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ヒヤリハットは、仕事中に「ヒヤッとした」や「ハッとした」ような危険な状況が発生したものの、幸いにも事故や災害には至らなかった事象のことです。
現場では、労働災害に至らずともヒヤリハットが発生することがあるため、十分に気を付けておくことが必要となるでしょう。場合によってはヒヤリハットで済まずに大規模な労働災害に発展する可能性もあるので、現場で働く人それぞれが注意しておかなければいけません。
この記事では、ヒヤリハットとは、ヒヤリハットの事例、ヒヤリハット事例を報告書にまとめることで作業環境に潜む危険の改善に役立てること、ヒヤリハットは危険予知活動にも活用できることについて詳しく解説します。
ヒヤリハットとは、仕事中に「ヒヤッとした」や「ハッとした」ような危険な状況が発生したものの、幸いにも事故や災害には至らなかった事象を指します。
現場では実際に労働災害には至らずともヒヤリハットが頻発するため、各自が危険意識を持って対応することが重要です。
ヒヤリハットの事例を集めて分析すれば事前に対策を講じることで安全意識を持てるので、まずはどのような事例があるのかを知ることが重要と言えるでしょう。]
ヒヤリハットが発生する主な原因には、以下のようなものがあります。
・ヒューマンエラー
・労働環境の不備
・情報共有の不足
・安全意識の欠如
以上の4つが、ヒヤリハットが発生する主な原因です。
ヒューマンエラーは人間が起こす不具合のことであり、ヒヤリハットの多くはちょっとしたミスによって発生します。確認ミス・作業ミス・指示ミスなど、現場ではヒューマンエラーによるヒヤリハットが少なくないため、働く人は意識的に注意することが必要です。
他にも、ヒヤリハットは労働環境の不備や情報共有の不足、安全意識の欠如で発生します。
例えば、労働環境の改善が進んでおらず、安全装置や保護具などが正しく配備されていない場合、ヒヤリハットに繋がる可能性が十分考えられますし、作業前の情報共有ができていなかったり作業中の安全意識が欠けていたりするだけでもヒヤリハットは発生しやすくなるわけです。
ヒヤリハットを防ぐためには、上記の原因を適切に排除していく必要があるでしょう。
ハインリッヒの法則とは別名「1:29:300の法則」と呼ばれるもので、1件の重大事故の裏には29件の軽傷事故と300件の無傷害事故が隠れていると考え、事故の背景には多種多様なヒヤリハットがあるということを示す法則です。
これはアメリカの安全技師ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒ氏が実際の調査をもとに導き出した法則で、1931年発行の『Industrial Accident Prevention-A Scientific Approach』という著書によって広まったとされています。
日本では1951年に『災害防止の科学的研究』として翻訳され、実際の現場でもハインリッヒの法則を重視する動きが見られるようになりました。
重大事故を防ぐためには日頃からハインリッヒの法則を意識し、ヒヤリハットを防ぐよう工夫することが大切といえるでしょう。
ヒヤリハットの事例は、厚生労働省がイラスト付きで「墜落・転落」「転倒」「激突」「飛来・落下」「崩落・倒壊」「激突され」「はさまれ・巻き込まれ」「切れ・こすれ」「高温・低温の物との接触」「感電・火災」「有害物との接触」「交通事故」「動作の反動・無理な動作」「破裂」「その他」に分けて紹介しており、参考になる事例が多数です。
ここでは、いくつか具体的なヒヤリハット事例をピックアップして紹介します。
倉庫業の配送商品の選別収集(ピッキング)中に発生した事例です。
「倉庫でオーダーピッキングリフトに乗って棚から商品を選別収集していたところ商品に手が届かず高さ2.45mから墜落しそうになった」という状況で、オーダーピッキングリフトの運転時に安全帯を使用させていなかったこと、オーダーピッキングリフトの安全作業に関する教育を行っていなかったことが原因とされています。
オーダーピッキングリフトの運転時は労働者に安全帯を着用させること、オーダーピッキングリフトの安全作業に関する教育を行うことなどの対策が必要となるでしょう。
陸上貨物運送業の荷物の運送中に発生した事例です。
「配送センターにて荷物を持ち停止中のベルトコンベヤーをまたごうとしたところバランスを崩し転倒しそうになった」という状況で、停止中とはいえ荷物を持ち両手がふさがった状態でベルトコンベヤーをまたいで移動しようとしたことが原因とされています。
