厚生労働省労働局長登録教習機関
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工場や倉庫内で天井クレーンなどを使って運ぶことは少なくありません。
天井クレーンには様々な種類があります。中にはクレーンに乗り込んで、荷物を真下に見ながら吊り上げるものもあります。
しかしよくあるクレーンは床上操作式などではないかと思います。これは床の上で、リモコンを操作しながらクレーンを動かすものです。
一見すると簡単に見えるクレーン操作ですが、資格が必要です。5トン未満の荷物を吊るのであれば、特別教育が必要です。そして荷物を玉掛けするのにも特別教育や技能講習を修了する必要があるのです。
それだけ危険を伴う作業なのです。
東京の大田区でクレーン作業中の事故がありました。
今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
2トンの鉄板の下敷き、作業員の男性死亡 東京都大田区 (平成28年6月29日)
9日午後1時35分ごろ、東京都大田区大森南の作業所で、クレーンで運搬中の50枚の鉄板(重さ計約2トン)が落下、クレーンを操作していた会社員が下敷きとなった。病院に搬送されたが、腹部を強く圧迫されており、まもなく死亡が確認された。警視庁大森署によると、鉄板は1枚縦約2・5メートル、幅約1・2メートル。50枚を一度にクレーンで運搬している最中に高さ約1・9メートルの位置から落下した。同署が落下した原因を調べている。 |
この事故の型は「飛来・落下」で、起因物は「クレーン」です。
この事故は作業所内のクレーンで鉄板を1度に50枚運搬していた時に起こりました。
吊り荷重は約2トンということなので、1枚あたり約100キロといったことろでしょうか。
高さも2メートル足らずなので、それほど高くありません。
しかし1枚100キロの鉄板の下敷きになると体は耐えられないのです。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
事故の直接的な原因は、クレーン作業中に鉄板の下敷きになったことです。
おそらく床上でクレーンを操作しており、吊り荷の側にいたのだと思います。床上操作式クレーンは、リモコンのケーブルの範囲しか離れられないので、ある程度荷物の側にいます。
そのため荷が崩れ落ちた時、避けられなかったのだと思われます。
そして荷が崩れた原因ですが、玉掛けのバランスが悪かったのではないでしょうか。
50枚を一度に運ぼうとしていので、一部ずれていたりしたのかもしれません。
バランス確認のための地切り確認がされていなかった可能性も高そうです。
また一度の運搬枚数が適正だったのか、作業計画にも問題があったのかもしれません。
それでは、原因を推測をまとめてみます。
1 | 地切りでバランス確認していなかったこと。 |
2 | 作業計画が不適切だったこと。 |
3 | 吊り荷の作業範囲にいたこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
クレーンの玉掛けでは、地切りをしなければなりません。地切りでは3・3・3運動というものがあります。
3・3・3運動とは、「荷物を30センチ浮かせ、3メートル離れたところから、3秒間確認する」ことです。
このバランスの確認が、本格的な吊り上げの時に落下させないために大切なことです。
また作業方法、作業計画が適正かどうかのチェックが必要です。2トン程度の重さですので、重量としては問題なかったかもしれません。しかし枚数が多くなると、バランスを保つのが難しくなります。
作業時も指揮者や合図する人などの作業体制が大切です。
対策をまとめてみます。
1 | 玉掛けの地切りを行う。 |
2 | 作業計画や手順を見直す。 |
3 | 作業指揮者、合図者を定める。 |
工場内でクレーンを使うことは、日常的な作業です。
しかし本来は有資格者が行う危険作業であることは間違いありません。そのため十分に作業の方法などを確認することが必要なのです。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【クレーン等安全規則】
第28条 ケーブルクレーンを用いて作業を行なうときは、危険を生ずるおそれのある箇所に労働者を立ち入らせてはならない。 |
第29条 クレーンに係る作業を行う場合であって、荷の下に労働者を立ち入らせてはならない。 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。