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林業は、事故の多い業種の1つです。
理由としては、高齢化が進んでいるということと、山奥の作業のため作業場が安定せず、救助にも時間がかかるというのがあります。
事故の多くが、伐倒した木の下敷きになってというものです。何百キロもの木が覆いかぶさってくるのですから、体はもちません。
また木本体でなくなくとも、伐採しようとする木の枝も太くそれなりの大きさになります。枝だけでも落ちてこようものなら、十分な脅威です。
秋田県大仙市で、木の枝に当たり亡くなるという事故がありました。
今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
落ちてきた枝が直撃、67歳男性死亡 大仙市協和、木の伐採中 (平成27年12月10日)
10日午後2時15分ごろ、秋田県大仙市協和の山林で伐採作業中だった仙北市西木町上桧木内、会社員佐藤孝三さん(67)を、落ちてきた太い枝が直撃した。佐藤さんは意識不明となり仙北市内の病院に運ばれたが、約2時間45分後に死亡した。死因は大動脈破裂だった。
大仙署によると、佐藤さんは同僚の男性作業員と2人で高さ約20メートルのマツの木を伐採していた。切り終わっても倒れなかったため、隣の木に枝が引っ掛かっていると思ってこの木を切っていたところ、長さ約8メートル、直径約13センチの枝が落ちてきて佐藤さんの背中に当たったとみられる。 |
この事故の型は「飛来・落下」で、起因物は「樹木」です。
この事故は樹木を伐倒しようとしたときに起こりました。
木は倒す方向に受口を作ります。こうして、作業者は安全な位置に避難します。
しかしこの事故の時、枝が隣の木に引っ掛かり、倒れませんでした。
そのため、引っ掛かっている枝を切り落とそうたところ、枝が落ちてきて、下にいた作業者に当たってしまったのでした。
枝は、長さ8メートル、幅13センチもありました。重さは数十キロから百キロ近くあったと思われます。相当の衝撃になったはずです。被災した作業者は亡くなられました。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
この事故は、本来の手順通りに進んでいれば、起こりませんでした。 イレギュラーな出来事が起こり、その対処によって起こったのです。
まず、倒れる方向が適正だったのか、検討する必要がありそうです。周囲の状況を考え、倒す方向を決めたのでしょうが、枝が引っ掛かってしまったということは、ベストではなかったようです。
さらに、枝が引っ掛かってしまってからの対処が十分でなかったようです。枝の落下地点から人を避難させるなどの対処が十分ではありませんでした。
事故は、普段繰り返される定常作業では起こりにくいのですが、トラブルへの対処などイレギュラーな事態に対処する非定常作業では事故の確率が上がります。それは、トラブルをいち早く解消させるために、少々の無茶も行ってしまうからです。
安全な枝の処理方法も、手順が定められていたと思います。ところが、倒れるはずの木が倒れないことで、慌てたのか無理な作業になり、事故を招いたのではないでしょうか。
それでは、原因を推測をまとめてみます。
1 | 木を伐倒する方向などの計画が適正でなかったこと。 |
2 | 引っ掛かった枝の処理の手順が適正でなかったこと。 |
3 | 枝の落下地点に作業者がいたこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
木を伐倒する際には、安全に倒す方向を検討しなければなりません。倒す方向には障害物や、この事故のように枝が引っ掛からないことも見ておく必要があります。
また、事前に障害物があるのを確認したら、枝を落とすなどの対処を行っておく必要があります。
もし事前に検討したにも関わらず、うまくいかなかった場合は、その対処も焦ってはいけません。
安全に処理する方法を検討しなければなりません。
この事故であれば、安全に枝を切る方法を検討する必要があります。枝が落下する地点には立入禁止としなければなりません。また枝を落とした瞬間、木本体が倒れるかもしれませんので、ロープなどで支持しておいたり、倒れる方向は立入禁止としておく必要があります。
対策をまとめてみます。
1 | 木を伐倒する方向など、事前の計画を検討する。 |
2 | 事前に引っ掛かる恐れのある枝を払っておく。 |
3 | 枝が掛かってしまった場合は、安全な処理方法を検討する。 |
トラブルやイレギュラーな出来事があった時、焦って対処するのではなく、対処方法を検討することも大事です。
いち早く、何とかしたいと考えるものですが、焦りは事故を招きます。そのため、しっかり対策を検討してから、実行しなければなりません。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【安衛則】