コラム

厚生労働省労働局長登録教習機関
北海道・宮城県・岩⼿県・福島県・東京都・⼤阪府・福岡県
事業所は労働者が安全で快適に働いてもらうためには、相応の環境を提供しなくてはならないと、安衛法第2条では規定しています。
「衛生管理者」
総括安全衛生管理者はその全ての責任を負い、安全管理者は労働者の安全な職場環境作りを担います。
快適な環境、これを担うのが衛生管理者です。
有害物がある、不潔、不衛生な環境だと、心身ともに病んでしまいます。
衛生管理者は、総括安全衛生管理者の指導のもと、労働者の健康についての実務を行います。
衛生管理者についての規定は、安衛法第12条にあります。
【安衛法】
衛生管理者は、安全管理者と同様に総括安全衛生管理者が管理する事項の内、衛生に関する「技術的事項の管理」を行います。
つまり事業場の衛生環境は、衛生管理者が担い、快適にしていくわけです。
具体的に、どんな業務を行うのか。安全管理者と同様に簡単に羅列すると次のようなことです。
(1) | 労働者で健康に異常がある者の発見及び処置。 |
(2) | 作業環境について衛生上の調査の実施。 |
(3) | 作業条件、施設等の調査結果を踏まえ、衛生上の改善措置。 |
(4) | 労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備。 |
(5) | 衛生教育の実施。健康相談その他の労働者の健康保持に関する措置。 |
(6) | 労働者の負傷及び疾病、それによる死亡、欠勤及び移動に 関する統計の作成。 |
(7) | 一つの事業の労働者が行う作業が、他の事業の労働者が行う作業と 同一の場所において行われる場合には、その衛生対策及び措置。 |
(7) | その他、衛生日誌の記載等職務上の記録の整備等。 |
また安全管理者と同様に、安衛法第3条の2の業務も含まれます。
衛生管理者もどの事業場でも選任するわけではありません。
「政令で定める規模の事業場ごと」とあるため、労働者の人数によります。
この政令は、安衛令第4条に規定されています。
【安衛令】
(衛生管理者を選任すべき事業場) 第4条 法第12条第1項の政令で定める規模の事業場は、 常時50人以上の労働者を使用する事業場とする。 |
原則、50人以上の労働者を使用する事業場では、衛生責任者を選任しなくてはいけません。
さて、安全管理者も業種と人数によって、専任とするなどの条件がありました。
衛生管理者も業種により、選任条件が変わってきます。
安全管理者との違いは、業種により必要とされる資格が異なること、そして人数により衛生管理者の人数が変わることです。
安衛則にその条件等が規定されているので、見て行きましょう。
【安衛則】
(衛生管理者の選任の特例) 第8条 事業者は、前条第1項の規定により衛生管理者を選任することが できないやむを得ない事由がある場合で、所轄都道府県労働局長の 許可を受けたときは、同項の規定によらないことができる。 |
(共同の衛生管理者の選任) 第9条 都道府県労働局長は、必要であると認めるときは、地方労働審議会の 議を経て、衛生管理者を選任することを要しない2以上の事業場で、 同一の地域にあるものについて、共同して衛生管理者を 選任すべきことを勧告することができる。 |
(衛生管理者の資格) 第10条 法第12条第1項の厚生労働省令で定める資格を有する者は、 次のとおりとする。 1)医師 |
(衛生管理者の定期巡視及び権限の付与) 第11条 衛生管理者は、少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、 設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、 直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を 講じなければならない。 2 事業者は、衛生管理者に対し、衛生に関する措置を |
(衛生工学に関する事項の管理) 第12条 事業者は、第7条第1項第6号の規定により選任した 衛生管理者に、法第10条第1項各号の業務のうち衛生に係る 技術的事項で衛生工学に関するものを管理させなければならない。 |
衛生管理者の選任も、総括安全衛生管理者や安全管理者と同様に、事由発生後、14日以内に選任しなければいけません。そして選任後は、遅滞なく所轄労働基準監督署に報告しなくてはいけません。
1人は専属としなくてはいけないというのも、安全管理者と同じです。
ただし第9条では、例外的に同一の地域であれば、共同の衛生管理者として選任することができます。
