○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

牛黒、有機溶剤にクラっと来る

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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第112話「牛黒、有機溶剤にクラっと来る」

猫井川は牛黒の補修作業の手伝いを引き続き行っていました。

2人は黙々と作業を進めていきました。
猫井川がモルタルを練ったりなどの雑務を行い、牛黒が高所作業車などを使用して、左官をしていました。
牛黒は若い頃はは左官職人だったこともあり、その仕上がりは凸凹もなく、きれいなものでした。

シャッシャッと、壁をコテが滑る音だけが響くことしばらく、牛黒が手を止めました。
そして高所作業車を下ろしました。

床の上に立つと、少し壁から離れ、じっと眺めます。

「どうだ?」

牛黒は隣の猫井川に聞きました。

「いいんじゃないですか。」

「だな。いい感じに仕上がったな。
 これで乾かしてから、塗装だな。」

「そうですね。
 でも、モルタル作り過ぎちゃいましたよ。」

「何でだよ!?」

「いや、牛黒さんが作れ作れといってたじゃないですか。」

「そうか。仕方ないから、床とかの穴を埋めるのに使うか。」

「そうですけど、それでも余りそうな。」

「まあ、サービスして盛って何とかしよう。」

壁の仕上がりに満足していたのも束の間、今度は余ったモルタルの処理に右往左往するのでした。

モルタルの処理も一段落し、しばらく休憩した後、牛黒は

「次は色塗りだな。
 最初にモルタルしたところは、乾いているから、そこからやっていこう。
 今度はお前も塗っていってくれ。」

「でも俺の塗りだったら、汚くなるかもしれませんよ。」

「大丈夫だ、汚いところは手直しするからさ。」

こうして次は壁を塗装することになりました。

車から白の塗料缶と筆などを下ろし、準備に入りました。

さて、作業開始かと思っていたところに、猫井川に電話がかかっていました。

「もしもし、はい。」

猫井川が電話で話しています。

「えっ、今からですか?
 聞いてみます。」

猫井川は、電話から耳を離すと、牛黒に、

「犬尾沢さんが、今から現場にモルタルと撹拌機を持ってきてほしいものがあるそうなんですけど。
 行っても大丈夫ですか?」

「おう、いいぞ。行ってこい。」

「ではちょっと行ってきます。」

猫井川はトラックに撹拌機と現場にあったモルタルを積み、出かけてきいました。
さらに会社の倉庫に向かいプラスで数袋のモルタルを積み込みました。

そして犬尾沢の現場に向かいました。

現場に到着すると、

「すまなかったな。」

犬尾沢が軽く手を上げ、言いました。

「向こうでも、ちょうど使わなくなったんで、大丈夫です。」

「牛黒さんは今何やってるの?」

「塗装ですね。電話あった時、始めようかなと思ってました。」

「じゃあ、戻ってやってくれ。
 あ、塗装するなら送風機準備したほうがいいんじゃないか。」

「そうですね。いったん倉庫に戻って、送風機拾って行きます。」

「おう、ありがとうな。」

猫井川は犬尾沢のもとから離れると、倉庫に行き、送風機とホースをトラックに積み込みました。

最初の現場に戻ってくると、牛黒の姿は見えませんでした。
どうやら建物の奥まった部屋から塗装を始めているようでした。

猫井川が車から降り、送風機を屋内に運び込みました。
牛黒が作業している部屋に入ると、そこはきついシンナー臭が漂っていました。

牛黒はマスクを着けていましたが、それは防毒マスクではなく、防じんマスクのようでした。

「牛黒さん、ここかなり臭いですよ。」

牛黒はゆっくり振り返ると。

「そうか。」

と答えたのですが、振り返った勢いで足がくらっとしたのでした。

「一回、外に出て換気しましょう。」

猫井川は無理やり牛黒の手から筆と溶剤を取り上げ、屋外に連れ出しました。

「ちょっとここで休んでいてください。
 俺は送風機で換気しますから。」

猫井川は送風機を屋内に運び込み、有機溶剤が漂う空気を吐き出していくのでした。

牛黒はぼんやり座っていましたが、しばらくすると元気を取り戻しました。

「ダメですよ。換気しないで塗装してたら。」

「ああ、少し塗るだけなら、すぐに終わるかなと思ってな。」

「犬尾沢さんが、送風機持っていけと言ってくれてよかった。」

猫井川は、犬尾沢に感謝するのでした。

2人は送風機に繋がったホースから、どんどん空気が排出される様子を見ながら、室内が換気されるのを待つのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回は塗装作業でのヒヤリハットですね。
塗装では、有機溶剤の塗料が使われます。有機溶剤には様々な種類があります。そして吸込み続けると体に影響が出てきます。

身近な有機溶剤というと、シンナーがあります。シンナーを吸い続けるとどうなるか、何となくイメージがつきますよね。
頭がクラクラしたり、吐き気がしたりします。

これは中毒症状です。
さらに吸込み続けると、健康を害してしまいます。

空気の流れがない、屋内で塗装すると有機溶剤がこもってしまいます。
そのため屋内での塗装は、送風機や排風機などで換気することが何よりも重要です。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 屋内で塗装していたら、クラっとした。
対策 1.送風機などで換気する。
2.防毒マスクを使う。

室内での有機溶剤使用による軽度の中毒は少なくありません。
作業中だけでなく、室内に塗料を保管する際にも、揮発を防ぐようにしなければなりません。

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