厚生労働省労働局長登録教習機関
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解体工事は、建物や構造物を取り壊す過程で多くのリスクが伴います。作業中の転落や構造物の倒壊、重機との激突といった事故が起こりやすいため、これらの危険を理解し、適切な対策を講じることが重要です。
本記事では、実際に起きた事故事例を挙げつつ、これらの事故を未然に防ぐための具体的な安全対策を詳しく解説します。
解体工事における事故は、その状況や環境により様々です。RC造ビル解体中、木造倉庫の解体作業中などには、建物の予期せぬ崩壊により致命的な事故が起こり得ます。崩壊倒壊だけでなく、一酸化炭素中毒事故も報告されており、作業環境への留意も必要です。
これらの事故を詳しく解析し、同様の事故を未然に防ぐための対策を探ることが重要です。
RC造ビルの解体工事の事例としての一例をあげます。ビルの4階でコンクリート壁の解体作業が行われていた際、壁が内側に倒壊し、作業中の作業員が下敷きとなり死亡しました。この事故の背景には、適切な安全措置の欠如や作業手順の不備があり、特に作業指示が適切に守られなかったことが指摘されています。このような状況を防ぐためには、解体計画の徹底した作成と教育、作業手順の厳格な遵守が求められます。
【参照元】厚生労働省HP:労働災害事例(RC造ビル4階のコンクリート壁の解体作業中、作業者が倒壊した壁の下敷きとなる)
木造倉庫の解体工事の具体的な事例として、木造倉庫の解体中に梁が落下し、作業者が転倒して死亡するという事故が発生しています。この事故は、解体作業の安全計画が不十分であったこと、現場責任者の不在、そして作業者に対する十分な安全教育が行われていなかったことが原因であると考えられます。重量物の取り扱いには特に慎重な計画と手順の定義が必要であり、作業前の十分な準備と作業者の安全教育が重要です。
【参照元】厚生労働省HP:労働災害事例(木造倉庫の解体作業中、梁が落下して作業者が転倒し死亡)
解体工事現場では、一酸化炭素中毒の危険もあります。一例として、建物の天井部分の剥がし作業中に一酸化炭素中毒が発生する事故が報告されています。この事故は、RC造の4階建て建物の解体作業中に発生しました。被災者二名は、ガソリン式高圧洗浄機を使用して断熱材を剥がしていた際、機械が隣接する廊下に設置されていたため、その排気ガスが作業場所に流れ込み、一酸化炭素中毒を引き起こしました。この事故の原因は、換気が不十分な環境での内燃機械の使用と、作業者の危険性に対する認識不足にありました。安全教育の欠如も大きな要因です。このような事故を防ぐためには、適切な換気設備の確保、一酸化炭素検知器の使用、そして作業者への周知と教育が必要です。
【参照元】厚生労働省HP:労働災害事例(建物の解体現場にて天井部分の剥がし作業中、一酸化炭素中毒となる)
最近、解体工事の現場においても事故が発生しています。この事故は茨城県稲敷市にある施設での建物解体中に起こりました。20代から30代のベトナム国籍の男性作業員が、クレーンで吊り上げていた際に、折れた鉄筋コンクリート製のくいにぶつかるという不慮の事故が発生しました。この衝撃で作業員は致命的なダメージを受け、現場で死亡が確認されました。この事例からも、解体工事における安全管理の徹底がいかに重要かが改めて示されています。
解体工事の現場で発生しやすい事故としては次のようなものがあります。高所からの転落や墜落、足場や建物の一部が崩れる事故、立壁や重機との衝突、外壁の倒壊などが代表的です。これらの事故は、作業員の不注意、過労、適切な安全対策の欠如、天候条件など多岐にわたる要因により引き起こされています。解体工事における事故を防ぐためには、リスク管理の徹底と作業員の安全教育が不可欠です。
