○安衛法と仲良くなる

安衛法はエモーショナル!?

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安全や衛生に関わるようになり、関係する法令にも触れる機会が少なからず出てきました。
その中で、ちょっと感じたことがあります。
法律は無機質な文面の底には、感情的なものがあるんじゃないかと。

仕事をする上で切っても切れない法律として「労働基準法」「労働安全衛生法」があります。どちらも労災を防ぐための法律ですけども、事故や怪我などについては「労働安全衛生法」(安衛法)が重要になります。

大きな事故が発生すると、警察とともに労働基準監督署の調査があります。警察は刑法の「業務上過失傷害」などで送検されますが、労働基準監督署は「労働安全衛生法」の違反として送検されるわけです。

法律というと、堅苦しい文章のため、とっつきにくい印象があるのではないでしょうか?
意味することは簡単なのに、難しい言い回しをしていて、何を言っているのかよく分からない。
私も安衛法を読んでると、一度では理解できず、何度か読みなおして、理解するということも多々あります。

堅苦しく、取っ付きにくい法律だと思っていたのですが、実はちょっと視点を変えてみたら、とても身近なものになってきたんです。

その変えた視点というのは、実は法律って、その裏にものすごく熱い感情を秘めてるんじゃないか?
実はとってもエモーショナルなものなんじゃないかというものなんです。

想像ですが、この法律の全ての条文には、作成に携わった厚労省の人たちの事故を減らしたい、一人でも多くの死傷者を減らしたいという情熱がこもっているんじゃないかと。

感情的な動機が、法律を作るというので、まず思い浮かぶのは飲酒運転の厳罰化です。

ここ10年で、飲酒運転の罰則はかなり厳しい物になりました。
10年くらい前はもちろん飲酒運転は禁止でしたが、世の中の雰囲気として緩かったように思います。私の周りでは、酒を飲んでいるから、運転を止めろなどと言うと、何て空気の読めない奴なのだと言われかねなかった記憶があります。
しかし現在では、飲酒運転をしようものなら、とんでもない奴!という扱いになります。

この飲酒運転の厳罰化への契機は、1999年の東名高速飲酒運転事故といえます。この事故によって、このような事故、悲劇を繰り返してはいけないというムーブメントを作り出し、社会的な盛り上がりが、法改正に至りました。

きっと安衛法の成立の背景にも、同様のムーブメントがあったはず。

安衛法は、昭和47年に施行されました。
時代背景としては高度経済成長期の末期であり、すさまじい勢いでインフラを整え、工場ではものを作りまくっていたいました。

生産性に重きをおいていたので、当然労働者の安全については二の次だったでしょう。加工機械は、安全装備も充実していなかったでしょうし、建設現場では、ヘルメットも被らないのが当たり前だったはずです。
そのため労働災害も少なくなく、怪我をしたり、命を落としたりすることが多かったです。

統計を見てみると、昭和40年の死亡者数は、6,046人!死傷者数は、 408,331人!この数字は、平成25年の死亡者数は約6倍で、死傷者数は4倍もの数字です。
死亡された方には、家族もいたでしょう。伴侶を亡くす、親を失う、子どもに二度と会えない。そのような家族が、6000世帯もあったのです。

このような悲劇を減らさなければならない!

安衛法は、多大な死傷事故を生み出す時代を背景として、成立しました。

安衛法の第1章、第1条はには目的が書かれています。

(目的)
第1条
この法律は、労働基準法(昭和22年法律第49号)と相まって、労働災害の
防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の
促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を
推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、
快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

労働基準法は、労働者の賃金や労働時間等の労働条件について規定しています。この法律の条件の中には、労働時の安全や衛生は含まれていなかったために、別途で安衛法を必要としたのです。

安衛法は、各種作業現場での安全条件について、細かく規定します。全て法律の条件を満たしているという現場は、ほぼないでしょうが、危険な作業から、労働者を守るには十分功を奏してきています。
その証拠に、昭和47年成立後の、昭和50年の死亡者数は3,725人とかなりの数が減少しています。現在は約1000人から1200人の間と、ピークに比べ減少しています。

安衛法の、成立背景は増大する労働災害による死傷者を減らしたいという欲求によるものです。この欲求には、家族を失った方の多大な痛みと悲しみの感情が渦巻いていたものであろうと思います。
 
会社で安全管理などを担当されていば、安衛法に触れる機会もあろうかと思いますが、実は背景には、あなたの会社の全ての社員と家族が、ごく当たり前の日常が過ごせるようにという思いがこもっている。そう考えると、この堅苦しい条文も、熱いものに感じますね。

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