厚生労働省労働局長登録教習機関
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安全に作業を進める方法に、作業手順を決めるというものがあります。 特に製造業で、安全管理をしっかりやっているところでは、手順を決めているというのはあるのでは。
細かく手順を定めているところでは、「左手でナットを着け、レンチは右手で持って、締める」という細かいところまで定めています。
手順だけではないですが、トヨタ式というのも有名ですね。
作業手順を決める目的は、正しく効率的に作業を進めることです。
実際にやること、チェックすることを文章にすることで、作業者の誤解や間違いを防ぎます。また正しい順番で作業を進めることで、作業時の危険を防ぐこともできるのです。
そのため作業手順には、「プレスのボタンを押す前に、安全装置に故障がないことを指差確認する」ということも含まれています。
一連の作業を、細かく分解していくと10個以上になったりすることもあります。
作業する側としては、1つ1つのステップを気にしていないでしょうが、細かく分解するとそうなのです。
例えば、ボルトにナットを締める作業は、こんなステップを経ます。
1. ボルト径にあうナットをとる。
2. ボルトにワッシャーを入れる。
3. ナットの向きを確認し、ボルトに入れる。
4. ナットを手で回し、軽く締める。(仮締め)
5. レンチでナットを強く締める。(本締め)
だいたい、こういうのは「ナットを締める」というステップでまとめられますが、1つの作業でも細かく分解し、手順を定められるのです。
手順は改善の余地はあるでしょうが、意味があって、順番が定められています。
順番を入れ替えることができないものも少なくないのです。
例えば、ナットを締める作業ですが、2と3を入れ替えることはできません。ワッシャーは、必ずナットの先に入れます。逆にしてしまうとワッシャーの意味がありません。それはただボルトにプラプラした金属の輪を入れているだけに過ぎません。
作業手順は、いろいろ考え作られたものでしょう。いわばマニュアルです。
マニュアルに従うというのは、自発性のない行動にように思うかもしれませんが、効率的で安全に作業を進めるためには、非常に使えるものです。
ただし、作業手順やマニュアルは、きちんと教育されないと、効果を発揮しません。
マニュアルが書かれた資料を見せるだけ、ざっと説明するだけでは、不十分なこともあるのです。
どう不十分なのか。
それは、この前やってしまった、私自身の失敗から痛感しました。
その失敗で、作業手順に対する認識を改めたのです。
手順を言うだけでは、伝わってない。 |
その失敗は、施設工事の時の起こりました。
電線工事が終わり、受電設備を切り替えるために、一時的に電気を仮設に切り替える必要がありました。
そのために、10分ほど停電し、電気ケーブルをつなぎ替えます。
この時、電柱でケーブルを付け替える人、仮設にケーブルをつなぎ替える人がいるのですが、私はこの両者の連絡役になっていました。
停電に先立って、作業手順を口頭で、説明を受けていたのですが、作業が始まった時、すっかり手順が抜けてしまっていたのです。
本来ならば、ポンプの自動運転をオフにしてから、電柱側で停電させなければならなかったのですが、私が指示を誤り、いきなり電柱側で停電させてしまったのです。
幸い、大きな影響は避けられたのですが、かなり反省しました。
電気設備なので、一歩間違ったら、施設の故障を招いてしまっていたことも考えられます。
そういえば、以前も似たようなことがあったような。
手順を無視してしまったことは、反省したのですが、一方でなぜ頭から抜けていたんだろうとも考えました。
理由としては、話半分に聞いていたから。
これが大きいのは間違いありません。
確か、何か他のことに気を取られていた時に、説明を受けていたような気がします。
もう1つの理由。
こちらが今回のメインになります。
なぜ、その手順でなければならないかを理解していなかった。
実は「なぜ」という理由を知ることは、物事を理解する上で非常に重要です。
先ほどの、ボルト・ナットの例だと、なぜナットの先にワッシャーを入れるのかにも、ちゃんと理由があります。
ただ手順だけを話しただけだと、どうも頭に定着しません。
言うなれば、歴史の年表を覚えているようなもの。
大河ドラマなどでは、戦国時代と幕末を中心に、特定の人物にフォーカスし、当時の歴史を見ます。
様々な事件や出来事はあるものの、それら羅列すると数行程度のものです。歴史の試験のために暗記しようとしても、頭に入りません。
しかし、当時の人々の思いを知り、どんなドラマがあったのかを知ると、数行に過ぎない歴史上の出来事は、生々しく記憶に残ります。
大政奉還という出来事があったというだけでは、頭に残りにくいかもしれません。これが龍馬がどのように関わったのか、この出来事にどのような思いを持っていたのかという視点で眺めると、記憶に刻みつけられます。
作業手順書にある1つ1つの作業内容、順番の理由を知ることは、理解を深め、記憶に刻みつけてくれます。
作業手順が理解されないと、容易に手順の無視や省略、順番の前後ということがあります。
それは、ただ手順だけを暗記してやらせているだけで、作業への理解が深まっていないからです。
どうして、ナットを左手で持つのか、レンチを右手で持たなければならないのか。
こういった手順を書いた時、理由があったに違いありません。
作業を教える時、ちゃんと理由も教えましょう。
なぜなら、作業の理解が深まり、手順無視が減るからです。
作業手順、内容の理解が深まると、改善内容が見つかったりもします。
今更ながらですが、私もちゃんと理解していればと、思います。
取り返しが付くことなら、反省して次に活かせますが、手順無視のため大事故ということもあるはずです。
その最たる例が、東海村JCO臨界事故でしょう。
何事においても、「なぜ」と「どうして」まで足を踏み込むことは、理解を深める大事なことでですね。