厚生労働省労働局長登録教習機関
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建設業における熱中症対策は非常に重要です。毎年、厚生労働省では「STOP熱中症クールワークキャンペーン」などを実施し、熱中症対策の重要性について周知させています。
しかし、熱中症対策とは言っても具体的に何をすれば良いのかわからない」という方もいるのではないでしょうか。
そこで、この記事では建設業における熱中症対策のポイントについて解説します。現場で作業をしている方が知っておきたい内容となってますので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
まずは熱中症とはそもそもどのようなものなのかについて確認しておきましょう。
熱中症は症状により、Ⅰ~Ⅲ度に分けられます。Ⅰ度が軽症で、Ⅱ度が中等症、Ⅲ度が重症です。
Ⅰ度
【熱失神】暑さにより皮膚血流が増加するなどして脳への血流が一時的に下がる。症状として、めまい、立ちくらみ、生あくびなど。
【熱けいれん】汗を大量にかいた際、水分だけ補給し、塩分を補給しない場合に、塩分(ナトリウム)不足によって発症する。手足のつり、こむら返り、筋肉痛など。
Ⅱ度
【熱疲労】脱水が進行して、全身のだるさや集中力が低下した状態。頭痛、吐き気、嘔吐など。
Ⅲ度
【熱射病】体が高温になり、脳神経まで影響を与えている状態。意識障害・混濁、全身のけいれん、高体温など。
なお、労働安全衛生法や労働基準法では、事業者が労働者の健康を守るために必要な措置を講じることが義務付けられているため、現場の状況に目を向けながら対策を進めていくことが重要です。
熱中症の発生原因は、主に高温多湿な環境下での長時間の作業や十分な水分摂取の不足にあります。
建設現場では、直射日光や作業機械からの熱、高温の地面などが労働者の体温を上昇させ、熱中症を引き起こす要因となります。また、作業中の過度の運動や適切な休憩の取れない状況もリスクを高める要因です。労働安全衛生法では、事業者は労働者の健康を守るために必要な措置を講じることが求められており、熱中症対策もその一環と言えるでしょう。
労働者の安全を確保するためには、環境や作業条件の見直しと適切な対策が不可欠です。
建設業は熱中症による災害が決して少なくありません。
実際に国土交通省の「建設現場における熱中症対策事例集」の「熱中症の発生状況」のデータを見ても、毎年熱中症による被害者が出ています。その他の過去のデータを見ても、建設業では年間100人近くの方が熱中症で死傷しており、いかに建設業が過酷な労働環境なのかを理解することが重要です。
ここからは建設現場で熱中症の発生リスクが高い理由についても解説するため、併せてご覧ください。
建設現場で熱中症の発生リスクが高いのは、主に労働者が長時間、高温多湿な環境で作業を行う点にあります。
要因としては4つあります。
1.環境要因 気温・湿度・放射熱、風の少なさなど
2.作業要因 身体作業の強い、休憩時間が少ないなど
3.衣服要因 通気性の悪い衣服、保護具の着用など
4.人体要因 暑さに慣れていない、疾患の療養、肥満、運動不足、寝不足など
建設作業では、直射日光や地面からの反射熱、機械の排熱などが労働者の体温を急激に上昇させます。また、作業中の過度の運動や水分摂取の不足もリスクを高める要因です。建設現場では通常、作業が屋外で行われるため、熱中症の発生リスクもより一層高いのが特徴と言えるでしょう。
ここからは、建設現場における熱中症対策のポイントについて見ていきましょう。
暑さ指数(WBGT)の計測と周知は、建設現場における熱中症対策のポイントとなります。
WBGT値とは、温度(気温)、湿度、輻射熱・放射熱などを総合的に評価した指数です。自然湿球温度計、黒球温度計、乾球温度計を読み取り演算して、値を求めます。今はWBGT計を用いることが多いです。WBGT計は黒球がついているのが特徴です。単位は温度と同じ、℃です。単位は同じですが、温度とWBGT値が異なることもあります。
