厚生労働省労働局長登録教習機関
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都心には隙間なく建物が溢れているため、新たな建物を作るには、古い建物を壊す必要があります。
街中で、建物がシルバーのシートに囲われ、壊されている光景も見かけたりするのではないでしょうか。
解体作業時の危険は、建築作業時とは若干異なります。
ガレキなどが散らばるので、これらに当たる危険があります。
そして建築でも解体でも共通する危険が、高所からの墜落です。
足元にガレキなどが散乱しているので、解体作業時はつまづいて、墜落するという危険があるかもしれません。
大阪のビルの解体現場では、作業者が墜落するという事故がありました。
今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
解体中のビルから転落 作業中の68歳男性が死亡(平成28年5月9日)
9日午前10時ごろ、大阪市浪速区戎本町の工事現場で、解体中の6階建てビルの4階部分で作業をしていた建設作業員が転落。全身を強く打ち、病院に搬送されたが約1時間後に死亡が確認された。
大阪府警浪速署によると、事故当時、ビル4階で鉄製の床板を6メートル四方に切断する作業をしていたという。命綱は付けていなかったとみられ、詳しい事故原因を調べている。 |
この事故の型は「墜落・転落」で、起因物は「構造物」です。
この事故は解体工事中のビルで、鉄製の床板を切断する作業時に起こりました。
床板を6メートル四方に切るということなので、かなりの広範囲を切っていたことになります。記事から推測するに、この穴から落ちたのではないでしょうか。
この作業時、作業者は安全帯を使用していませんでした。ぽっかり開いた開口部から下の階に落ちてしまったのではないかと推測されます。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
まずこの作業の計画や手順に問題があったのではないかと考えられます。
床板の切断は行う必要があったにせよ、安全に配慮したものだったかが検討が必要です。
仮に計画や手順が適正なものであったとしても、現場で守られていなければ、意味がありません。
職長は指示していたのか、また指示があったなら作業者が実行していたかも重要です。
何より開口部付近、つまり墜落する危険のある場所でな作業にも関わらず、安全帯を使用せずに作業させていたのが大きな問題だといえそうです。
それでは、原因を推測をまとめてみます。
1 | 安全帯を使用していなかったこと。 |
2 | 作業計画や手順が適正でなかったこと。 |
3 | 現場の指示や安全意識が低かったこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
建築工事や解体工事などの種類によらず、高所で作業する場合は墜落防止措置が必要です。
作業床や手すり、安全ネットなどの墜落防止設備があればともかく、そのような設備がない場合は安全帯が必須です。
安全帯は着けているだけでは意味がありません。フックを掛け、正しく使用してこそ効果があります。
ただ腰にぶら下がっている安全帯は、いざという時に身を守ってくれないのです。
作業方法や手順は、現場に合ったものを作らなければなりません。
標準的な作業手順では、見落とす危険があります。事前に調査し、その内容を反映させた手順にします。
またせっかく作業手順などを作っても実行されなければ意味がありません。
そのためには職長などが指示をする。そして作業者に従わせる必要があるのです。
対策をまとめてみます。
1 | 墜落の危険がある場所では、安全帯を使用する。 |
2 | 施工前に現場を調査し、その内容を反映した計画書と手順書を作成する。 |
3 | 職長が現場指示を徹底する。 |
このような解体現場での事故を、目にすることが多いように思います。
事故の起こり方には、数多くのバリエーションがあるわけではありません。パターンがあります。
解体作業時の墜落事故は、よく起こるパターンです。
安全帯を使用していれば防げた。後から振り返ると、そう反省できるものも少なくありません。
高所では安全帯。
これは命を守るために、絶対に忘れてはならないことなのです。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【安衛則】
第519条 高さが2メートル以上の作業床の端、開口部等には、囲い、手すり、覆い等を設けなければならない。 |
第520条 労働者は、安全帯等の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。