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建設工事の現場ではショベルカーを使用することが多いですが、現場に持ち込んだり、持ち出したりするとき、道路を自走させるわけにはいきません。
小型のものであれば、そのままトラックの荷台に積んで運びますが、大型のものであれば分解して、部品ごとにトレーラーなど乗せて運びます。
この時、アーム部分やアームの先端などを分解します。この先端部分は用途に合せてアタッチメントを変えることが出来るのですが、多くの場合は土を掘ったり、乗せたりするバケットが付けられています。
バケットなどの部品は大きく重いので、これらの組立解体で落下させたりすると、大きな事故になるのです。
大阪府門真市でショベルカーの解体作業中に、バケットが落下する事故があります。
今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
ショベルカーの部品落下 男性作業員にぶつかり死亡 (平成28年8月2日)
2日午後4時50分ごろ、大阪府門真市の工場の解体現場で、積み込み作業中にショベルカーの部品が落下し、近くにいた作業員の男性にぶつかった。男性は腰などを強く打ち、病院に搬送されたが死亡が確認された。大阪府警門真署は、死亡したのは大阪市西成区に住む男性(54)とみて身元の確認を急ぐとともに、詳しい事故原因を調べている。
同署によると、落下したのはショベルカーのアーム先端に取り付ける「バケット」と呼ばれる部品で、重さ約450キロ。別のショベルカーがチェーンを使って持ち上げ、トラックの荷台に載せようとしたところ、何らかの原因でチェーンが外れ、高さ約1・2メートルから落下した。地面に落下した後、弾んで男性にぶつかったとみられる。 |
この事故の型は「飛来・落下」で、起因物は「重機部品」です。
この事故は、ショベルカーを解体し、バケットを別のショベルカーで吊り上げ、トラックに載せようとした時に落下しました。
原因はチェーンが外れてしまったことのようです。
落下したバケットは、落下後跳ね、近くの作業者に当たってしまいました。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
解体したショベルカーとは別のショベルカーで、バケットを玉掛けし、吊り上げたところ、落下しました。
玉掛けが不適切だったことが問題でした。
さらに玉掛け者が吊り荷の近くにいたため、吊り荷が落下したとき、逃げられませんでした。
またショベルカーを使ったクレーン作業が適切に行われていなかったことも問題でした。
ショベルカーの解体作業などで、作業を指揮する、取り仕切る人がいなかったことも問題であったようです。
それでは、原因を推測をまとめてみます。
1 | 解体作業の指揮者がいなかったこと。 |
2 | 玉掛けが適切でなく、退避ができていなかったこと。 |
3 | ショベルカーのクレーン作業が適切でなかったこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
ショベルカーの組立解体作業を行う場合は、作業指揮者が作業を取り仕切らなければなりません。
さらにショベルカーでのクレーン作業を行うには、合図者などの配置が必要です。こういった作業は、ショベルカーの用途外の作業になるため、様々な注意が必要になるのです。
また玉掛けでは、落下しないようにワイヤーを掛けなければなりません。
そして吊り上げる前には、地切りをして、バランスを確認します。
地切りを確認しないまま吊り上げると、バランスを崩れたままに吊り上げることになります。
吊り上げ作業の際には、玉掛け者や補助作業者を退避させます。退避は少なくとも2メートル以上は離れておく必要があります。
対策をまとめてみます。
1 | 吊り上げ前には必ず地切りを行う。 |
2 | 玉掛け者などは、退避させる。 |
3 | 解体作業時は、作業指揮者を配置する。 |
ショベルカーの組立解体作業を行う時は、作業指揮系統が決めなければなりません。
そして玉掛けを行う場合は、地切りを行いバランスを確認します。
パランスが崩れたまま吊り上げてしまうと、荷の落下やワイヤーが外れたりしてしまいます。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【クレーン則】
第74条 事業者は、移動式クレーン労働者に 危険が生ずるおそれのある箇所に労働者を立ち入らせてはならない。 |
第74条の2 事業者は、移動式クレーンの作業中に、特定の吊り方をしている荷の下に、労働者を立ち入らせてはならない。 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。