作業場所のWBGTが基準値を超えると、労働者の熱中症リスクが高まります。環境省の熱中症予防情報サイトでは、全国のWBGT予測値が公開されており、事業者はこれを活用して作業環境を適切に管理することが重要です。公表データに加えて、現場ごとにWBGT計を設置し、リアルタイムで測定することも必要です。
また、労働基準法に基づき、事業者は労働者に対し、暑さ指数の意味や影響について適切に周知徹底するのも義務です。朝礼などでは、現在のWBGT値やピーク時の予想などをもとに、必要な対策を伝達しなければなりません。
これにより、労働者が熱中症の危険性を正しく認識し、適切な対策を講じることが可能となるでしょう。
建設現場における休憩所の整備は、労働者の健康を守る重要なポイントとなります。
大規模現場では、冷房や冷蔵庫を備えた快適な休憩スペースを設置し、労働者が体を冷やしたり水分補給を行えるようにするのが良いでしょう。また、横になれるスペースの確保も重要です。一方、小規模現場では日陰を確保し、簡易的な休憩所を設けます。これにより、労働者は適切な休息を取りながら体温調節ができ、熱中症のリスクを軽減することに繋がるでしょう。
建設現場での作業中、適切な水分・塩分の摂取が熱中症予防に欠かせません。
高温下での作業や発汗により、労働者は水分や塩分を失います。そのため、定期的に水分補給を行い、必要に応じて塩分も補給することが重要です。熱中症予防のために、建設現場では作業者に水筒を持たせることやウォータージャグや給水設備を設置し、同時に塩飴なども摂取できるようにして、労働者が手軽に水分・塩分を摂取できるようにしましょう。また経口補水液やスポーツドリンクを準備するのもよいでしょう。
建設現場での労働者の健康を守るために、通気性の良い服装が重要です。
ファン付き作業服やクーリングベルト、冷感機能のあるアンダーウェアなどを導入することで、労働者の体温を調整し、熱中症のリスクを軽減できます。これらの服装は、高温多湿な環境下での作業に適しており、汗を素早く吸収し、体の熱を逃がすことが可能です。また、通気性の良い服装は労働者の快適さだけでなく、作業効率の向上にも繋がるでしょう。
なお、保護具(呼吸用保護具、保護衣など)を使用する場合は取り外す時間を決めるなど、定期的に労働者の呼吸・換気を促すよう心がけることも重要となります。
安全協議会や教育機関による熱中症に関する教育の実施は、建設業における熱中症対策の重要な要素です。労働者が熱中症の症状や予防方法を理解し、適切な対応ができるようにするためには定期的な教育が必要となります。
教育内容には、熱中症の症状やリスク要因、適切な水分補給や休憩の重要性、適切な服装の選択などが含まれます。事業者は労働安全衛生法に基づき、労働者に対する熱中症に関する教育を実施する責任があります。
建設現場で熱中症が発生した場合、迅速かつ適切な対策が欠かせません。
まず、症状が現れた労働者にはすぐに休息を取らせ、クーラーの効いた場所に移動させます。その後、冷却シートや氷枕を使って体温を下げ、水分を十分に補給します。医療機関の支援が必要な場合は、速やかに救急車を手配してください。
熱中症の発生を防ぐためには、普段から労働者に熱中症の早期症状や予防方法についての教育を徹底し、定期的な休憩や水分補給の取り組みを強化することも重要です。また、安全協議会や現場責任者が緊急時の対応計画を策定し、緊急時の対応をあらかじめ確認しておくことも重要です。
とにかく無理をさせず、異変を感じた場合はすぐに救急車や病院を活用しましょう。そして体調不良者は一人にしてはいけません。体調の急変などがあるからです。常に誰かが側にいるようにしてください。
安全教育センターでは、熱中症の教育について出張講習を行っています。
当社の教育には、指導員向けと作業員向けの2種類があり、別々の立場から熱中症の危険性や予防対策、対処方法などを学べる内容となっているのが特徴です。
建設現場では定期的に熱中症患者が発生しているため、建設業に関わる方はぜひ安全教育センターの熱中症教育をご活用ください。