厚生労働省労働局長登録教習機関
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石綿の除去作業では、作業者が吸引することで健康被害を防ぐことが重要です。
そのためには、事前の準備が大切になります。
これらの準備には、まず調査や作業計画などが必要になるのです。
調査の内容や作業計画に盛り込む内容などは、石綿則に規定されています。
2023年7月21日追記
事前調査については、2021(令和2)年7月の法改正により、石綿含有建材調査者による調査が義務付けられることになりました。これは2023(令和5)年10月1日から施行されます。
これは本コラムの第3条の改正となりますので、変更箇所も含めて解説します。
【石綿則】
令和2年7月の法改正により、大幅に変更があったのが、第3条です。
建築物や工作物、船舶などを解体、改修を行う時には、工事着工前に石綿の有無を調査しなければなりません。
これは解体や改修作業を行う作業員が、石綿ばく露しないために欠かせません。
従来は、調査を行う人については特に限定していませんでした。
ただし、アスベスト調査診断協会に登録した人など調査を専門的にしているところはありました。
今回の法改正では、建築物石綿含有建材調査者という資格を設け、有資格者に調査させなければならないと定めました。
2023(令和5)年10月1日からは、建築物石綿含有建材調査者による調査が義務づけられます。
石綿含有建材調査者になる方法としては、一般(または戸建)建築物石綿含有建材調査者講習を受け、修了試験に合格するなどがあります。
調査の方法は2つの方法によります。
1 書面調査
竣工図書、設計図書、改修時の資料などから石綿の有無を調べる
2 目視調査
書面調査実施後、実際に現地に行き、石綿含有の有無を確認する。
調査報告書には、全ての建材について石綿の有無を判定しなければなりません。
書面や目視では分からない場合は、サンプルを採取し、分析調査を行い判別しなければなりません。
石綿含有の有無の判断は、必ず根拠を示さなければなりません。分析調査は確実な確認方法ですが、その他の根拠としては、建材等の製造または使用時期、経済産業省のDBから調べるなどがあります。
また判断の方法として、「みなす」という方法もあります。「みなす」とは、判断に迷う建材について分析調査をせずに、石綿が含有しているものとするというものです。この場合は、実際には無含有であっても、石綿含有物として取り扱わなければなりません。
ただし安易に「みなす」と、処分費が高くなります。そのため、調査者は慎重に「みなす」判断をしなければなりません。
石綿の使用禁止となったのは2005年9月1日からです。
事前調査では、2005年9月1日より前に着工した物件に関しては、必ず書面調査と目視調査をしなければなりません。
言い方を変えると、2005年9月1日以後の物件については、書面調査で全ての建材の判別ができるのであれば、目視調査を省略することができます。
調査を行ったら記録を残します。この記録は、次条(第4条の2)の報告で使用されます。
報告は、解体や工事を請け負った元請業者が行うので、調査から報告まで時間差が生じることもあります。
調査記録は次の内容となります。
1.調査を行った事業者情報
2.解体・改修を行う物件情報
3.調査終了日
4.調査の着工日等
5.事前調査を行った建築物、工作物又は船舶の構造
6.事前調査を行った部分(分析調査した場合は、該当箇所)
7.事前調査の方法(分析調査をした場合は、分析方法)
8.材料ごとの石綿等の使用の有無とその判断根拠
9.その他事項(目視調査ができなかった場所など)
記録は3年間保存しなければなりません。
解体工事を請け負った元請けは、調査報告書を労働基準監督署に提出します。提出はオンラインで行います。
なお、調査は必ずしも解体工事を請け負った事業者が調査するのではなく、記録保存された調査結果があれば、それを使用することもできます。
調査は全ての建材について行わなければなりません。しかし稼働中のエレベーターシャフト内や有毒ガスが発生している危険な場所での調査はできません。
このような場所は、調査が可能になってから調査します。
石綿含有建材調査講習については、こちらのコラムも参照にしてください。
建築物石綿含有建材調査者講習 2023年10月から義務化の前に取得しましょう
石綿が含まれる建物などの解体や石綿の封じ込め、囲いの作業で調査を行ったら、その結果を反映させます。反映先は作業計画書です。
石綿を取り扱う作業では、作業計画を作成して、計画に従い作業しなければなりません。
この作業計画書は、労働基準監督署などに提出する必要はありません。
作業計画書には、次の内容を含まなければなりません。
1.作業の方法及び順序
2.石綿等の粉じんの発散防止、抑制する方法
3.作業者へのばく露を防止する方法
これらの内容を含んだ作業計画書は、作業者にしっかりと知らせ、計画通りに事を進めいかなければなりません。
なおすでに解体などに関わる作業手順書をすでに作成している場合、それが上記の項目を含む場合は、別途で作成する必要ありません。
また作業途中で、新たに石綿が発見された場合などは、その都度、計画書を見直し、作業者への周知が必要になります。
解体等の作業の実施に当たっては、作業環境中の石綿の濃度の測定及び評価に基づく作業環境管理を行うことが望ましいとされています。
法改正により石綿含有建材調査者による調査の義務づけに伴い、追加された条文です。
2023(令和5)年10月1日施行となります。
建築物の解体・改修工事を行う場合、その請負業者(元請け)は、工事を行う地域の所轄労働基準監督長に事前調査結果を報告しなければなりません。
報告についての条文です。
