厚生労働省労働局長登録教習機関
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総括安全衛生管理者は、100人以上の労働者を使用する事業場で、安全衛生管理全体を管理する人です。
全体の管理者なので、実務を行うわけではありません。
実際に行うのは、別の人になります。
安全管理の実務を行う管理者、それが安全管理者です。
「安全管理者」
総括安全衛生管理者の下で実務を行う人として、安全管理者がいます。
安全管理者は、安衛法第11条に規定されています。
安全管理者は、総括安全衛生管理者が管理する事項の内、安全に関する「技術的事項の管理」を行わなければなりません。
つまり実質的に安全管理の実務を行う人ですね。事業場の安全は、安全管理者が担っています。
具体的に、どんな業務を行うのか。簡単に羅列すると次のようなことです。
(1) | 建設物、設備、作業場所又は作業方法に危険がある場合の 応急措置及び防止の措置。 特に設備新設時や新生産方式採用時には安全面の検討が必要。 |
(2) | 安全装置、保護具その他危険防止のための設備や器具の定期的点検と整備。 |
(3) | 作業の安全教育及び訓練の実施。 |
(4) | 災害が発生した場合は、原因の調査。 今後の対策の検討。 |
(5) | 火災や災害時の消防、避難訓練の実施。 |
(6) | 作業主任者、その他安全に関する補助者への指導、監督。 |
(7) | 安全に関する資料の作成、収集及び記録。 |
(7) | 一つの事業の労働者が行う作業が、他の事業の労働者が行う作業と 同一の場所において行われる場合には、その安全対策及び措置。 |
また安衛法第3条の2の業務も総括安全衛生管理者とともに、または指揮を受けて行うことも含まれます。
事業所内で行われる安全対策の立案、実施、記録やフォローと多岐にわたります。
中でも点検と教育は重要な業務だと言えます。
個々の業務について、掘り下げることは今後の機会にまわします。
安全管理者の選出人数は決まっていませんが、1人当てることが多いと思います。
実務を担当する人なので、安全管理に関する能力が求められます。
能力が十分でなければ、安全対策も不十分で、事故を起こしてしまったり、再発防止対策もしっかり施されていないということもあります。
事業所が配置した安全管理者では安全管理に支障があると所轄労働基準監督署が判断した場合には、特別な措置をとることができると2項で規定しています。
所轄労働基準監督署は、安全管理者の解任や増員を命ずることができます。 事業者の組織体制に対してですが、命令という形で関与できるということです。
注意点として、総括安全衛生管理者に対しては、解任や増員の命令はできないので、その点は注意する必要があります。
さて、安全管理者も事業場の規模により、選任要件があります。
選任する事業場規模は安衛令第3条に規定されています。
(安全管理者を選任すべき事業場) 第3条 法第11条第1項の政令で定める業種及び規模の事業場は、 前条第1号又は第2号に掲げる業種の事業場で、 常時50人以上の労働者を使用するものとする。 |
安衛令第2条では、総括安全衛生管理者を選任すべき事業場と人数規模が書かれていましたが、安全管理者は、1項(5業100人以上)と2項(300人以上)の事業場について、50人以上で選任しなくてはいけません。
選任の要件は一律50人なので、総括安全衛生管理者との区別が必要です。
総括安全衛生管理者と安全管理者はセットではありません。
安全管理者だけでは、全体を見渡すのが困難になったので、より高い視点から全体を把握する立場の人が総括安全衛生管理者ということです。
この人数差があるので、総括安全衛生管理者はいなくて、安全管理者が事業場の安全管理のトップというところもあるわけですね。
さて、安衛則第4条から第6条には、安全管理者についての細かな規定が書かれています。
(安全管理者の資格) 第5条 法第11条第1項の厚生労働省令で定める資格を有する者は、 次のとおりとする。 1)次のいずれかに該当する者で、法第10条第1項各号の イ 学校教育法による大学(旧大学令)による大学を含む。 ロ 学校教育法による高等学校(旧中等学校令)による 2)労働安全コンサルタント 3)前2号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者 |
