厚生労働省労働局長登録教習機関
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丸のこ盤の事故について、もう1つ紹介します。
これもありうる事故だと思います。
丸のこ盤は木材を切るだけでなく、金属やプラスティックも切ることも出来ます。
高速回転する歯は、大概のものを切ってくれるように思わせてくれるに十分な威力と鋭さを持っています。
しかし使用する歯は万能ではありません。
木材には木材切断用、金属には金属切断用のものがあるのです。用途が大きく異なります。
ところが、木材や金属切断が両方ある作業場で、限られた丸のこ盤を使用する場合、用途別に使い分けたり、いちいち歯を交換したりなどを行わない場合もあります。
木材用の丸のこ盤で、金属を切る。
そういったこともあるでしょう。
ほとんどの場合は、何事もなくやれてしまうかもしれません。
しかし十分な危険があることも確かなのです。
今回は、用途の違う丸のこ盤を使用して起こった事故を取り上げ、原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
今回と厚生労働省の労働事故事例かち参照にしています。
木工用丸のこ盤でアルミ板を切断中、のこ歯に接触し死亡(NO.101170 )
自動車の修理工場において、建設機械の部品であるアルミニウム製縞板)を木工用の携帯用丸のこ盤で切断しているときに発生したものである。
作業者は、工場長より建設機械のバッテリー用カバー製作を1人で行うよう指示を受けた。作業内容は、すでに切断され山型に成型加工されたアルミニウム製縞板を2枚に切断するものであった。 そこで、万力にアルミ板を固定し、携帯用の木材加工用丸のこ盤でアルミ板を切断していたところ誤ってのこ歯に接触し被災した。近くにいた工場長がすぐに救急車を呼んで病院に搬送したが、数時間後に死亡した。 作業の前に適切な作業方法の検討を行った上で作業計画を定めることを行っておらず、また、安全な作業を行うための指示もしていなかった。 さらに、作業者に対する安全衛生教育も行っていなかった。 |
この事故の型は「切れ・こすれ」で、起因物は「丸のこ盤」です。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
この事故の原因は適切な丸のこ盤を使用しなかったことです。
金属、この場合はアルミニウムですが、木材とは違います。そのため歯は滑ったり、反発したりするのです。
さらにこの時使用していた丸のこ盤の接触防止カバーは故障していました。そのため材料から歯が離れても、カバーされない状態だったのです。
また切断するアルミニウム板も山折り加工されていました。そのため単なる板を切るのとは勝手が違うのです。
そのような難しい作業を教育を受けていない作業者に、作業手順などの指示もせず、当たらせて良いものではなかったのではないでしょうか。
このように事故に至る要素が多かったようです。
それでは、原因を推測をまとめてみます。
1 | 金属切断に木材用の丸のこ盤を使用したこと。 |
2 | 丸のこ盤の接触防止装置が故障していたのに使用したこと。 |
3 | 安全教育、作業手順の指示を行っていなかったこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
丸のこ盤は、切断する素材に適したものを使用なければなりません。
木材には木材用を、金属には金属用を使用します。素材の違いは丸のこ盤の思わぬ反発を招いたりします。 兼用はしてはいけません。
歯の接触防止装置が故障していれば、すぐに修理しましょう。修理が終わるまでは、使用は控えるべきです。そんな時間あるかと思うかもしれませんが、接触防止装置で防げる事故があるのなら、そちらを優先すべきではないでしょうか。
また丸のこ盤作業を行う人には、特別教育を受けさせなければなりません。特別教育を修了していない人には、させてはいけない作業なのです。
さらに作業にあたっては、作業手順や注意を取り決めておく必要があります。
この事故は体制や準備をしっかり行っていれば、防げたのではないかと思われる事故ではないでしょうか。
対策をまとめてみます。
1 | 丸のこ盤は切断する素材にあったものを使用する。 |
2 | 歯の接触防止装置を点検する。故障があれば直ちに修理する。 |
3 | 作業者には特別教育を受けさせる。作業手順を決める。 |
丸のこ盤は非常に身近な機械です。
危険はわかっていても、使用しているとその危険を忘れてしまう傾向にあります。
丸のこ盤の事故を知り考える事は、 身近なものの危険を再認識させるものになるのではないでしょうか。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【安衛則】
第122条 木材加工用丸のこ盤には、割刃その他の反ぱつ予防装置を設けなければならない。 |
第123条 木材加工用丸のこ盤には、歯の接触予防装置を設けなければならない。 |
第124条 木材加工用帯のこ盤の歯の切断に必要な部分以外の部分及びのこ車には、覆い又は囲いを設けなければならない。 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。