○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

猫井川、コアな穴に足を取られ

entry-619

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第82話「猫井川、コアな穴に足を取られ 」
馬万たち舗装班による舗装工事は順調に進んでいきました。
運び込まれた熱々のアスファルトは、どんどん敷き均され、ローラーで填圧されていったのでした。

「猫井川!端までしっかり転圧しないと、後で剥がれてしまうぞ。」

小型転圧機でローラーでは入り込めないところを転圧していた猫井川に、鼠川が言いました。
鼠川は、手にバケツとヒシャクを持って、敷き均されたアスファルトに水を掛けていました。アスファルトはまだまだ100℃を超える温度なので、白い水蒸気になり、モクモクと辺りに漂います。

「分かっているんですけど、ブツケちゃうと、また傷がいくので。」

路盤を転圧している時に、転圧機を擁壁にぶつけ、欠けされてしまったこともあり、どうも際まで突っ込みきれない様子でした。

「だがな後で舗装がとれたら、傷どころではないくらい不細工なことになるぞ。
 もっと突っ込め。もしぶつかっても後で補修すればいいだろう。」

「いや、簡単にいいますけど。」

「牛黒だったら、壁なんて傷だらけだぞ。
 それに比べたらマシなもんだろうが。」

「あの人ならそうでしょうけど。だからOKにはならないですって。」

「ああ-、しっかりしろ。
 今のままだと、壁際はしっかり転圧されないまま固まってしまうぞ。」

「わかっています。ちゃんとしますから。」

そんなやり取りをしている間にも、舗装はどんどんと進み、残りもあと1車程度になってきました。

「よし。あともう少しで全体的に敷けるな。
 ところで、コアはどこで抜けばいいんだ?」

馬万が猫井川に聞きました。

「コアですか?あのコアって?」

聞き慣れない単語にキョトンとする猫井川。
その様子に馬万は、

「お前はコア抜きを知らないのか?
 いいか、舗装の厚みを測るためにサンプルを採取するんだよ。丸くくり抜くんだが、多少出来上がりが汚くなるから、目立たないところがいいんだが。」

「ああ、たまに寺務所で見かけるアスファルトをラップで包んだのですか?
 あれはコアっていうんですか。」

「そう、それだ。
 どこで抜く?」

「そうですね。特に指定はないんですけど、擁壁近くのほうがいいですか?」

「それでも構わないんだが、端の方だと厚さが違ったりするから、もっと中のほうがいいんじゃないか。
 指定がないなら、その建物の影とかはどうだ?
 もう冷えてきているし。」

そう言って、建物と擁壁の間の通路を指し示しました。

「そこでいいと思いますよ。」

「それじゃ、抜いとくか。1箇所でいいよな?」

「何箇所抜いたらいいのかはわかりませんけど、1箇所でいいと思います。」

「敷地の広さを考えたら、1箇所で十分だろう。
 おーい、ここをコア抜きしてくれ。」

馬万はそう言って指示し、コア抜き場所にチョークで円を書いたのでした。
指示を受け、1人がコア抜き機を使って、直径10センチくらいのコアを抜きました。

「舗装の厚さは、5センチちょうどだな。
 いいところだ。」

抜き取ったコアを持ち、靴でチョークの後をかき消すと、馬万は車に向かいました。

「その穴はあとでアスファルトを詰めるからな 。
 そんなところでつまづく奴はいないだろうけど、一応穴には気をつけろよ。」

猫井川は馬万を見送り、再度小型の転圧機でアスファルトを締め固めていきました。
しばらく作業を続けていると、最後のアスファルトを載せたダンプが到着しました。

ダンプが届くと、みんな慌ただしく準備を開始しました。
猫井川も転圧機を使いつつ、アスファルトがフィニッシャーに積み込まれる様子を見ていました。

よそ見しながら、転圧機を動かしていた時でした。
先ほど開けた、コアの穴につま先を突っ込んでしまい、転んでしまったのでした。
転んだ拍子で転圧機を手放してしまうと、転圧機は勝手に前に進んでいきました。

転圧機が向かう先には擁壁があります。

「やばい、止まれ!」

猫井川の願いむなしく、転圧機は擁壁に激突したのでした。

慌てて起き上がり、転圧機を掴むとエンジンを止めたものの、後の祭り。
擁壁にはまたしても欠けができていたのでした。

「慎重にしていた介がなくなったな。」

背後から鼠川の声。

「ええ。ぶつけないようにしてたんですけど。」

黒いアスファルトの上に、コンクリートの破片が虚しく散乱しているのを見て、切ない気持ちになる猫井川なのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

舗装工事もそろそろ終わりですね。
今回はアスファルトの敷均しと転圧の時のヒヤリ・ハットです。

舗装工事では、舗装(表層)の厚さを測るためにコア抜きというものをします。
コアとは敷均されて、転圧された舗装の一部をとることです。これは直径10センチ程度で穴を開けで採取します。 採取されたコアは円柱の形をしています。

コアを抜いた後は穴が空くわけですが、猫井川はそんなところに足を突っ込んでしまったようです。
よそ見していると、足元がおろそかになりますね。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット よそ見しながら、転圧機を動かしていたら、コアの穴にはまり転んだ。
対策 1.足元には注意する。
2.コアの穴周りは、わかりやすくマーキングしておく。

猫井川の擁壁工事もいよいよ終わりですね。
最後は、欠けた擁壁の補修が残っていますけど。

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