ベルトコンベヤーの反対側に移動する際はコンベヤーをまたがず安全な通路を通ること、通行に必要な場合は踏切橋等を設置することなどの対策が必要となるでしょう。
製造業の運搬作業中に発生した事例です。
「フォークリフトを使用して原料用空箱を入荷場から外の空箱置き場に運搬するため、シャッター下を一時停止しないで通過したとき、シャッターの外脇からシャッター前を横切ろうとした作業者と衝突しそうになった」という状況で、一時停止しないで通過しようとしたこと、安全確認をしていなかったが原因とされています。
フォークリフトの運転者はシャッター前での一時停止と指差呼称による安全確認を必ず行なうこと、可能な限り作業者が通る通路をフォークリフトが横断しないようにすることなどの対策が必要となるでしょう。
製造業の加工作業中に発生した事例です。
「卓上型ボール盤で機械部品を加工していたが、通常は保護メガネをつけて作業するところ、わずかな修正加工であったので保護メガネをつけないで作業したため、「キリ粉」が顔の方に飛散して眼に入りそうになった」という状況で、安全装置や保護具の装着を怠ったことが原因とされています。
卓上ボール盤の作業ではどんなに短時間の作業であっても必ず保護めがねを使用することなどの対策が必要となるでしょう。
ヒヤリハット報告書は、事故防止だけでなく業務の安全性向上やリスクマネジメントの一環としても重要です。適切に記録し、組織全体で共有することで、より安全な職場環境を構築することができます。
ここでは、ヒヤリハット事例を報告書にまとめることで作業環境に潜む危険の改善に役立てることについて見ていきましょう。
まずは、報告を容易にすることが重要です。書類に多数の項目があると報告を怠る人がいるため、必要事項を整理して負担がないようにします。
報告方法も書面だけでなくスマホなどからもできるようにするなど、手間や面倒を避けるよう工夫することが重要といえるでしょう。
次に、体験や発見した事象を客観的に記載し、主観や推測を含めないようにします。具体的に「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ」という5W1Hを活用するのが望ましいです。
主観的な感想や思考ではなく、客観的に事実を記載することで状況が整理しやすくなり、他のヒヤリハットを防ぐためのノウハウやマニュアルとして蓄積されるでしょう。
報告を受けた管理者の役割を書いてください。
報告を受けたヒヤリハットに対して放置しない。可能なことは対処する。すぐに対応できないことは、その旨をフィードバックする。報告しても、何も反応がない、改善されないことは、報告する気を失わせます。対処を考えるときに、原因の分析などを行う。
併せて、直接的な原因と間接的な原因を両方記載します。例えば、機械の故障が直接的な原因であれば、その背景にある管理不足なども記載することが大切です。
原因を分析することで作業環境に潜む危険を改善できるため、ヒヤリハットが発生した時点で状況を整理し、現場で働く人と共有しましょう。
同時に、再発防止のための具体的な対策や改善案を提案します。例えば、安全対策やトレーニングの提案があると現場の改善に効果的です。
今後の対策を徹底することでヒヤリハットを未然に防げるので、適宜作業環境を改善しながら安全に配慮してみてください。
危険予知活動とは別名「KYT(危険予知訓練)」と呼ばれるもので、作業環境に潜む危険と実際に引き起こされる現象をイラストで確認したり、現場で実際に作業をさせたりしながら話し合い、ポイントや重点実施項目を指差唱和・指差呼称で確認する訓練を指します。
ヒヤリハット活動は危険予知活動と同時に実施することでより効果的な安全対策が可能となるので、同時に行うことが大切でしょう。具体的には、ヒヤリハットで得られた情報を基に危険を予知し、改善策を立案するなどのプロセスが有効ではないでしょうか。
ヒヤリハットは、仕事中に「ヒヤッとした」や「ハッとした」ような危険な状況が発生したものの、幸いにも事故や災害には至らなかった事象のことを指します。
現場での作業では、労働災害に至らない程度のヒヤリハットが度々発生しているため、職場全体で防げるよう対策が必要です。
なお、安全教育センターではヒヤリハットの予防にも繋がる危険予知活動の出張研修を行っているので、もしヒヤリハットを防ぎたいとお考えなら、一度お問い合わせください。ヒヤリハットの予防は労働災害の予防にも繋がるからこそ、ぜひ定期的に研修を行って職場全体の意識を高めてみてはいかがでしょうか。