厚生労働省労働局長登録教習機関
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安衛法の定義で、事業者は労働者の労働災害の防止を行わなければならないと定められていました。
今回は、労働者の災害防止のための具体的な内容です。
まずは、労働災害防止を全社一丸となって、予防する組織体制についてです。
対象は、従業員(労働者数)が100人以上の大企業が対象です。
これは事業場の規模なので、1つの支店、1つの工場、1つの工事現場で、常時100人以上が働いている場合に必要となる体制です。
組織が大きくなれば、それだけ義務も増えるということですね。
「総括安全衛生管理者」
100人以上の労働者が働いている事業場では、総括安全衛生管理者を置かなければなりません。
総括安全衛生責任者とは、何か?
安衛法第10条に規定されています。
【安衛法】
労働者数が多くなると、業務内容も多岐にわたるとともに、安全管理も各ラインでバラバラに行うようになってしまいます。
そうした場合、ラインは自分たちの仕事に専念します。その結果十分な安全対策をとるラインもあれば、大雑把なところもでてきます。
全体を俯瞰で見て、事業全体の安全の指揮をとる必要が出てきます。
それが総括安全衛生管理者です。
総括安全衛生管理者は、事業者の安全衛生のトップです。
原則専任ですので、他の仕事で手一杯になって、安全衛生対策が後回しということは許されません。
全ての安全衛生の責任者。それが総括安全衛生管理者です。
しかし自身で実務を行うわけではありません。実務は安全管理者や衛生管理者といった人が行います。
総括安全衛生管理者の業務は、安全管理者や衛生管理者などを指揮して、事業場全体の安全衛生を管理することなのです。
よく安全担当の役員さんなどが就かれているのを目にしたりします。
ちなみに、「第25条の2第2項の規定」について触れておきます。
第25条の2は、建設業等で、トンネル工事や圧気工法で作業する時には救護体制を整えなければならないという内容です。
2項には、このような内容が書かれています。
2 前項に規定する事業者は、厚生労働省令で定める資格を有する者の うちから、厚生労働省令でさだめるところにより、同号各号の措置のうち 技術的事項を管理する者を選任し、その者に当該技術的事項を 管理させなければならない。 |
トンネル工事などの危険が大きな工事は、技術者を配置しなければなりません。
総括安全衛生管理者は、特に危険な工事にも十分に注意を払わなければならないということですね。
総括安全衛生管理者を選任しなければしけないのは、全ての事業場ではありません。
中小の企業で、安全専門の人を配置することなど、人手的にもコスト的にも不可能です。
ある一定以上の規模で、配置しなくてはいけません。
それが、条文中にある、「政令で定める規模の事業場ごと」というものです。
これは、安衛令第2条で規定されています。
【安衛令】
配置する要件の規模は職種ごとに異なります。
これは1つの事業で常時働いている労働者の人数となります。
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業は100人以上。
製造業、電気業、ガス業、熱供給業その他は300人以上。
上記以外だと1,000人以上。
林業他5業は、最も少ない人数で総括安全衛生管理者を必要とします。
これは労災が多いからです。
林業、鉱業、建設業は危険が多い仕事だとなんとなく分かると思います。
運送業は、長距離のトラック運転で事故など、交通事故と隣り合わせです。
清掃業は、家庭だけでなくビル清掃などであれば高所で作業しますし、ゴミ収集であれば交通事故の危険もあります。
実は第3次産業の中で清掃業は、2番目に死傷事故多いんですよ。
300人規模で、総括安全衛生管理者を配置する業種は、比較的危険がある仕事ですね。
1,000人規模のものは、銀行業や金融、IT関係など、比較的デスクワークが多い職種が含まれます。
危険な作業が含まれる職種ほど、安全体制を整える要件が厳しいということです。
さて、総括安全衛生管理者の仕事は、安衛法第10条にあるように、安全管理者、衛生管理者等を指揮して、安全や衛生管理を行うとありますが、その補足内容等が安衛則第2条から第3条に書かれています。
【安衛則】
(総括安全衛生管理者の代理者) 第3条 事業者は、総括安全衛生管理者が旅行、疾病、事故その他 やむを得ない事由によって職務を行なうことができないときは、 代理者を選任しなければならない。 |
(総括安全衛生管理者が統括管理する業務) 第3条の2 法第10条第1項第5号の厚生労働省令で定める業務は、 次のとおりとする。 1)安全衛生に関する方針の表明に関すること。 2)法第28条の2第1項の危険性又は有害性等の 3)安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び |
第2条では、総括安全衛生管理者は、事由の発生、つまり要件を満たす人数を超えてから、14日以内に選任しなければいけませんということです。
要件を満たす人数というのは、林業、鉱業、建設業等であれば、事業所の労働者数が100人になった段階でですね。そこから14日以内、つまり2週間以内に総括安全衛生管理者を選任しなければならないということです。
総括安全衛生管理者を選任したら、遅滞なく所轄の労働基準監督署に報告しなければなりません。
所定の様式(様式第3号)は、こちらです。
厚生労働省「 安全衛生関係主要様式」
選任にあたり、次の点に注意です。
総括安全衛生管理者の選出は、事由の発生から14日以内にしなくてはいけません。
所轄労働基準監督署への報告は、選任後、遅滞なく、つまり決まったら、すぐに報告しなくてはいけません。
所轄労働基準監督署への報告が14日以内というわけではないことが注意です。
さて、総括安全衛生管理者も他の労働者と同じように夏休みなど休暇をとります。
また時には、本人が病気や事故にあうこともあります。
その間に事業場が稼働している場合にも、労災の危険性はあるので、責任者は必要になります。
そのため、総括安全衛生管理者が不在の間は、代理人を選ばなければなりません。
これは安全管理者や衛生管理者、または別の管理職の人がなることが多いようです。
総括安全衛生管理者の代理人は、労働基準監督署へ報告する必要はありません。
業務については、安全衛生の方針や計画、実施、評価、改善のQCサークルを元にした管理などです。
2)法第28条の2第1項については、次のとおりです。
事業者は、危険で健康に有害な作業を行う場合は、必要な調査を行わなければならないのですが、その指揮を総括安全衛生管理者が取らなければならないということですね。
事業者の安全衛生のトップで総括管理をする人。それが総括安全衛生管理者です。
まとめ。
【総括安全衛生管理者について】
【安衛法】
第10条 事業者は、業種規模ごとに総括安全衛生管理者を 選任しなくてはいけません。 総括安全衛生管理者は、安全衛生に関する 統括管理をとらなければなりません。 |
【安衛令】
第2条 総括安全衛生管理者を選任する、職種ごとの規模を決めています。 |
【安衛則】
第2条 総括安全衛生管理者は、選任事由が発生してから、14日以内に選任すること。 選任したら、所轄労働基準監督署に報告すること。 |
第3条 総括安全衛生管理者は、安全衛生管理の指針の表明、計画、実施、評価、改善等の業務を行う。 |
文章中に[100人を超える労働者が働いている事業上・・・]という表現がありますが、100人を超えるというのは101人からを意味します。
100人以上というのとは違います。事業上は事業場の間違いは愛嬌ですが。
コメントありがとうございます。
そうですね。「100人以上の事業場」なので、100人を含みます。
該当の文章を訂正しておきました。あわせて、事業場の誤字も訂正しておきました。