厚生労働省労働局長登録教習機関
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KYは毎日やるものです。
毎朝、作業前にミーティングとともに行われます。多くの現場では、KYを実施しないと、作業してはダメなはずです。
小さな規模の工事では、毎日やらずに検査前などにまとめて書くというのも多いですが、原則は作業前に実施し、記録を残します。
私も現場でKYを行います。この時非常に困ったこと、問題点が2つあることがわかります。
問題点の1つ目は、ネタがないこと、そしてマンネリ化していることです。
毎日、同じような作業を繰り返していると、新しいネタなどありません。
ショベルカーで掘削作業を行うのであれば、いつも書くことは「重機接触の危険に注意」といったことでしょう。
工場作業であれば、ルーティン作業の繰り返しですから、注意するポイントは決まっています。
新たな危険など、ほぼありません。
注意しなければならない時はトラブルがあった場合や、新たな作業を行う場合です。
慣れない作業の時はしっかりKYしなければなりません。
とはいうものの、未知の作業では、どんな危険があるかもわからないかもしれませんけど。
もう1つの問題点は、内容が曖昧だということです。
例えば、行動目標が「手元に注意する」や「足元に注意する」なんてことが書かれていることも少なくありません。
しかし「手元・足元の注意」とは、具体的にどうするのでしょうか。それにあえて言うこともないのではないでしょうか。
このように危険に対する安全対策、行動目標が曖昧なのです。
「○○に注意」と書いても、それでは何の危険防止にもなりません。
「安全第一」と言っているのと、そう代わりはないのです。
この2つの問題点、傾向はどうも私の会社だけではなさそうです。
安全パトロールで様々な会社の現場に行った際に、KYも見せてもらっていますが、同様の傾向があるようです。
パトロールで行った時には、偉そうに「具体的な行動を目標として書かないとダメですよ。」などと指導してます。
自分はどうなんだと言われると、実に面目ないんですけども。
とはいえ、この2つの問題を抱えたKYは少なくないようです。
KYは危険への感受性を高めることに目的があります。
作業上、特に気をつけなければならない危険ポイントは限られています。しかし細かく作業を見ていくと、思いもよらない危険もあります。KYでそうような危険まで拾い出せるとより効果的です。
KYで危険を拾い上げます。
しかし、思いつきもしない危険はそうそう起こるものではありません。
誰かが何かしら危険の芽に触れています。
その芽は些細すぎて、見過ごされていることも多いです。
見過ごされているけど、「こんな危険があるよね」と話したりすると、「俺も、同じようなことがあったよ。」と共感を得られるものも少なくありません。
見過ごされがちだけど、人に話すと共感が得られる。
何かに似ていませんか?
私には「あるあるネタ」に思えてくるのです。
つまりKYとは、現場あるある 探しともいえます。
お笑いでは、1つのジャンルがあるあるネタですよね。
それこそたくさんの芸人さんがあるあるネタをやっています。そのジャンルは一般OL、近所のおっさんと枚挙に暇ありません。しかも見ていると、実際にそんな人がいそうな感じがするのが不思議です。
KYは現場あるある(主に危険に関して) です。
「こんなことしてたら危なかったよ」と共感を得られるネタ探しをして、KYで披露するものです。
KYあるあるネタ探し |
あるあるネタを作るためには、日々の観察が大事です。
芸人さんも、ものすごく細かいところまで観察し、再現しているはずです。
現場を観察して、ネタを集めなければなりません。
このネタ探しに役立つのが、ヒヤリ・ハットです。
ハインリッヒの法則というのは見たことがあるでしょうか?
重大な事故の背景には、29件の軽微な事故があり、その背景には300件のヒヤリ・ハットがあるというものです。
ヒヤリ・ハットは、事故に至らなかった危険です。
これはたまたま事故にならなかっただけで、ほんの少しタイミングや体の位置が悪ければ、事故になっていたものも少なくありません。
事故でないため、重大視されにくいものですが、KYのネタやヒントはここにあります。
事業所によっては、ヒヤリ・ハットシートを記入させるところもあります。
これはこれで使えるでしょう。
ただヒヤリ・ハットなどは改まって書けというと、なかなか出てこないものです。
雑談の中で「そう言えば、この前こんなことがあって・・・」と、出てくるのが多そうです。
私も雑談の時に、「これは焦った」などと耳にすることが多いです。
そうやって耳を傾けると、意外と表に出ないヒヤリ・ハットがあるものです。
自分が経験したヒヤリ・ハットがKYで使われると何となく嬉しく感じます。
嬉しいことには、積極的になって、新たなヒヤリ・ハットを探し、話す。
理想はこの循環が生まれることではないでしょうか。
職長さんなどは、作業者が語るヒヤリ・ハットに耳を傾け、ネタ集めに勤しむのがいいのではないでしょうか。
集まったネタはKYで取り上げ、対策を検討する。
こうしていくと、マンネリ脱却に繋がるかもしれません。
ヒヤリ・ハットとKYは別々のものではありません。
一体のものです。
KYはあるあるネタの披露の場。
そのあるあるネタは、ヒヤリ・ハットから集める。
仕事をするならKYであっても楽しくしましょう。
いつもやるKYであっても、作業者の共感を得るんだと考えていくと、違う見方ができますよね。