報告は、電子情報処理組織を通してとありますが、要するにWEB提出という意味です。
報告はこちらから行います。
石綿事前調査結果報告システム
報告には事前に、GビズID登録が必要になります。
報告が義務づけられている対象工事は、第1項にまとめられています。
1.建築物の解体工事で、当該工事に係る部分の床面積の合計が80平方メートル以上であるもの
2.建築物の改修工事で、当該工事の請負代金の額が100万円以上であるもの
3.工作物の解体工事又は改修工事で、当該工事の請負代金の額が100万円以上であるもの
4.船舶(総トン数20トン以上)の解体工事又は改修工事
解体と改修では、対象となる規模や請負金などが異なりますので、ご注意ください。
特に2の建築物の改修工事については、リフォームも含みます。お風呂などの水回りをリフォームすると100万を超えることも珍しくありませんよね。そして古いユニットバスなどには石綿が含まれていることもあります。
つまり事前調査は解体や大規模改修だけではありませんので、ご注意ください。
3の工作物については、2023(令和5)年10月1日から義務づけられる建築物の事前調査とは別物です。
建築物石綿含有建材調査者とは別に工作物石綿含有建材調査者の資格が必要となります。
まだ工作物石綿含有建材調査者資格については、現時点ではまだ詳細が不明な点も多いため、改めてお伝えします。
なお厚生労働大臣が定めるものとありますが、次のようになっています。
令和2年厚生労働省告示第278号
1. 反応槽
2. 加熱炉
3. ボイラー及び圧力容器
4. 配管設備(建築物に設ける給水設備、排水設備、換気設備、暖房設備、冷房設備、排煙設備等の建築設備を除く。)
5. 焼却設備カ煙突(建築物に設ける排煙設備等の建築設備を除く。)
6. 貯蔵設備(穀物を貯蔵するための設備を除く。)
7. 発電設備(太陽光発電設備及び風力発電設備を除く。)
8. 変電設備
9. 配電設備
10. 送電設備(ケーブルを含む。)
11. トンネルの天井板
12. プラットホームの上家
13. 遮音壁
14. 軽量盛土保護パネル
15. 鉄道の駅の地下式構造部分の壁及び天井板
報告システムを通しての報告は、所轄労働基準監督長とともに大気汚染防止法に伴い環境省への届出も必要になります。
事前調査報告内容は次のとおりです。
こちらの画面も参照にしてください。
システム画面イメージ
◯工事に関する情報
1. 元方(元請)事業者情報
2. 工事発注者情報
3. 工事現場情報
4. 建築物の概要
5. 元方(元請)事業者の調査、分析をした者に関する情報
◯請負事業者に関する情報
1. 工事を請け負っている事業者(実際に石綿取扱作業を行う事業者)
◯事前調査の結果及び予定する石綿の除去に係る措置の内容
1. 材料種類ごとの石綿含有の有無と措置
材料ごとに次の項目を記入
・含有有無
・含有なし判断根拠
・切断の有無
・作業時の措置
これらの項目を記入して、申請をします。
その後内容のチェックの上、申請受理という形になります。
システムを通しての提出をすれば、別途所轄労働基準監督に届出をする必要はありません。
大規模建築物の解体や改修工事の場合、2社以上の発注されることもありますが、建物全体について届出は1つで問題ないので、いずれかの元請けが届出をすれば問題ありません。
石綿の除去作業を行うにあたっては、届出が必要になります。
様式は以前は、1号でしたが、現在は1号の2となっています。1号は事前調査結果の報告書です。
石綿障害予防規則関連の様式については、こちらを確認してください。
石綿障害予防規則関係様式
石綿を取り扱う作業では、作業場所の図面などを添えた届出を、所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。これは事前調査結果とは異なり、WEBからの提出でありません。
届出は、以前はレベル1の吹付け石綿のみでしたが、法改正により現在はレベル2の保温材、耐火被覆材なども対象となっていますので、注意してください。
事前調査の結果、建物などに天井や柱、壁などに吹き付け材、または保温材、耐火被覆材などとして石綿が使われていた場合は、作業者がばく露しない方法での除去方法を検討し、記入します。
記入する項目は次のとおりです。
1. 事業場の名称、住所
2. 仕事の範囲
3. 解体する部材の種類
4. 発注者名
5. 請負金額
6. 仕事の開始予定年月日
7. 仕事の終了予定年月日
8. 主たる事務所の所在地
9. 使用予定労働者数
10. 関係請負人の予定数
11. 関係請負人の使用する労働者の予定数の合計
12. 作業主任者の氏名
13. 石綿ばく露防止のための措置の概要
また除去だけでなく、建物の維持管理で行われる、石綿の囲い込み、封じ込め作業を行う場合、届出が必要になります。
囲い込みとは、吹付け石綿をボードなどで覆い、外部への飛散を防ぐものです。
封じ込めとは、吹付け石綿に飛散防止の薬剤を浸透させ、飛散しないように固定化してしまうものです。
いずれも建物の利用者がばく露しないための、飛散防止措置となります。
これらの作業を行う時も、作業者は石綿ばく露のおそれがあるため、届出が必要になります。
まとめ。
【石綿則】
第3条 石綿に関する作業は、 あらかじめ、石綿含有建材調査者に石綿等の有無を書面及びj目視による調査を実施し、その結果を記録しておかなければならない。 |
第4条 石綿に関する作業は、作業計画を定め、作業計画により作業を行わなければならない。 |
第4条の2 事前調査結果は、電子情報処理組織を通して、所轄労働基準監督長に提出しなければならない。 |
第5条 石綿に関する作業では、あらかじめ届出を労働基準監督署長に提出しなければならない。 |