厚生労働省労働局長登録教習機関
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特別教育では、特定の業務を行うためには特定の教育が必要ということを説明しました。
この教育は、個人の技能向上のためであり、同時に業務にあたっての安全等に対する心構えについてです。
つまり個々人のスキル向上を目指したものが、特別教育だと言えます。
個々人のスキルが向上しても、実際の業務ではチームで行うことが多いです。
数人から多ければ十数人の人たちで業務を行うにあたって、それぞれの人がてんでバラバラ、思いついたこと仕事をやっていたら、現場は混乱するとともに、事故も起こりやすくなるのは、想像に難くないと思います。
この人たちを取りまとめ、的確に指示を行い、安全に業務を遂行させるリーダーが必要となります。
この現場でのリーダーを職長といいますが、この職長を養成するのが、「職長教育」です。
つまり職長教育は、現場作業員のリーダーシップ講座と言えますね。
特定の業種については、法律で職長を配置することが義務付けられています。
職長教育については、安衛法第60条に規定されています。
【安衛法】
作業中の労働者を直接指導、監督するために、必要な事項を学ぶわけですね。
条文のただし書きで「作業主任者を除く」とあります。この作業主任者は、安全衛生体制の含まれるもので、特に危険を伴う作業で、専門性の高い業務の指導等する責任者のことです。
職長はチーム全体のリーダーですが、専門性の高い業務については作業主任者に任せ、関与する必要がないということですね。
職長の配置は、全ての業種で求められているわけではありません。
条文に 「その事業所の業種が政令で定めるものに該当するとき」とあります。
この「政令で定めるもの」は、安衛令第19条に規定されています。
【安衛令】
職長を配置する業種は、6つの業種です。
全て現場作業で怪我や事故が想定される業種だと分かります。
2)製造業は、一部除外があります。イ~ホにあるものですが、チーム作業を要しないのか、比較的事故が少ないのか、除外理由に関しては、申し訳ないのですがよく分かりません。
建設業は、複次に渡る下請による業務形態です。
足場作業はA社、クレーン作業はB社というように、1つの現場には、多数の業者が入り乱れています。
当然、仕事の範囲も重なるわけですから、作業単位チームごとに効率的かつ安全に作業を進める職長が必要とされるわけです。
そして経験だけでなく、法的に遵守すべき事項もあるわけですから、正しい知識を身につけるためにも、職長教育を受ける必要があるのです。
どのような教育を行うのかについても、法的に内容及び時間が定められています。
教育内容は、安衛則第40条に規定されています。
【安衛則】
教育内容は、実践的な教育内容になっています。
職長は現場での指導、監督の他、労働者の事故や災害からの安全確保なども行わなければならないということです。
なお、職長教育を受講する時間は、勤務時間になりますので、事業者は理解が必要です。
当然ですが、受講中はサボっているわけじゃないですからね。
平成18年4月に法改正があり、従来の内容に加えて「職長のためのリスクアセスメント」についても受講する必要がでてきました。
リスクアセスメントは、改めて説明しますが、現場に潜在するリスクを見つけ、ランク付けし、優先順位の高いリスクから対応するというものです。
職長は、現場作業に精通しているので、作業に従事する前に、危険予防にあたってもらうことを意図したものと言えますね。
現場作業を行う労働者は、自分の仕事に集中するので、全体を網羅する目を持ちにくい状態です。
自分の作業を優先すると、他の労働者の作業の手を止めることもあるし、何より危険を招くこともあります。
ただでさえ危険がいっぱいの現場、誰かが責任を持って、まとめなければなりません。
職長は、危険な現場をまとめ、全員の安全に対して責任を負います。
とはいえ、職長教育を受けていなくとも、実質的な職長になることはできます。
現実的には、教育を受講していないが、職長になっている方が多いかもしれません。
法的な義務を差し置いておくと、職長教育を受けていなくとも、安全で的確な現場指導ができているなら、それに越したことはないのかもしれません。
ただ弊害として、経験を積んだ職長の方法が、必ずしも安全かというと、そうでないケースもあります。
「昔はこうだった~」というのが通じなくなってきているのも、現実です。
職長教育では、標準的な内容を学ぶことができます。
そのまま現場に当てはめることができないものも多々あります。
教育内容と現場のギャップを埋め、より適切な内容にしていくのが経験でしょう。
知識は経験を活かし、経験は知識を活かします。
現場作業の労働者を活かし、生かすのは職長の責任です。
経験に知識が備わった、知恵ある職長さんの現場は、労働者にとっても快適でしょう。
何より、しっかりとした安全対策をされていることで、みんなの命を守ることができます。
事業者にとっても、職長教育を受講させ、適切な職長を配置することは、安全で効率のよい現場運営になるので、メリットは大きいのです。
ここまで書いてきて思ったのですが、職長てかっこいいですね。
ちょっと補足です。
安衛法第60条の2は、安全教育についての補足です。
第60条の2 事業者は、前2条に定めるもののほか、その事業場における安全衛生の 水準の向上を図るため、危険又は有害な業務に現に就いている者に対し、 その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行うように 努めなければならない。 2 厚生労働大臣は、前項の教育の適切かつ有効な実施を図るため |
有害で危険な業務に就いている労働者は、一歩間違えると大怪我になったりします。
そのため、事業者は危険作業にあたっている労働者の技能向上教育を受けさせ、事故を起こさないようにするよう努力しなければならないということです。
これは努力を求めているのであって、義務ではありません。
2項、3項では、これらの教育は、厚生労働大臣が指針を出しますということが規程されています。
指針は、「労働災害の防止のための業務に従事する者に対する能力向上教育に関する指針」(平成 18.3.31 能力向上教育指針公示第5号)という形で、表明されています。
安全、安全というけれども、では一体どういうことなのか。
特別教育や職長教育では、その土台となる知識を提供しているということです。
子どもの教育費用と同様に、労働者の教育にはコストはかかります。
事業者にとっては、1人あたり数万の出費と、数日間の時間かなり負担になります。
ただ見方を変えると、自社で行うOJT等の教育を、外部に委託して、時間と費用を効率化しているとも考えられますし、現場指導では抜けがちな安全に対する意識が教育できるメリットもあります。
現場作業のリーダーシップなどは、教えるのも難しいのですから、外部委託のほうが効率的なのではないでしょうか。
しっかりとした職長がいると、現場の事故も減らせるのではと思います。
まとめ。
【安衛法】
第60条 一定の職種の事業者は、新たに職長になる人に対して職長教育を 受けさせなければなりません。 第60条2 |
【安衛令】
第19条 職長を要する業種は、建設業、製造業(一部除く)、電気業、ガス業、自動車整備業、 機械修理業の6業種。 |
【安衛則】
第40条 職長教育の教育内容と時間は決まっています。 |