○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

鼠川、凍てる水たまりに尻とらる

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第120話「鼠川、凍てる水たまりに尻とらる」
冬になり、朝晩はめっきり冷え込むことが多くなってきました。

鼠川は年を取ってきたせいか、朝の暗い内に目が覚めます。
二度寝することもできないので、しばし布団の暖かさを味わい、気合を一つ入れて布団から出るのでした。

妻のラータはまだ眠っています。
鼠川が準備が終わる頃までは、寝ているのが常でした。

鼠川が顔を洗い、身支度を整えていると、ラータは起き出し、朝食の準備をするのでした。

「今朝も冷え込むね。」

ここ最近は、起きるとこんな言葉を交わすのが、習慣になりつつあるのでした。

「今日も現場行くの?」

妻の問いに、鼠川は、

「ああ、前に猫井川が受けてた仕事が再開したからな。
 あいつの監視のためにも、ワシが行かないとな。」

「そう。外に行くなら、温かくして行ってよ。」

「わかっている。流石にそこまで若くないからな。」

こんな会話をして、まだ暗い中、鼠川は家を出るのでした。

会社に到着すると、すでに猫井川が準備を始めていました。

野虎との打合せで、今日から現場が再開です。
建物のコンクリート工は終わり、今後は内装がメインになるので、猫井川たちは外構工事に入ることができるようになったのです。

まずは、U字溝による水路作りからになります。
猫井川、保楠田、鼠川が作業に乗り出したのでした。

猫井川がダンプに荷物を積み終えると、3人は現場に向かったのでした。
現場に到着すると、そこは以前見た光景とは大きく変わっていました。

猫井川は少し前に打ち合わせに来た時に、確認していましたが、やはり驚きを感じます。

「建物も建ったな。」

鼠川が言いました。
保楠田も同意し、建物を見つめるのでした。

しかし山裾の現場です。
あちこち霜が降り、水たまりなどは氷が張っているのでした。

街中に比べ寒さは一塩で、3人は防寒具のギュッと掴むのでした。

朝礼が終わり、作業の準備に取り掛かりました。
重機が届くのは午後です。

それまでは丁張りなどをしていくことになったのでした。

保楠田が重機の受け入れ準備を進めていく一方、猫井川と鼠川が丁張りを行うことになります。

丁張りは猫井川がトランシットを覗き、鼠川がスタッフを持つ役割をするのでした。

U字溝を設置する場所を測定し、ポイントを出していくのでした。

猫井川の指示で、鼠川があちこち移動していきます。
日の当たる場所はともかく、日陰はとても寒く、体が凍えそうになっていました。

鼠川が日陰のポイントに移動したときでした。
足元に水たまりがあり、氷が張っています。

鼠川が氷の上に足を乗せた時、ツルッと滑ってしまいました。
ズテーンと大きな音を立て、尻もちをつきました。

「大丈夫ですか?」

猫井川が慌てて駆け寄りました。

「いてててて」

と腰をさすりながら、ゆっくりと立ち上がろうとする鼠川でしたが、顔をしかめています。

「立てますか?」

手を差し伸べるものの、痛みに呻いています。
しばらくすると、猫井川の手を掴み、ゆっくりと立ち上がります。

「大丈夫ですか?」

猫井川が再び聞きます。

「ああ、尻を打ったが大丈夫だ。」

「少し休みます?」

「ああ、少し座るよ。」

そう言う鼠川を、猫井川は車までゆっくり連れていきました。

車の座席にどっかり座った鼠川は、目をつむっています。

「どうします?病院行きます?」

猫井川が聞きます。

「いや、打っただけだから、しばらく休めば大丈夫。」

鼠川が言います。
そこに保楠田も来ました。

「どうしたの?」

「鼠川さんが滑って、尻もちをついたんですよ。」

猫井川が答えます。

そして2人が心配そうに見ていると、鼠川は、

「ワシはしばらく休んでるから、2人で丁張りしてこい。」

と言いました。

保楠田も、猫井川も不安ではありましたが、仕事に戻ることにしたのでした。

「何かあったら呼んでください。」

そう言い残して、丁張りをやっていくのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回は転倒のヒヤリハットですね。
鼠川がしこたま尻を打ち付けてしまったのでした。

鼠川は高齢者ですが、高齢者の転倒事故は非常に多いのです。
場合によっては命を落とすこともあるので深刻な被害といえます。

少し心配な状態ですが、大丈夫でしょうか。

転倒事故、特に氷などで滑っての転倒は、冬期に増加します。

朝晩の凍った道路や水たまりなどは、滑るポイントになるのです。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 水たまりの氷で、足を滑らせ転倒した。
対策 1.氷の上は歩かない。
2.滑り止めの靴を履く。

高齢者の転倒は深刻な被害が出ることがあります。
凍結の多い冬は安全教育などでも、転倒の注意喚起をしましょう。

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