厚生労働省労働局長登録教習機関
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RC造り、鉄筋コンクリート造りの建物は頑丈です。しかし打ちっぱなしのコンクリートは水が染みこみます。そう簡単に雨漏りするということはありませんが、長期間雨風にさらされると、ひび割れや剥落などが起こります。
雨風は建物の寿命を縮めてしまうのです。建物を長持ちさせるためには、雨風を防ぐひつようがあるのです。建物の外壁が塗装されているのは、単にデザインだけではなく、防水の役目もあるのです。
中でも真っ向から雨を受ける場所として屋根があります。屋根はその面積全てで雨を受けるのです。
屋根の浸水を防ぐために、防水工事というものがあります。防水は建物を雨から守るために、非常に重要な工事なのです。
防水工事は、防水シートを張り、その上に塗装します。
塗装に使用する塗料は、可燃性です。火が近づくと危険になります。
東京都世田谷区で防水工事の際に、作業者がやけどする事故がありました。
今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
マンション屋上で爆発音、防水工事の作業員やけど (平成28年1月28日)
28日朝、東京・世田谷区のマンションの屋上で爆発音を伴う火災があり、男性1人が顔にやけどをするけがをしました。 28日午前9時すぎ、世田谷区のマンションで、「爆発音があり、屋上から煙が出ている」と119番通報がありました。東京消防庁のポンプ車など14台が出動し、火はおよそ20分後に消し止められましたが、この火事で3階建てマンションの屋上30平方メートルが焼けました。
当時、マンションの屋上では防水工事が行われていて、作業員の男性が顔にやけどをするなどけがをしました。警視庁は、工事で使用していたバーナーの火が塗料に引火したとみて詳しく調べています。 |
この事故の型は「爆発(火災)」で、起因物は「塗料」です。
マンションの新築現場で防水工事を行っていたところ、塗料がバーナーの火で引火して、爆発を伴う火災が起きました。
防水工事では、コンクリートの表面に防水シートを貼り付けます。このシートが紫外線などから守るために塗装するのです。シート貼りを貼る前にはしっかりコンクリートの表面を乾かさなければなりません。この時、バーナーなどを使って乾かすこともあるのです。
塗料と火気が比較的近くにある環境ではあったと思われます。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
作業は午前の早い段階で起こっているので、バーナーでコンクリート面をあぶり、乾かしている時に起こったのではないかと思われます。
シートを貼り付ける面が少しでも湿気ていると、防水の効果は低くなります。そのため乾かす作業は必要ですが、塗料に引火したということは、塗料を置く場所に問題があったようです。
バーナーの火であぶっている側に塗料があったのではないでしょうか。さらに塗料缶は新品で封がしっかりされているのではなく、以前に開封されていたものであれば、わずかですが漏れ出していた可能性もあります。
問題は、引火性の塗料の側で、バーナーの火であぶってしまったことが原因のようです。
それでは、原因を推測をまとめてみます。
1 | 塗料の側で火を使ったこと。 |
2 | 塗料の封がしっかりされていなかったこと。 |
3 | 塗料の危険性について安全教育していなかったこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
塗料の多くは引火性です。シンナーのようなものと考えてもらえればわかるのではないでしょうか。
事故の時作業していた人たちも、塗料が引火性だということは知っていたはずです。しかし作業の時、その側で火を使うことにまで、気が回らなかったのかもしれません。
引火させないためには、バーナー作業な時に塗料を置いておく位置を考える必要がありそうです。少なくとも、火元からは遠ざけなければなりません。
火を使う作業では、周りに引火物がないことを確認しなければなりません。
また塗料の蓋を一度開けた場合は、なるべくしっかり口を閉じたり、ビニルで覆うなどして、漏れないようにしてやると、火災を防ぐだけでなく、中毒を防ぐことにもなりそうです。
対策をまとめてみます。
1 | 引火性の塗料の近くで火気は使用しない。 |
2 | 塗料の仮置き場所は、火気厳禁とする。 |
3 | 塗料缶を一度開封したら、漏洩しないように口を閉じる。 |
防水だけでなく、塗装でも火気は厳禁です。長く携わっていると、危機感が薄くなりがちですが、事故はそんな時に起こってしまいがちなのを忘れてはいけませんね。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【安衛則】
第279条 危険物などがあり、爆発又は火災が生ずるおそれのある場所においては、火気を使用してはならない。 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。