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普段行き慣れている作業場に、どんな危険があるのか、一番わかっているのは作業者でしょう。
しかし、その危険はすぐに改善されるかというと、時間がかかるものもあります。とくに大掛かりな設備投資や配置換えなどは、長期的な計画で行われます。
そのため、危険があると分かっていても、何ら対処もありませんというところも少なくないでしょう。
危険状態、危険作業をそのままにして、作業していたら事故が起こったなんてことも数百件どころではないはずです。
北海道旭川市の工場で、鉄骨の下敷きになるという事故がありました。
今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
工場で600キロの鉄骨倒れ下敷きに、女性死亡 (平成28年3月2日)
2日、旭川の工場で、倒れた鉄骨の下敷きになった72歳の女性作業員が死亡しました。
2日午前11時半ごろ、北海道旭川市工業団地の機械部品の製造会社で、パート従業員が倒れてきた鉄骨の下敷きになり、死亡しました。 当時、鉄骨にシートをかける作業をしていて、別の作業員が鉄骨をフォークリフトで運ぼうとしたところ、地面に置いてあった鉄骨の一つが倒れたということです。 鉄骨ははしご状で、長さ8メートル、重さはおよそ600キロありました。 |
この事故の型は「崩壊・倒壊」で、起因物は「鉄骨」です。
事故は鉄骨が倒れ、作業者が下敷きになったというものです。どうやら鉄骨をフォークリフトで運ぼうとしたというのが、倒した原因のようです。
倒れたというからには、このハシゴ状の鉄骨は、寝かされていたのでなく、横向けに置かれていたのでしょう。
これに何かが接触し、バランスが崩れたのでしょうか。
詳細な配置などは分かりませんが、とても不安定な状態の状態の鉄骨の側での作業だったと思われます。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
鉄骨が横向けに置かれていたのは、フォークリフトで運びやすくするためだったのではないでしょうか。
ハシゴ状になっていたということなので、隙間に爪を引掛け運んでいたのかもしれません。
もしそれが以前から続いていたのであれば、危険状態はずっと続いていのかもしれません。
フォークリフトで運ぼうとした時に倒れたというので、接触した可能性があります。
接触したのは、フォークリフトなのか、フォークリフトで運んでいた別の鉄骨なのかはわかりませんが、運転者が距離感などを図れていなかったのでとと思われます。
また、不安定な立ち方の鉄骨の側で作業するというのは、結果的に無謀な状態だったのではないでしょうか。
シート掛け作業なので、近づく必要はあったのでしょうが、倒れてきた場合の逃げ場はなかったようです。
ずっと同じように続いていたのかもしれませんが、そのような作業方法や配置を見つめなおすことで、危険を発見できたのではと思います。
それでは、原因を推測をまとめてみます。
1 | 鉄骨が横向に置かれ、倒れやすい状態だったこと。 |
2 | フォークリフトが鉄骨に接触したこと。 |
3 | 作業者が運番作業時に鉄骨の側にいたこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
普段どのように鉄骨などを保管していたのかは分かりません。今回も倒れたという記事から、横向けだったのではと推測しているに過ぎません。しかし結果として、すぐ側で作業していた人の上に倒れたということなので、置き方に工夫の余地があるのではと思われます。
寝かせるのが一番安定するのでしょうが、フォークリフトで運びにくいという問題もあります。
これも運ぶときに邪魔になるかもしれませんが、倒壊防止用の柵を作るというのも対策として考えられそうです。
またフォークリフトで接触したことが事故の直接原因ならば、しっかり誘導を行わなくてはなりません。
フォークリフトなどの荷役運搬機械は作業指揮者を必要とします。大型の運搬機械ならともかく、フォークリフトで指揮者は配置するのは少ないかもしれません。少なくとも物を載せたり、下ろしたり、接触する可能性がある場所では、誘導する人、合図する人は必要ではないでしょうか。
作業方法にも改善の余地がありそうです。
今回の鉄骨へのシート掛けは、鉄骨に近づかないとできません。作業者だけが近づいている状態ならともかく、フォークリフトが近づいているときは離れるなどのルールがあってもよかったかもしれません。
対策をまとめてみます。
鉄骨が倒れない保管をする。 | |
2 | フォークリフトは誘導する。 |
3 | 近くの作業者は運搬作業時には、避難する。 |
どんな危険な状態があっても、慣れると危険意識が薄れます。
そして、どんどんと危険に対しての許容値が高まってしまいます。
危険を危険と感じにくくなると、非常に無防備になります。
作業場に危険はないか、少し客観的に見ることは、事故の芽を摘むことになるのです。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【安衛則】
第151条の7 車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、接触するおそれのある場合は、誘導者を指名し、誘導させる。 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。