厚生労働省労働局長登録教習機関
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前回は、「安衛法」第25条を中心に、事業者は災害、特に土石流の危険予防のための措置について書いてみました。今回は第25条の関連条文をまとめてみたいともいます。
第20条から第27条は、労働者の労働災害の危険又は健康障害を防止するために、事業者が実施しなければいけない措置をまとめています。
労働者が巻き込まれる可能性がある災害はたくさんあります。
災害には、天災はもちろんのこと、火災、爆発、感電、機械事故など、怪我はなくとも、健康被害をもたらすものも含めると、数えきれません。
そういった危険を防止することが求められているわけです。
【安衛法】
(事業者の講ずべき措置等) 第20条 事業者は、次の危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。 1) 機械、器具その他の設備(以下「機械等」という。)による危険 2) 爆発性の物、発火性の物、引火性の物等による危険 3) 電気、熱その他エネルギーによる危険 |
第21条 事業者は、掘削、砕石、荷役、伐木等の業務における作業方法から生ずる 危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。 |
第21条 事業者は、掘削、砕石、荷役、伐木等の業務における作業方法から生ずる 危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。 2 事業者は、労働者が墜落するおそれのある場所、土砂等が |
第22条 事業者は、次の健康傷害を防止するため必要な措置を講じなければならない。 1) 原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体等による健康障害 2) 放射能、高温、低音、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害 3) 計器監視、精密工作等の作業による健康障害 4) 排気、廃液又は残さい物による健康障害 |
第23条 事業者は、労働者を終業させる建設物その他の作業について、 通路、床面、階段等の保全並びに換気、採光、照明、保温、防湿、 休養、避難及び清潔に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の 保持のため必要な措置を講じなければならない |
第24条 事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を予防するため 必要な措置を講じなければならない。 |
第26条 労働者は、事業者が第20条から第25条まで及び前条第1項の規定に基づき 講ずる措置に応じて、必要な事項を守らなければならない。 |
第25条の2項の「ほか政令で定める業種」は、安全衛生施行令(安衛令)内で規定されています。
【安衛令】
第9条の2 法第25条の2第1項の政令で定める仕事は、次のとおりとする。 1)ずい道等の建設の仕事で、出入口からの距離が1000メートル以上の 2)圧気工法による作業を行う仕事で、ゲージ圧力0.1メガパスカル以上で |
第20条から第25条までは事業者がとるべき措置についての規定であり、第26条は労働者がとるべき措置について規定しています。第27条については、より具体的な内容は安衛令や安衛則に書いているということです。
文言としては小難しいですが、内容は当たり前の内容ですね。
各条文を簡単にまとめていきましょう。
○第20条
事業者は労働者が危険な物を扱うときには、危険予防をとらなくてはいけません。
ここでの危険は、1.機械等 2.火災・爆発物等 3.電気・熱等が挙げられています。
2と3については、言うまではありませんね。
1に含まれる機械ですが、工場や建設現場で使用する機械などです。
例をあげるとボイラー、圧力容器、クレーン、ゴンドラの他、工場にある加工機械などがあります。これらについては「安衛則」第3章のほか、「ボイラー則」、「クレーン則」など専門の規則があります。
今後書くこともあると思いますが、今回は詳しくは入り込みません。
要するに危険な物を扱うときには、労働者を守る措置を取りなさいということです。
○第21条
第20条と同じく、労働者が危険な作業を行うときには、危険予防措置をとらなくてはいけません。条文では特に掘削、採石、荷役、伐木等が挙げられています。
どんな危険があるか?
建設現場で掘削、つまり穴を掘る作業を行っていれば、穴に転落する可能性があります。
採石作業では、崖から石を落とす作業時に石にぶつかるかもしれません。
荷役、つまり荷物の運搬では、荷物の下敷きになったり、積んだ荷物の上から落下したりするかもしれません。伐木、すなわち木を切っていれば、倒木にぶつかるかもしれません。
作業自体に危険をはらんでいるのですから、これらの危険予防をしなさいということですね。
○第22条
事業者は労働者の健康障害を予防しなくてはいけません。
特に有害物を扱ったりする場合は、十分な対策をとらなくてはいけません。
例えば福島第一原発近辺では、除染作業を行っていますが、この仕事を請け負っている事業者は労働者に防護服等を着用させたり、労働時間を制限する必要があるわけです。
第3項は、危険作業ではありませんが、長時間同じ姿勢をとると、目や腰などに負担がかかるから、対策をとりなさいということでしょうね。
○第23条
事業者は労働環境を適切にしなくてはいけません。
暗い、臭い、汚れている、なんだかベタベタする、虫が飛んでる。
こういった環境で仕事をしていると、仕事にならないどころか体にも悪影響が出そうですね。
○第24条
労働者の作業行動から生ずる労働災害の予防措置をとらなければならない。
この「労働者の作業行動から生ずる労働災害」とは何だろうと考えるところです。
第21条には「作業方法から生ずる労働災害」がありますが、これとは違うようです。
あれこれ調べてみると、通常業務の中の事故や怪我と考えたら良さそうです。
行動なので、無理に重いものを持とうとしてぎっくり腰になるとか、階段を使わずに塀から飛び降りて捻挫するといったものでしょうか。つまり、労働者に危険な作業方法をとらせないようにということですね。
○第25条
こちらをご参照下さい。
豪雨災害時の安全管理は?
○第25条の2
建設業で特定の工事を行う場合は、爆発や火災等の危険に備えて救護体制を整え、訓練の措置をとらなくてはいけません。2項は救護の管理者を配置しなさいということです。
特定の工事については、安衛令で規定されています。
1. 1000m以上の長さ、50m以上の深さのたて坑があるずい道(トンネル)工事、
2. 0.1メガパスカル以上の圧気工法
での工事です。
数値が出てきているので、関係資格の試験で出されそうですね(笑)
圧気工法とは、文字通り通常よりも高い気圧の中での仕事です。どういった場所か?
例をあげると、海面下で橋の基礎工事などです。周りが水なので、内部から高い圧力をかけて、水が作業場所に入ってこないようにするんですね。
トンネル工事、海面下の仕事などは、すぐに逃げることもできないので、火災などはより注意する必要がありますよね。だからこそ、より一層の防止措置とともに、万が一の時の救護する体制が求められているわけですね。
○第26条
労働者についてです。事業者があれこれ災害対策の措置をとったら、労働者は、守らなければなりませんということです。
○第27条
第20条から第26条の詳細は、厚生労働省が定めますということです。
これは安衛令や安衛則などのことですね。
2項は、労働災害以外にも、公害も予防しなさいということです。
各条文は、原則的な内容になりますので、具体的に何をしなくてはいけないのかは書いていません。これらは第27条にあるように、関係令、則にまとめられています。
それらについては、また追々書いていければと思います。
まとめると、事業者は労働者を危険や健康障害から守らなければなりませんよということですね。
まとめ。
第20条 事業者は、労働者が危険物を扱うときは、危険予防措置をとらなければならない。 第21条 第22条 第23条 第24条 第25条 第25条の2 第26条 第27条 |