○コラム

不安全行動とは|発生要因と対策を解説

不安全行動は、厚生労働省では「労働者本人または関係者の安全を阻害する可能性のある行動を意図的に行う行為」と定義しています。

現場で発生する事故は、特に不安全状態かつ不安全行動が重なったときに発生しやすいため、原因を把握しておくことが欠かせません。中でも、不安全行動はヒューマンエラーとなるので、事業者・労働者ともに理解しておく必要があるでしょう。

そこで、この記事では不安全行動が発生する背景、不安全行動の類型、不安全行動を防ぐための対策について詳しく解説します。

 

不安全行動が発生する背景

不安全行動が発生する背景には、以下のような要因があります。

 

正しい仕事の進め方を知らない、忘れる

正しい仕事の進め方を知らないもしくは忘れることで、不安全行動が発生しやすくなります。

決められた作業や手順がわからないまま進めること自体が不安全行動となり、結果的に労働災害に発展するわけです。

単に進め方を忘れてしまったものの、責任者に確認するのが億劫で自己判断で進めてしまうこともあります。結果的に誤った方法で作業してしまい、労働災害になることがあります。

 

手間や労力、時間やコストを省くことを優先する考え

手間や労力、時間やコストを省くことを優先するような考えも不安全行動につながります。

仕事によっては面倒な作業や手順があるものですが、効率重視の労働者がいる現場では、確認を怠ることで労働災害に発展するケースが多いです。

限られた時間内で終わらせなくてはならない状況では、焦って不安全行動をとってしまうこともあります。

 

「これくらいは大丈夫だろう」という安易な判断

労働者によっては「これくらいは大丈夫だろう」と安易な判断をすることで、不安全行動につながっているパターンがあります。

長年働いている労働者の中には「長年やっているから大丈夫」「事故を起こすはずがない」などの過信から不安全行動が発生しやすくなることも少なくないです。

同じ作業の繰り返しは油断を生みやすいので、より気を引き締める必要があるでしょう。

 

作業を早く進めるための妥協

作業を早く進めるために、仕方なく確認を省くことで不安全行動が発生することがあります。

「効率的に仕事するためには仕方ない」という考えが、次第に「みんながやっているからいいだろう」との考えにつながり、職場全体で不安全行動が発生しやすくなることがあるため、注意が必要です。

 

不安全行動の類型

厚生労働省では、不安全行動の類型として以下の12項目を、不安全状態として以下の8項目を挙げています。

 

労働者の不安全行動

労働者の不安全行動は、以下の12項目に分類されます。

1.防護・安全装置を無効にする
2.安全措置の不履行
3.不安全な状態を放置
4.危険な状態を作る
5.機械・装置等の指定外の使用
6.運転中の機械・装置等の掃除、注油、修理、点検等
7.保護具、服装の欠陥
8.危険場所への接近
9.その他の不安全な行為
10.運転の失敗(乗物)
11.誤った動作
12.その他

労働者の自己判断で安全基準を守らなかったり、道具を正しく使用しなかったりすることで労働災害が発生しやすくなるため、安全教育の徹底が重要です。

 

機械や物の不安全状態

機械や物の不安全状態は、以下の8項目に分類されます。

1.物自体の欠陥
2.防護措置・安全装置の欠陥
3.物の置き方、作業場所の欠陥
4.保護具・服装等の欠陥
5.作業環境の欠陥
6.部外的・自然的不安全な状態
7.作業方法の欠陥
8.その他

現場の状況によっては機械や物が故障していたり、危険な状態で放置されていたりするため、常に確認して定期的に刷新することが重要です。

 

不安全行動を防ぐための対策

不安全行動を防止するためには、不安全行動を誘発し得る要因の把握、安全教育の強化、作業場所の整備が重要です。

不安全行動を防ぐための対策について詳しく解説します。

 

不安全行動を誘発し得る要因の把握と作業手順書の改善

不安全行動を誘発し得る要因を把握することで、労働災害を防止につなげられます。

行動の根本的な要因を特定し、効果的な対策を講じることである程度の不安全行動は抑制できるでしょう。これらの防止を盛り込んだ、作業手順書の作成、見直しも行います。ただ、原因を理解するだけで完全に労働災害を防げるわけではないため、安全教育の強化や作業場所の整備もあわせて行わなくてはなりません。

 

安全教育の強化

不安全行動の背景にある個人要因に焦点を当てた教育を実施により、不安全行動をある程度まで予防できます。

安全教育によって現場で働く人の意識が変われば、正しい仕事の進め方を守り、面倒を省くことを優先せず、安易な判断によって労働災害を引き起こすことを防げるはずです。

「作業を早く終わらせるよりも安全を優先すべきである」との認識が現場全体に広がれば、不安全行動も減っていくでしょう。

 

作業場所の整備

危険な状態を作り出さないよう、作業場所の整理整頓と適切な環境整備を行うことも忘れてはなりません。

現場に作業の邪魔になるような物が置かれていたり、使用済みの工具が放置されていたり、道具が散乱していたりすると手足をぶつけたり衣服を引っかけたりして危険です。何が労働災害に発展するかわからないからこそ、常に片付けを徹底します。

不安全行動をしても、事故ならないようにする設備的対策も必要となるでしょう。

 

まとめ

不安全行動は、労働者本人または関係者の安全を阻害する可能性のある行動を意図的に行う行為を指します。

現場では正しい仕事の進め方を知らないもしくは忘れることによって不安全行動が発生しやすくなる他、面倒を省くことを優先する考えや「これくらいは大丈夫だろう」という安易な判断によって労働災害につながりやすくなることが多いです。

労働者によっては作業を早く進めるための妥協として、仕方なく確認を省略している人も少なくありません。

そのため、不安全行動を誘発し得る要因を把握するのはもちろん、不安全行動を抑止する作業手順書の整備、安全教育を強化し、作業場所の整備を行うことが欠かせません。作業手順書や職場の教育を安全教育センターは実施しております。不安全行動を防止のため、一度ご相談ください。