厚生労働省労働局長登録教習機関
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年明け早々、中国の上海市場の下落により、世界的に経済が悪化しています。日本はその影響をまともに受けてしまい、平均株価が年明けから3000円も下がったりしました。
おかげさまで、私の投資信託も軒並みマイナスになっている始末。投資信託は、貯金代わりなので、そう積極的に運用しているわけではありませんし、焦って売り買いしたりするつもりはないのですが、マイナスになっているのを見ると、気持ちはよくありません。
この株価の下落は、他にサウジアラビアとイランの関係悪化や、原油価格の下落も関係しているのでしょうが、中国の影響が大きいのは間違いなさそうです。
今さらいうまでもありませんが、中国はとてつもない勢いで発展してきました。いまやGDP世界2位の超大国です。
そのスピードは、想像を絶するものと言えます。
道路や橋などのインフラの整備、ビルや建物の建築は、日本では考えられない早さで作られていきました。
何かを優先すると、別の何かが後回しになります。これは中国の発展においても、同じです。
中国の発展で、置いて行かれたものは、品質と安全です。消費者と労働者の権利と健康、そして命です。
経済発展の象徴的存在である広州で、昨年末にとんでもない事故があったのは記憶に新しいと思います。
郊外に高さ100メートル以上に積み上げた残土が流出し、町が飲み込まれました。そんなになるまで土砂を積み上げるなんて、冗談のような事故が実際に起ったのです。 中国・深センで土砂崩れ、59人不明 法規違反の疑いも(朝日新聞)
また昨年天津では大爆発がありました。この事故でも、決して少なくない犠牲者が出たのは、言うまでもありません。
日本でも明治から第二次大戦、戦後の高度成長期など急激な経済発展では、多数の犠牲者を出しました。
一時期流行った小林多喜二の「蟹工船」などを読むと、過酷な労働環境に戦慄を覚えます。
そのような痛みと犠牲の上に、今があるのです。
そして、それらの犠牲の反省によって、安衛法をはじめとする法整備や安全対策が生まれ、発展したのです。
中国は、かつて日本でも経験した痛みを感じているプロセスにあるといえそうです。
ライブドアニュースにサーチナの記事で、こんな記事がありました。
驚愕した・・・日本で建設現場を見学して中国との違いに驚き隠せず (サーチナ)
サーチナというのは、中国や韓国のニュースをとりあげています。
その記事の中に、安全について、このような一節がありました。
「さらに記事は、安全性に対する考え方の違いについて、日本では「現場での安全第一が徹底」されており、見学者は既定の作業着とヘルメットの着用が義務付けられていたと紹介。また、靴も専用の作業靴をわざわざ用意してくれたと振り返ったうえで、安全確保のため作業員以外は歩ける場所が決められていること、毎週作業員に対して安全教育を実施していることなどを称賛した。」
中国では、ビルでも尋常ではないスピードで建ちます。見ていて大丈夫なのか不安になるくらい。そしてこの不安は的中することも少なくなく、「2009年には上海市閔行区蓮花南路で建設中の13階のマンションが「仰向け」に倒れた。」というマンガの中のできごとのようなことが、実際に起こります。
尋常でないスピードで作り上げられるということは、とにかく急ぎ成果を求めるということです。成果優先のため、それ以外は置き去りにされます。置き去りにされるものは、仰向けに倒れてしまうような品質であり、安全です。
日本の建設現場では、作業着を着て、ヘルメットを着用し、安全靴を履きます。それ以外にも、安全帯など様々な保護具を使用します。作業場でも、関係者以外は立入禁止にしたり、作業時のルールがあります。
日本では当たり前のことも、中国では当たり前でないのが実情のようです。
近代的な技術や建物、生活様式の吸収は早くとも、それを支える精神を取り入れるのは時間がかかるようです。
このことは何も中国だけのことではありません。日本も成長だけを見ていた頃、多くの犠牲を払ってきたという歴史があるのです。
日本で、安衛法が成立したのは昭和47年(1972年)です。この法律が成立する直前の昭和45年以前、年間の死者数は6000人以上でした。さすがにこのままじゃダメだということで、法整備を行い、年を経るごとに、改正し、強化していったのです。
安衛法と関連則の全ての条文は、実際に起こった事故をもとに作られています。条文の1条、1条には犠牲者があるのです。
安衛法は安全について対策を強化のきっかけになりましたが、それ以前でも西欧でも同様の痛みを抱えていたはずです。
近代的な技術は取り入れやすくとも、安全や環境についての配慮は、残念ながら、実際に痛みを伴わないと、取り入れられないようです。
中国での安全に関する法律が、どのような内容なのかは、不勉強のため知らないのですが、もう目をつぶれなくなった事故の痛みをどうしていくかが、大国としての責務なのでしょう。
ようやく汚職対策に手を出し始めた中国で、どの程度実行できるのか、全くもって不透明なとこでしょうけど。
大連といい、広州といい事故のスケールがデカすぎです。
これを大きな痛みと考えるかどうかで、今後の方針が決まるのでしょう。
やろうと思えば、EUやアメリカ、日本など参考になるものは、たくさんありますし、協力も惜しまないはずです。
やろうと思えばね。