この場合は都道府県労働局長が認める場合ですが、条件としては「地方労働審議を経る」、「いずれも衛生管理者を必要としない事業場」などがあるため、基本的には、50人を超えた事業業は専属の衛生管理者が必要と考えたほうがよさそうです。
安全管理者と異なる点は、衛生管理者は実務年数ではなく、一定の資格所有でなければ就けないということです。そして業種によっては、必要される資格が若干異なります。
第7条1項3)について表にまとめます。
ロ その他の業種 第一種衛生管理者免許、
第二種衛生管理者免許
若しくは衛生工学衛生管理者免許を有する者
又は第10条各号に掲げる者
イ | 農林畜水産業、鉱業、建設業、 製造業(物の加工業を含む。)、 電気業、ガス業、水道業、熱供給業、 運送業、自動車整備業、機械修理業、 医療業及び清掃業 |
第一種衛生管理者免許 若しくは衛生工学衛生管理者免許を有する者 又は第10条各号に掲げる者 |
イは安全管理者選任の業種とは若干異なりますが、人数に関わらず衛生環境を気をつけなければならない業種になっています。
イとロで異なる点は、イは第二種衛生管理者資格では就けないということです。
イの業種に就ける資格者は、第一種衛生管理者、衛生工学衛生管理者、医者、歯科医師、労働衛生コンサルタントなどです。
第一種衛生管理者資格と第二種衛生管理者資格では何が違うかというと、有害作業に関する衛生管理が含まれるかです。イの業種には、ガスや粉塵、有機溶剤などを扱うものも含まれるのです。
衛生管理者資格を受験する際には、注意が必要ですね。
さて、衛生管理者は事業所内の労働者数によって、選任する人数が異なります。
労働者の人数が多ければ多いほど、衛生管理者の選任人数も増えていきます。
事業場の規模 (常時使用する労働者数) |
衛生管理者数 |
50人以上 200人以下 | 1人 |
200人を超え 500人以下 | 2人 |
500人を超え 1,000人以下 | 3人 |
1,000人を超え 2,000人以下 | 4人 |
2,000人を超え 3,000人以下 | 5人 |
3,000人を超える場合 | 6人 |
事業場の規模が大きくなれば、その分衛生管理者も必要になるわけですね。
また、安全管理者と同様に、人数規模により1人を専任させなければなりません。
常時1,000人を超える労働者を使用する事業場 | 常時500人を超える労働者を使用する 事業場で、坑内労働又は労働基準法施行規則 第18条各号に掲げる業務に常時30人以上の 労働者を従事させるもの |
1,000人を超えるの労働者を使用する事業場はわかりますね。
もう1つの要件については、説明が必要になると思います。
まず500人を超える労働者を使用する事業場で、次の仕事に常時30人以上が従事している事業場です。
・坑内労働
・次の労働基準法施行規則第18条各号に掲げる業務
1.多量の高熱物体を取り扱う業務及び 著しく暑熱な場所における業務
2.多量の高熱物体を取り扱う業務及び 著しく暑熱な場所における業務
3.多量の低温物体を取り扱う業務及び 著しく寒冷な場所における業務
4.ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
5.土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
6.異常気圧下における業務
7.削岩機、鋲打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務
8.重量物の取扱い等重激なる業務
9.ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
10.鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、
塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、
青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる
有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務
11.その他厚生労働大臣の指定する業務
事業場の全労働者が500人を超えて、なおかつ上記業務の従事者30人以上が常時いる場合です。
上記業務が30人であっても、事業場の労働者が400人なら専任要件はありません。
さて、上記の労働基準法施行規則第18条各号に掲げる業務の一部(1号、3号、4号、5号、9号)については、同条の6)で特に資格要件が規定されています。人数要件は同じく、500人を超える労働者を使用する事業場で、次の仕事に常時30人以上が従事している事業場です。
・坑内労働