解体工事現場では、高所からの転落・墜落事故が一般的なリスクとして頻繁に発生しています。この種の事故は高層ビルだけでなく、2階建ての住宅や工場のスレート屋根など、さまざまな場所で見られます。作業員の不注意や過労が主な原因であり、特に足場の不安定さや、踏み抜きやすい素材の上での作業が危険を増しています。このため、安全な作業環境の確保と、作業員への十分な休息と指導が事故防止には欠かせません。
解体工事での大きなリスクは、足場や建物の一部が崩壊する事故が挙げられます。特に高い建物の解体作業中、足場は主に粉じんや騒音を防ぐ囲いや目隠しとしての役割があります。騒音シートが張られているため、強風などの自然条件が足場の倒壊を引き起こすことがあります。構造計算などで強度を確認するとともに、日常点検も欠かすことはできません。また構造物の倒壊に引きずれられて倒れることがないように作業方法も注意が必要です。
解体工事中に立壁や重機との衝突事故が発生するリスクがあります。これらの事故は、重機の操作ミスや、現場の視界不良が主な原因です。特に、重機の運転中に粉じんが飛散することで、運転者の視界が遮られることがあります。そのため、重機の近くで粉じんを抑制するための散水が行われることが一般的です。また、重機に近づく際は、グーパー運動などの合図を事前に合図を送るなどして、安全距離を保つことが重要です。これにより、突然の立壁の倒壊や重機による接触事故のリスクを減らすことができます。
解体工事中に発生する一般的なリスクの一つに、外壁の倒壊があります。この種の事故は、外壁が不安定になり、作業中に倒壊し作業員を下敷きにする形で発生します。ワイヤーで固定しても、強風により予期せぬ倒壊が起こることがあります。また、重機が壁の一部や柱に引っかかり、これを誤って引き倒す事例も報告されています。これを防ぐためには、解体前の丁寧な計画立案と、壁や柱の安定性を確保するための措置が必要です。また、作業時の状況に応じた適切な安全対策を講じることが極めて重要です。
解体工事における事故防止のための安全対策は、事故発生リスクを最小限に抑えることを目的としています。重要な措置には、安全な足場の設置、作業区域の厳格な管理、5S運動の実施、適切な保護具の使用が含まれます。これらの措置により、作業員の安全を確保し、周囲への粉塵飛散や他の安全リスクを防ぎます。また、粉じんや振動に対する周辺住民への配慮も必須で、事故発生時の迅速な対応と事前の計画立案が重要です。
解体工事における安全な足場は、解体作業中の作業床として使用するだけでなく、作業中に発生する粉塵の飛散やその他の可能な障害から周囲を守ります。また、周辺地域とのトラブルを防ぐためにも、足場の安定性と強度を確保し、定期的な検査を行うことが重要です。これにより、全体の作業安全性が向上します。
解体工事現場では、作業区域の厳格な管理が事故防止に不可欠です。この管理には、工事関係者以外の立入禁止は徹底されなければなりません。現場周辺には適切なバリケードや注意表示だけでなく、警備員の配置も必要です。また、工具の落下や粉じんの飛散を防ぐために、養生シートやパネルを適切に使用します。特に粉じん対策は作業者だけでなく、周辺住民への配慮のために重要です。がれきを解体する際の散水は欠かすことができません。これらの措置は、作業員の安全を確保するだけでなく、周囲の環境や公衆の安全を保護する効果もあります。
解体工事現場での5S運動の実施は、作業環境の安全性と効率を大幅に向上させます。5S—整理、整頓、清掃、清潔、躾—は、廃材を適切に分類し、不要な物を排除することから始まります。作業場の整頓を徹底することで、必要な材料や工具が迅速に見つかり、作業効率が向上します。これらの活動は、事故のリスクを減らし、全体的な作業安全性を確保するのに重要です。
