厚生労働省労働局長登録教習機関
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衛生管理者は、事業場の衛生管理についての技術的事項の管理を行う人です。
健康的で、衛生的な職場環境を作るのが仕事です。
「産業医」
しかし、労働者の健康管理について、専門的に把握できるわけではありません。
有機溶剤を使う、粉塵が満ちている、騒音や振動を浴びる環境での仕事。
健康にどんな影響があるのか不安ですよね。
健康管理に最も適した人は、どういう人か?
それは言うまでもなく、お医者さんですね。
お医者さんに協力してもらうのが、あれこれ検討するより確実です。
それに労働者が健康に不安がある仕事をしているといって、自発的に病院に行くともなりにくいと思います。病院に行ったら、すでに病気が進行していた、ということも珍しくありません。
健康被害の可能性がある業務に従事させているのは事業者なので、事業者が労働者の健康管理に責任があります。
一定以上の規模の事業場では、労働者の健康管理について、医師に協力、指導してもらうことが義務付けられています。これを「産業医」の選任といいます。
産業医については、安衛法第13条に規定されています。
【安衛法】
第13条の2 事業者は、前条第1項の事業場以外の事業場については、 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を 有する医師その他厚生労働省令で定める者に労働者の 健康管理等の全部又は一部を行わせるように努めなければならない。 |
産業医は、労働者の健康管理を行います。
そして措置が必要な場合は、事業者に対しても指導を行います。
産業医の指導には、事業者は従わなければなりません。
産業医に健康管理を行わせるのは、全ての事業場ではありません。
衛生管理者等と同様に、労働者の人数規模によります。
人数については、安衛令第5条に規定されています。
【安衛令】
(産業医を選任すべき事業場) 第5条 法第13条第1項の政令で定める規模の事業場は、常時50人以上の 労働者を使用する事業場とする。 |
産業医は業種関係なく、労働者の人数が常時50人以上の事業所で選任しなくてはいけません。
さて、その他の要件や業務内容については、安衛則に規定されています。
【安衛則】
(産業医の定期巡視及び権限の付与) 第15条 産業医は、少なくとも毎月1回作業場等を巡視し、作業方法又は 衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の 健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。 2 事業者は、産業医に対し、前条第1項に規定する事項を |
第13条ですが、産業医も衛生管理者等と同様に、選任する事由が発生してから、つまり労働者数が50人以上になってから、14日以内に選任しなくてはいけません。また選任後は、遅滞なく、所轄労働基準監督署に報告しなくてはいけません。
事業場の規模や一定の業種によっては、事業場専任の産業医を置かなけばなりません。
常時1,000人を超える労働者を使用する事業場 | 次に掲げる業務に常時500人以上の労働者を 従事させる事業場 イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び ハ ラジウム放射線、エックス線その他の ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を ホ 異常気圧下における業務 ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によって、 ト 重量物の取扱い等重激な業務 チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する リ 坑内における業務 ヌ 深夜業を含む業務 ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、 ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、 ワ 病原体によって汚染のおそれが著しい業務 カ その他厚生労働大臣が定める業務 |
衛生管理者の専任条件と似ていますが、1,000以上の労働者、または常時500人以上が有害な業務に就いている場合となります。
さて、産業医の人数ですが、3,000人を超えたら、2人以上の選任しなくてはいけません。この場合1人は専任なので、さらにもう1人置かなければならないということですね。
第14条は業務内容についてです。
健康診断等で労働者の診察、相談を受ける、病気の予防など、労働者の健康に関すること一切合切、また作業環境や作業方法など労働者の健康を害することがないように、環境改善や作業改善の指導や助言を行うなどです。
とにかく労働者の健康管理のためのありとあらゆることです。
産業医に就任する要件は、医師や歯科医でなくとも満たすことはありますが、やはり専門の医師等に管理してもらうのが、事業者にとっても、労働者にとってもメリットはあります。
事業者にとっては、医者と契約するわけですから、莫大なコストがかかる点がデメリットがあると思います。
しかし産業医を必要とする規模ならば、必要なコストであると割りきらないといけません。
選任しなかったら、罰則規定もあるので、注意が必要です。
第15条は、産業医の権限等ですね。産業医は少なくとも月1回事業場を見て回り、作業方法に問題ないかを医師の立場で確認します。問題がある場合は、直ちに処置するように指導します。事業者は、この指導には従わなければなりません。
さて産業医を必要とするのは、労働者数が常時50人以上の事業場です。
それよりも人数の少ない事業場では、医師の診断は不要でしょうか?
そんなことはありませんね。
第16条は、50人未満の事業場も医師による健康管理は必要だと言っています。ただし産業医を選任するのではなく、外部の団体を利用するなどできますということです。
人数は少なくとも有害な作業を行うことはあると思いますので、健康診断はもとより、定期的に病院で診察を受けさせるなどの対策が必要です。
産業医は、労働者の健康保持のスペシャリストです。
必要に応じて、医者に診断してもらえるだけでも、労働者にとっては安心なものだと思います。
健康は全ての資本になります。
健康は損なって初めてありがたみを感じますが、そうなった時には手遅れの場合もすくなくありません。
近年アスベストによる中皮腫で裁判がありますが、有害な作業には多大なリスクがあるのです。
労働で健康を損なうのは、事業者にとっても、本人とその家族にとっても望ましいことではないのですから、損なわないように十分な対策が必要ですね。
衛生管理者、産業医は、労働者の健康を守る要なのです。
さて、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医は多数の労働者が働く事業所で、必要とされています。ほとんどが大企業での話になると思います。
しかし、世の中には中小企業の方が多いのです。
こういった事業所では、安全衛生管理は不要でしょうか?
もちろん、そんなことはありません。
また別の体制が備えなければななりません。
小規模事業所の体制については、また別の機会でまとめます。
まとめ。
【安衛法】
第13条 事業者は、規模ごとに産業医を選任しなければいけません。 |
【安衛令】
第5条 産業医は50人以上の事業場で選任します。 |
【安衛則】
第13条 衛生管理者は、選任事由が発生してから、14日以内に選任すること。 1,000以上、または500人以上の事業場では、1人は専任する必要あり。 3,000以上の事業場では、2人選任すること。 |
第14条 産業医の業務内容について。 |
第15条 産業医に月1回作業場を巡回して、改善指導などを行う。 事業者は、衛生管理者に必要な権限を与えなければならない。 |
第15条の2 産業医を選任する規模に満たない事業場も、外部の団体等を利用し、 医師による健康診断等を行うこと。 |