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業務上疾病とは、職場での業務によって引き起こされる健康障害です。これは働く方々にとって避けられないリスクの一つです。日々の仕事において、知らず知らずのうちに健康を害するケースも少なくありません。本記事では、業務上疾病の種類や具体例を分かりやすく紹介し、どうすればリスクを最小限に抑えられるか、予防対策についても詳しく解説していきます。健康を守るために、正しい知識を身につけましょう。
業務上疾病とは、労働環境や作業によって発生する病気や障害のことです。労働基準法では「業務上疾病」、医学用語では「職業性疾病」とも呼ばれています。このような病気は、作業中の有害因子(化学物質や粉じん、騒音など)に長期間さらされることが原因となることが多く、仕事そのものが健康に大きな影響を与える場合があります。
業務上疾病は、業務との因果関係が認められる疾病です。労災保険の対象となるためには、疾病が発生した原因が業務によるものであることの証明が求められます。たとえば、腰痛や化学物質による中毒は、長期間の作業や繰り返し行われる作業によって引き起こされるのであれば、認められやすいです。しかし、腰痛を発症しても、業務との関係性が薄い場合は、認められないこともあります。
業務上疾病は、必ずしも業務中にその場で発症するとは限りません。特に、じん肺やがんなどの病気は、有害物質に長期間さらされた結果、退職後に症状が現れることもあります。このため、過去の業務履歴やばく露(ばくろ)の状況が重要な判断材料となります。業務終了後数年経ってから発症した場合も業務上疾病として認定される可能性があります。
業務上疾病の中には、短期間で急激に発症するものもあれば、長期間経過してからゆっくりと発症するものもあります。たとえば、化学物質に一度だけ大量にさらされた場合、すぐに症状が出ることもありますが、騒音や振動による難聴や腰痛は長期的に少しずつ進行するケースが多いです。このため、短期的な健康診断だけでなく、長期的な健康管理も欠かせません。
労働基準法施行規則第35条では、業務上疾病を9項目に分類しています。
(1)業務上の負傷に起因する疾病
(2)物理的因子による疾病(潜水病、騒音による難聴など)
(3)身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する疾病(腰痛、腱鞘炎など)
(4)化学物質等による疾病(化学物質に起因する呼吸器疾患・皮膚疾患、酸素欠乏症など)
(5)粉塵を飛散する場所における業務によるじん肺症又はじん肺と合併した疾病
(6)細菌、ウィルス等の病原体による疾病
(7)がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による疾病
(石綿業務による肺がん又は中皮腫など)
(8)その他厚生労働大臣の指定する疾病
(9)その他業務に起因することの明らかな疾病
これらの分類の中には、さらに多くの具体的な疾病が含まれます。以下にその例をいくつかご紹介します。
業務上疾病は、職場での業務に関連して発生するさまざまな病気や障害を指します。労働基準法施行規則第35条では、業務上疾病を9つの主要カテゴリーに分類しています。これには、物理的因子や化学物質による疾病、身体に過度な負担がかかる作業による疾病などが含まれます。具体的には、腰痛やじん肺、がんなど多岐にわたる病気がこのカテゴリーに該当します。
化学物質に起因する業務上疾病は、特定の化学物質や有害物質に長期間ばく露することによって発生します。呼吸器疾患や皮膚疾患などの症状があります。特に化学工場や製造業に従事している人々に特にリスクがあります。ばく露防止のためには、リスクアセスメントを実施して有害性を理解し対策を決めます。そして取り扱う作業者に周知しなければなりません。作業時には局所排気装置など換気装置を適切に稼働させるともに、適切な防護具を使用することが重要です。
粉じんによる疾病は、作業中に発生する微細な粉じんを吸い込むことが原因です。鉱山や建設現場など粉じんが多く発生する職場で発生しやすいです。金属アーク溶接を行う場合に発生する溶接ヒュームも粉じんの一種です。これらの作業中に長期間粉じんにさらされることで、呼吸器疾患が慢性的に発生するリスクが高まります。じん肺の予防には、適切な換気と粉じんを防ぐマスクの着用が不可欠です。