解体工事において、適切な保護具の使用は作業員の安全を確保するために不可欠です。特に、粉じんの多い環境では、高性能の防じんマスクを着用することが重要です。近年は夏場は熱中症対策として、空調ファンが付いた空調服などが着用されます。しかしファン付き作業服を使用する場合は粉じんの吸引リスクに注意が必要です。冷却材を用いたベストなどもあるため、空調服以外の方法での熱中症対策の検討も必要です。また、高所での作業には墜落制止用器具が必要であり、耳栓や保護眼鏡(ゴーグル)も、それぞれ騒音と飛散物から作業員を守るために使用されます。
解体工事においては、周辺住民への配慮が必要不可欠です。粉じんや振動の管理を徹底することで、地域コミュニティとの良好な関係を維持することができます。具体的には、作業エリアに粉じん防止シートを設置し、作業場所の湿潤化を行うことで粉じんの飛散を抑えます。また、定期的に粉じん測定と振動測定を行い、環境への影響を科学的に把握し、必要に応じて対策を講じます。さらに、周辺住民への積極的なコミュニケーションも重要で、あいさつ回りや工事の進捗状況の説明、クレームに対する迅速な対応が求められます。これらの取り組みにより、地域との信頼関係を築き、トラブルを未然に防ぎます。
解体工事前に石綿(アスベスト)の事前調査を行うことは法的に義務付けられています。石綿はかつて建材に広く使用されていたため、解体対象の建物に含まれている可能性があります。この調査は、作業者の健康リスクから守るために不可欠です。2023(令和5)年10月1日からは、石綿含有建材調査者による調査が義務づけられています。その調査の結果に基づいて、現場では石綿作業主任者の選任など必要な安全措置を講じることが必要です。
建築基準法における石綿規制は、建築物における石綿の使用を制限し、健康被害の予防を目的としています。法改正により、増改築時の石綿除去が義務付けられ、石綿が飛散する可能性がある場合にはその対応が求められます。また、建築物の解体や修繕作業においても、石綿の封じ込めや囲い込み措置が規定されています。
労働安全衛生法に基づく石綿障害予防規則は、解体や改修などの作業場に適用されます。この法律は、作業中の石綿ばく露から労働者を守ることを目的としています。事前の作業計画の届け出、作業主任者、換気設備、湿潤化など具体的な安全対策を定めています。石綿障害予防規則の第3条と第4条には、石綿を含む可能性のある建築物の解体前に行うべき調査が義務付けられており、一定規模以上の場合、その結果を労働基準監督署に報告する必要があります。この規則は、作業者の安全を確保し、石綿による健康被害を未然に防ぐための厳格な手順と措置を提供します。
大気汚染防止法第9条 (有害物質の放出の制限) 有害物質=特定粉じん(石綿含む)
特定粉じん排出等作業に該当する場合には、大気汚染防止法施行規則第 16 条の4. に基づいて、必要事項を表示した掲示板の設置が必要
(参考:日本建設業連合会HP)
大気汚染防止法は、解体工事での粉塵発生による大気汚染、周辺住民への健康被害を防止するため、厳格に規制しています。特に、有害物質である特定粉じん(石綿を含む)の放出は、この法律の第9条により制限されており、関連する作業が行われる場合はさらに具体的な措置が求められます。大気汚染防止法施行規則第16条の4に従い、解体工事現場では特定粉じんが発生する可能性のある作業について、事前に掲示板を設置し、必要事項を表示することが義務付けられています。この措置により、作業者や周辺環境への健康リスクを軽減し、公衆の健康保護に寄与しています。
安全教育センターは企業の安全衛生管理を支援する重要な役割を果たしています。特に解体工事現場での安全性を高めるために、多くのパトロールを行い、現場管理に対する直接的な指導を提供しています。石綿については、石綿作業主任者技能講習を実施しています。また建築物石綿含有建材調査者講習も実施しています。作業者向けには、石綿作業従事者特別教育も実施しています。これらの講習については、お問い合わせいただければと思います。