○安衛法と仲良くなる車両系建設機械

くい打ち機、くい抜き機、ボーリング機械を使用する時の安全。その4

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くい打ち機などは、先端にくいやロッドを付けたワイヤーの伸縮で操作します。
ワイヤーは本体に取り付けた巻胴に収納されています。これがくいを支えるアーム部まで伸びます。
アームの部分には、みぞ車というものがついてます。これは中心部が凹だ、滑車のようなものです。

このみぞ車の真下に、くいが位置するのです。
そのため、巻胴とみぞ車の距離は、くい打ち機とくいとの距離に等しくなるのです。

この距離感は安全なくい打ち作業のためには、大切なことです。

みぞ車の位置なども、安衛則で規定されています。

【安衛則】

(みぞ車の位置)
第180条
事業者は、くい打機、くい抜機又はボーリングマシンの
巻上げ装置の巻胴の軸と巻上げ装置から第1番目のみぞ車の
軸との間の距離については、巻上げ装置の巻胴の幅の
15倍以上としなければならない。

2 前項のみぞ車は、巻上げ装置の巻胴の中心を通り、
  かつ、軸に垂直な面上になければならない。

3 前2項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、
  適用しない。

  1)くい打機、くい抜機又はボーリングマシンの構造上、
   巻上げ用ワイヤロープが乱巻となるおそれのないとき。

  2)ずい道等の著しく狭あいな場所でボーリングマシンを
   使用して作業を行う場合で、巻上げ用ワイヤロープの
   切断による危険が生ずるおそれのある区域への労働者の
   立入りを禁止したとき。

みぞ車は、滑車と同じ役割を果たし、くいの上げ下げに欠かせません。
どの位置に置くかによって、安定性が変わってくるのです。

巻上げ装置から第1番目のみぞ車の軸と、巻上げ装置の巻胴の軸の距離は、巻胴の幅の15倍以上としなければなりません。

みぞ車の位置が、巻胴の15倍以上離すことを覚えておきましょう。

またみぞ車は、巻胴の垂直の位置に配置します。これはワイヤーがごちゃごちゃに巻かれないようにするためです。ごちゃごちゃに巻く、乱巻きといいますが、こうなるとワイヤーが痛みますし、伸ばすときに支障がでるだけでなく、最悪切断することもあります。
乱巻きを防ぎますので、乱巻きになる恐れがない場合は、必ずしもみぞ車が巻胴の垂直の位置になくとも構いません。

またトンネル工事などで、狭い場所でくい打ちなどの作業を行う場合で、みぞ車の位置を巻胴の垂直の位置に置けない場合は、ワイヤーの切断の危険箇所を立ち入り禁止にします。

(みぞ車等の取付け)
第181条
事業者は、くい打機、くい抜機又はボーリングマシンの
みぞ車又は滑車装置については、取付部が受ける荷重に
よった破壊するおそれのない取付金具、シャックル、
ワイヤロープ等で、確実に取り付けておかなければならない。

みぞ車にもワイヤーを通し、荷重がかかります。取り付けが甘いと、外れてしまい、ワイヤーが跳びはねる恐れがあります。

みぞ車や滑車などで、荷重の係る箇所は、取付金具などで、確実に取り付けなければなりません。

こういった金具は必ず外れないようにします。取付の際や取付後も点検する必要がある場所ですね。

第182条
事業者は、やぐら、2本構等とウインチが一体となっていない
くい打機、くい抜機又はボーリングマシンのみぞ車については、
巻上げ用ワイヤロープの水平分力がやぐら、2本構等に
作用しないように配置しなければならない。
ただし、やぐら、2本構等について、脚部にやらずを設け、
脚部をワイヤロープで支持する等の措置を講ずるときは、
当該脚部にみぞ車を取り付けることができる。

やぐらなどとウインチが一体になっていないくい打ち機などのみぞ車については、ワイヤーロープの水平分力がやぐらなどに作用しないように配置しなければなりません。

やぐらはくいを支える箇所で、ウインチはワイヤーを巻き取る装置です。
多くの場合は一体ものですが、特殊な構造の場合の措置になります。

(蒸気ホース等)
第183条
事業者は、蒸気又は圧縮空気を動力源とするくい打機
又はくい抜機を使用するときは、次の措置を講じなければならない。

  1)ハンマーの運動により、蒸気ホース又は空気ホースと
   ハンマーとの接続部が破損し、又ははずれるのを防止するため、
   当該接続部以外の箇所で蒸気ホース又は空気ホースを
   ハンマーに固着すること。

  2)蒸気又は空気をしや断するための装置をハンマーの運転者が
   容易に操作することができる位置に設けること。

くい打ちなどの動力で、ワイヤーを使用するのは、重力を利用するものです。
重力以外にも、圧力でくいを打ち込む方法もあります。

圧力には、自動車のブレーキなどにも使われるようにオイルを使うものもあれば、圧縮した空気を使う場合があります。
空気の力なんて大したことないと思うかもしれませんが、車のタイヤは空気が詰まっています。しかもかなりの量が圧縮されて入っているため、車の重量を支えてもへこたれません。

くい打ちを圧力をかけた空気を使う場合、空気を送り込むホースが付属します。

空気は針の穴ほどの隙間があるだけでも、そこから漏れ、圧力が抜けてしまいます。そのため、接続は確実にして、密閉されていないといけません。

圧縮空気を用いる場合は、ホースの接続部が破損しないように、くいやハンマーに固着する。ハンマーの運転者が容易に、空気を遮断できるようにします。

くいやハンマーなど稼働する箇所にホースを接続していると、長年の使用で破損し、外れる恐れがあります。そのため、確実に取付ける必要があるのです。

また圧縮空気を通したホースが破裂すると、相当の衝撃になります。ホース自体がはじけ飛び、接触する危険があります。危険を感じたら、すぐさまに空気の送り込みを止められるようにしなければなりません。

まとめ。

【安衛則】

第180条
くい打機、くい抜機又はボーリングマシンの巻上げ装置の巻胴の軸とみぞ車の軸との間は適切な距離を保たなければならない。
第181条
くい打機、くい抜機又はボーリングマシンのみぞ車又は滑車装置については、取付部が破壊されない金具を取付けなければならない。
第182条
やぐら、2本構等とウインチが1体となっていないくい打機、くい抜機又はボーリングマシンのみぞ車については、巻上げ用ワイヤロープの水平分力がやぐら、2本構等に作用しないように配置しなければならない。
第183条
蒸気又は圧縮空気を動力源とするくい打機又はくい抜機を使用するときは、外れを止める措置や蒸気を遮断する措置をとらなければならない。