厚生労働省労働局長登録教習機関
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先日、こんな事故があったんですよ。
被害としては幸い怪我人はないものの、車のフロントガラスにヒビが入った程度です。
人的被害はないものの、自損、物損事故もかなりがっくりきます。
今回は私の身近で起こった事故について、取り上げ、原因と対策を考えてみたいと思います。
まずは事故状況です。
私はその場におらず、後から報告を受けたので詳細まではわからないのですけども、こんな感じのようです。
その日の作業は、水中ポンプの取替工事でした。
水中ポンプといっても、工事中に使う仮設用の小さなものではありません。
もっと大きいものです。重量も100キロ以上あります。
このポンプが深さが5メートルくらいの水槽の中に沈んで、設置されているのです。
長年使ってきたポンプは、腐食したり、モーターが弱ってきたので、今回取り替えることになったのです。
ポンプは重いので、人の手で上げ下げすることはできません。
そのためユニック車(クレーン機能付トラック)で作業を行なうことになりました。
ユニック車は、いわゆる移動式クレーンに分類されます。
さてユニック車は水槽の近くまで接近できるのですが、水槽の幅が広いため、車の荷台を向けた位置取りをするとクリーンのアームが届きません。
クレーン作業する時は、前吊り(運転席側)よりも、後ろ吊り(荷台側)で行なう方が安定します。しかし今回の作業場の条件では、アームの長さの関係で、前吊りせざるを得ませんでした。
後ろ吊りより安定が弱いというものの、このユニック車は2トン吊りの能力があり、ポンプの重量は100キロ程度なので、十分用途を満たしていました。
このようにして、作業はユニック車で吊って、ポンプを新しくするものでした。
古いポンプを撤去しようとした時に、事故は起こりました 。
運転席の前でポンプが吊られ高く持ち上げられ、荷台に移動していた時です。ある程度アームを出して、障害物がないところを、ぐるっと旋回させればいいのに、この時操作していた人は、アームを立てて、運転席の屋根の上から荷台に載せようとしたのでした。
アームも短く縮め、屋根ギリギリの高さを通過しようとしていた時、ポンプが風に煽られ、ポンプの下部がフロントガラスに接触してしまったのです。
ちなみに風に煽られたものの、強風ではなく、十分作業はできる程度でした。
そのため完全なるヒューマンエラーといえます。
衝突によってフロントガラスの上部、バックミラーの上辺りに蜘蛛の巣が走ってしまいました。
なんだか天井の低いトンネルに強行突入し、天井をぶつけたみたいになったのでした。
フロントガラスにヒビが入ったものの、運転はできる程度だったため、そのまま帰社し、修理に出したのでした。
怪我人はなかったものの、事故のことを耳にしたときのがっかり具合はこの上なしでした。
修理費用はかかりますし。
原因と対策は |
この事故の原因は目測の誤りといえるのでしょうか。
アームの長さ、移動経路こういったものがよく分かっていなかったといえます。
実を言うと、この時クレーン操作をしていたのは有資格者ですが、なかなか雑な仕事をする人ではありました。
普段の仕事っぷりを見ると、なんというか大丈夫だろう、いてもうたれ的な感覚で作業していた感じがあったのかもしれません。
さすがに事故報告の時はしゅんとしていたのですが。
作業するのは人間ですから、性格があります。
几帳面な人もいれば、ガサツな人もいます。
それは同じように特別教育などを受けていても、実際の仕事のやりようは人それぞれです。
もし誰しもが同じ教育を受けたなら、同じような作業をしてくれるならば、事故の多くは起こりません。
実際は、そうではないから事故は後を絶たないのです。
雑な作業をする人だから事故になるというのであれば、困りものです。
どんな人であっても事故がないようにしたいものです。
クレーン作業での注意は、クレーン則などで細かく定められています。
その1つに、合図者を配置し、合図するというものがあります。
【クレーン則】
合図者は、クレーンを操作する人が安全に操作できるように合図するのが役目です。
この事故の場合、操作していた人以外がうまく機能していなかったことが大きな問題だったかと思われます。
事故は1人で起こすものもあれば、そうでないものもあります。
合図者の協力が十分でなく起きた事故は、複数の作業者で起こした事故とも言えなくもありません。
協力して作業すること、例えば周りの安全を確認することは非常に重要です。
今回の事故でも周りの作業者が見て、合図していたら防げた可能性があります。
たまたまフロントガラスが割れてしまう程度でしたが、場合によってはもっと大きな事故になり、死者が出ることだって可能性はあります。
作業は個人で行うものではありません。
クレーン操作を行うのは1人ですが、周りの作業者は協力できることがあるはず。
今回の事故の話を聞いて、そういう協力が事故を防ぐのに重要なのだなと感じた次第でした。
フロントガラスの破損は痛いものです。
雑なクレーン作業もそうですが、周りもちゃんと見とけよとも思ったりしました。
そんな風に多少イラッとすることから、作業者の協力が事故防止に重要なのだなと思ったのでした。
さて、フロントガラスに蜘蛛の巣をつけたユニック車は、無事復活し、今日も元気に走っているのでした。