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建物の解体作業では、取り壊されたコンクリートや鉄骨などは落ちてきたり、飛んできたりします。
さらに狭い場所で複数の重機が行き交っているので、その付近で作業している人は、よほど注意していなければなりません。
さもなければ、重機に挟まれたり、コンクリート片が当たったりします。
沖縄県の嘉手納基地での倉庫解体工事で、落ちてきた破片の下敷きになるという事故がありました。
今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
嘉手納基地内で作業員死亡 建物解体中に下敷き(平成28年7月8日)
8日午後1時15分ごろ、米軍嘉手納基地内の建物解体現場で、作業中にコンクリートのひさしが崩落する事故があり、作業員の男性が下敷きになった。沖縄署によると、男性は沖縄本島中部の病院に搬送されたが、同日午後2時18分に死亡が確認された。同署は司法解剖して死因を調べると共に、業務上過失致死も視野に事故原因を調べる方針。
同署によると、崩落したのは格納庫に隣接するコンクリート平屋のひさしの一部で、長さ約12メートル、幅約1メートル、厚さ約12センチという。 別の作業員が屋根の上でひさしを解体していたところ、地上でユンボの誘導をしていた男性がひさしの下敷きになったという。事故発生後に憲兵隊から110番通報があった。 |
この事故の型は「倒壊・崩壊」で、起因物は「構造物」です。
解体作業では、ショベルカーのアームの先端を振動する一本爪のコンクリートブレーカーやハサミの形をした圧搾機などのアタッチメントを取付けて使います。
その他、運転席は飛んで来る破片から保護される構造であることなどが求められます。
コンクリートの建物はこういった重機で取り壊していくのです。
解体作業自体は重機で行いますが、細かな破片の片付けや機械の誘導のため作業者も一緒に作業しています。
機械や破片が満ちた危険な場所といえます。
事故にあった作業者は、重機を誘導していました。
このとき、コンクリートのひさし(天井)が崩れ落ちたため、下敷きになったのでした。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
解体作業場では、天井や壁などにも亀裂が入り、安定しているものではありません。
いつ崩れたりするのか、予想がつかないこともあります。
しかしこの事故では解体作業をしていたひさしの下を、被災した作業者がいたようです。
このような上下作業は、危険極まりありません。
上下作業を許すような作業計画、作業手順に問題があったと思われます。
また作業者同士、もしかするとひさしの解体と重機を誘導していたのは別業者の可能性もありますが、作業場所の連絡調整ができていなかったことも問題でした。
さらに十分な安全教育などがされていなかったことも、危険を増大させてしまったといえます。
それでは、原因を推測をまとめてみます。
1 | 作業間の連絡調整ができていなかったこと。 |
2 | 作業計画が現場状況に合っていなかったこと。 |
3 | 全体作業を監督、指揮するものがいなかったこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
まず何より、ひさしを解体しているのに、その下を通行するなどの上下作業はしてはいけません。
そのためには、いつ、どこで、どんな作業をするのかを計画して、全ての業者や作業者に周知する必要があります。
作業者はその計画に従って作業しなければなりません。
業者間では、作業場所が重なる、近接する場合は、作業時間を変えるなどの調節が必要です。これは元請業者が中心になって調整します。
危険な作業では、このような連絡調整が重要です。
また、作業時、各業者はそれぞれの作業に集中し、周りが疎かになります。そのため元請業者などは、全体を監視し、必要に応じて指揮しなければならないのです。
対策をまとめてみます。
1 | 作業間の連絡調整を行う。 |
2 | 作業計画を他業者の動向を踏まえて作成する。 |
3 | 元請業者は全体の監視、指揮を行う |
比較的狭い場所で、複数の業者や重機が行き交う場合、それらを調整することが重要です。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【安衛法】
第16条 統括安全衛生責任者を選ぶ作業場では、関係請負人は 安全衛生責任者を選任しなくてはならない。 安全衛生責任者は統括安全衛生責任者の連絡調整を行う。 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。
【安衛則】
第636条 特定元方事業者は、元方事業者または関係請負人相互の連絡及び調整を行わなければならない。 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。