険があるなんて思いません。ヒヤリ・ハットがあっても無視されます。

しかし何が怪我につながるかは、わかりませんので、小さなことも疎かにしないことも大事ですね。

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