がん原性物質にさらされる業務では、特定の種類のがんが発症するリスクが高まります。がん原性物質の取り扱いには、厳格な安全管理が求められ、リスクアセスメントの実施はもちろんのこと、作業記録を残し、定期的な健康診断が義務付けられています。作業記録や健康診断の記録は、化学物質のがん原生物質では30年間、石綿の場合は40年間の保存が義務付けられています。
身体に過度な負担がかかる作業は、特に腰痛や腱鞘炎といった身体の障害を引き起こします。これらは重量物の運搬や不自然な姿勢での作業が長時間続くことによって発症します。腰痛は特に建設業や運送業で多く報告されており、作業環境の改善や定期的なストレッチ、適切な作業姿勢の確保が重要な予防策となります。
業務上疾病の予防には、従業員の健康を守るための対策が不可欠です。対策とは衛生の3管理を行います。(作業環境管理、作業管理、健康管理+衛生教育)。主な対策として、
・作業環境測定
・作業前の設備等の点検
・局所排気装置等による作業環境の改善
・リスクアセスメントの実施と作業者への周知
・作業手順の作成
・適切な保護具の使用
・健康診断
・有害業務についての理解
これらについて実施事項を決め、確実に行うことが必要です。
健康診断の種類は、定期健康診断と特殊健康診断があります。危険有害業務は特殊健康診断を受けます。受診対象を一覧表(名前、対象者、頻度)にして下さい。
事業者は従業員に対し、定期的な健康診断を実施する義務があります。定期健康診断は一般的な健康管理を目的とし、特殊健康診断は危険有害業務に従事する従業員に対して行われます。これにより、潜在的な健康リスクを早期に発見し、予防策を講じることができます。特に、振動工具を扱う業務や化学物質を扱う職場では、特殊な健康診断が求められています。
作業環境の改善は、労働者が有害物質や物理的因子に長期間さらされるリスクを軽減するために重要です。作業場や作業内容に応じて局所排気装置やプッシュプル型換気装置、全体換気装置などを備えます。これら換気設備によって作業環境を改善した上で、個人用保護具の使用を徹底し、危険なばく露を最小限に抑えることが求められます。
建設業では、じん肺や石綿などが大きなリスクとなります。粉じん対策としては、換気設備による環境改善とともに、防じんマスクの使用徹底が不可欠です。金属アーク溶接で発生する溶接ヒュームも粉じんです。屋内屋外問わず防じんマスクが必要です。また溶接ヒュームは特定化学物質に分類されているため、作業にあたっては、特定化学物質作業主任者の専任もしくは、令和6年1月1日から新設された金属アーク溶接作業主任者の選任が必要です。また手持ちの振動工具によって引き起こされる振動障害防振ためには、振動工具ごとの使用時間の設定、防振手袋の使用などの防止対策を行います。振動工具については、労働衛生教育があるため、作業者には受講させるとよいでしょう。
製造業では、粉じんや有機溶剤、化学物質、騒音などが業務上疾病の原因となります。これらのリスクを軽減するために、定期的な作業環境測定と改善を行い、局所排気装置等の換気設備の使用が欠かせません。当然、作業者には必要な保護具を使用させます。
技能講習、特別教育の対象になっている業務も多いため、よくチェックして、必要な講習等は申込みするように促して下さい
業務上疾病に関わる多くの業務は、技能講習や特別教育が義務付けられており、これらを適切に受講することは安全な労働環境を確保する上で非常に重要です。石綿、特定化学物質、有機溶剤、鉛、金属アーク溶接等作業では、作業主任者が必要です。また作業従事者のためには、石綿特別教育、金属アーク溶接特別教育、有機溶剤労働衛生教育、振動労働衛生教育などがあります。必要な資格や教育は必ず終了しなければなりません。これらの業務は、特定のリスクが伴うため、労働者が適切な知識と技術を持つことが求められます。事業者は定期的に講習の必要性を確認し、作業者に対して適切な講習を提供する責任があります。安全教育センターでは、衛生関係の技能講習や特別教育を行っています。出張教育も行っておりますので、ぜひともご確認ください。