・次の労働基準法施行規則第18条各号に掲げる業務
1.多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
3.ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
4.土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
5.異常気圧下における業務
9.鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、
塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、
青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる
有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務
これらの条件では、衛生管理者のうち1人を衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任しなくてはいけません。 有害で労働者の健康被害が出る可能性が高い場所では、より高度な衛生管理の知識と技能が求められるわけです。
その他は、安全管理者と同様なので、さらっと書きます。
衛生管理者には権限をあたえること。
衛生管理者は、少なくとも1周間に1回は作業場を巡視して、事業場の衛生管理と労働者の健康管理を行わなければいけないということですね。
さて、条文には特に書かれているわけではないのですが、近年衛生管理者としても重要な業務として、労働者のメンタルヘルス・マネジメントがあります。
ブラック企業というものが取り沙汰されていますが、そういった企業にかぎらず、鬱など精神面での健康管理が重視されています。
注意しなくては発見できない症状ではありますので、各種勉強会や講習等で学ぶことも今後の重要な仕事になると思います。
年齢を重ねてくると、話題として健康が上位に上がってきます。
40歳を過ぎると、どこかしら体に不調があったりと、関心が高まるものです。
一家の稼ぎ手が病気などになると、かなり大変だというのは想像に固くありません。
衛生管理者は、総括安全衛生管理者のもとで、労働者の健康と職場の環境を守る人です。
よほど切羽詰まった理由がなければ、健康を損なうリスクを抱えてまで、その職場で働きたいと思わないでしょう。
衛生管理者の責任は、重大です。
風邪をひいても、健康のありがたみを感じます。
たかが風邪でもです。
これが深刻な病気ともなると、その価値は計り知れません。
家族は、働きに出ている人が怪我なく、病気なく帰ることを信じています。
衛生管理者は、安全管理者と同様、その一翼を担っているのです。
まとめ。
【衛生管理者について】
【安衛法】
第12条 事業者は、業種規模ごとに衛生管理者を選任しなければいけません。 |
【安衛令】
第4条 衛生管理者は50人以上の事業場で選任すること。 |
【安衛則】
第7条 衛生管理者は、選任事由が発生してから、14日以内に選任すること。 一定の有害業務等では1人は衛生工学衛生管理者免許を選任すること。 人数は規模により選任する人数の規定あり。 1,000以上、または500人以上で有害な業務に従事するものが常時30人以上の事業場では、1人は専任する必要あり。 |
第8条 やむを得ない事業がある場合は、所轄都道府県労働局長の許可を得て、 衛生管理者の選任を免除できる。 |
第9条 所轄都道府県労働局長が必要と認めた場合、審議を経て、 同一地域の、2つの選任要件のない事業場で衛生管理者を兼任できる。 |
第10条 衛生管理者に就任できる資格は、医師、歯科医、労働衛生コンサルタント等。 |
第11条 衛生管理者に週1回作業場を巡回して、改善指導などを行う。 事業者は、衛生管理者に必要な権限を与えなければならない。 |
第12条 衛生管理者に週1回作業場を巡回して、改善指導などを行う。 事業者は、衛生管理者に必要な権限を与えなければならない。 |
いつも参考にさせていただいております。
人数要件の表の「500人以上1,00人以下」という表記は、誤植かと思います。
また、「50人以上200人以下で1人」「200人以上500人以下で2人」という表示では、ちょうど200人の場合はどちらになるのでしょうか?
実務に影響はありませんが、少し気になりましたので。
コメントありがとうございます。
ご指摘のとおりです。
以上ではなく、超えるですね。
超えるですから、当の数字は含んでいませんね。
500人超えるは、501人以上となります。
修正しました。
ご指摘いただき、ありがとうございます。