(安全管理者の巡視及び権限の付与) 第6条 安全管理者は、作業場等を巡視し、設備、作業方法等に危険のおそれが あるときは、直ちに、その危険を防止するため必要な措置を 講じなければならない。 2 事業者は、安全管理者に対し、安全に関する措置をなし得る |
第4条では、安全管理者を専任するにあたっての決まりが書かれています。
まず、総括安全衛生管理者と同様に、選任する事由があったら、つまり労働者数が50人以上になってから14日以内に選任しなけばいけません。
第2項に「第2条第2項及び第3条の規定は、安全管理者について準用する。」とあるので、所轄労働基準監督署に、遅滞なく選任報告をしなくてはいけません。
安全管理者は、各事業所で専属の人を選任しなくてはいけませんが、2人以上の場合、2人の内1人は他の事業所と兼任できます。労働安全コンサルタントが安全管理者になる場合は、この規定になるわけですね。
安全管理者の人数ですが、基本的には事業所の任意です。
3)では都道府県労働局の指定事業所については、別途定める人数を選任しなければなりません。
また所轄労働基準監督署の命令により、増員するということはありますね。
さて、安全管理者は専任義務はありません。つまり他の仕事をしつつ、安全管理の仕事をしてもよいことになっています。
ただし、業種によっては、労働者の人数規模により、安全管理の仕事に専念しなくてはいけなくなります。
それが、4)の規定ですね。300人以上の建設業であれば、1人は専任安全管理者が必要ということです。
注意点は、4)の項目は専任要項であり、人数を増やせということではないということです。
第5条は、安全管理者に就くことができる資格についてです。
安全管理者は、理系の大学以上を卒業、かつ2年以上の実務経験、理系の高校卒業で、かつ4年以上の実務経験、または労働安全コンサルタント資格があれば就くことができます。
安全は工学的なアプローチがあるので、理系なんですね。
第6条では、安全管理者の仕事内容について規定しています。
基本的には、事業場の安全管理なのですが、現場を見なければどこが危険か分かるはずもないので、現場を巡視して、対策をとりなさいというと、わざわざ明記しています。
事業者としても、安全管理者に安全に関する権限を与えなければならないというのは、分かりますね。
事業場を巡視する際、場合によっては、ラインを止めて対策する必要があるわけですから、相当な権限がなければ、何もできません。だからこそ、事業者がその権限を担保しなくてはいけないということですね。
今回は「総括安全衛生管理者」と「安全管理者」という、大規模事業場での安全管理体制についてまとめました。
特に安全管理者は、事業者にとっても労働者にとっても、労災防止の要です。
安全管理は、生産しない部門なので、事業者にとっては主要でないと思いがちかもしれません。
しかし、安全なくしては生産などありません。
事故が起これば、製品どころか、災害にあった人も事業者にとっても大きな損害に成ります。
安全管理も、他の部門と同様にスペシャルな仕事なのです。
安全管理者の仕事が、全ての労働者の、全ての労働者の家族の日常を支えているといっても過言ではありません。
今日、全ての人が無事に帰れるのは、安全管理者、そしてその安全管理者を指揮する総括安全衛生管理者のおかげなのです。
つまり安全管理者は、製品ではなく、事情場全ての人の日常を生産していると言えるのです。
ぜひ、声高にそう言いたいと思います。
この他にも衛生管理体制などもありますが、これは次回まとめます。
まとめ。
【安衛法】
第11条 事業者は、業種規模ごとに安全管理者を選任して、 安全管理の技術的事項を管理させなければなりまえせん。 所轄労働基準監督署は、必要があれば、安全管理者の解任、 増員の命令ができます。 |
【安衛令】
第3条 安全管理者は50人以上の事業場で選任します。 |
【安衛則】
第4条 安全管理者は、選任事由が発生してから、14日以内に選任すること。 少なくとも1人は専属すること。 一定の業種や規模によっては専任しなくてはいけません。 |
第5条 安全管理者になるには、一定の資格と実務経験が必要です。 |
第6条 安全管理者は、事業場を巡視して、危険箇所の発見と対策など 技術的事項の管理をしなくてはいけません。 |