厚生労働省労働局長登録教習機関
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事業所では安全管理者等の安全衛生管理体制を整備し、事業所全体としての労働者の労災を防がなくてはいけません。
事業所全体としての安全活動は、安全衛生目標を立案、実施し、評価、改善といった一連の流れの中で行います。
広い範囲を管理しなくてはいけないため、個別のライン、個別の作業場、個別の作業となると、とてもではないですが、見ることはできません。
それらのラインや作業場の単位であれば、職長等の現場責任者が防災に務めることになります。
通常の作業であれば、それで問題ありません。
しかし、作業の中には、最初から危険であることが分かっているが、やらなければならない作業もあります。
一歩間違えれば、大怪我をしたり、時には死亡したり、また健康を損ないかねない仕事です。
そんな作業もあるんです。
そのような作業を行う場合、労働者の事故を防止するため、または健康被害を防止するために、指揮する人が必要になります。
それが「作業主任者」です。
作業主任者については、安衛法第14条に規定されています。
【安衛法】
特に労働災害の危険性がある作業については、免許もしく技能講習を修了した資格を持つ、作業主任者を選任して、労働者を指揮させなければなりません。
労働災害の危険性がある作業の従事について、以前特別教育を必要とする作業や、就業制限のある作業を紹介しました。
これらの内、制限のある作業を行うためにも免許や資格を必要としましたが、作業主任者になるために必要な資格も同じものです。
ですから、就業制限のある作業の多くは、一部を除いて作業主任者を必要とします。
具体的に、どんな作業で作業主任者を必要とするのか。
それは、安衛令第6条に規定されています。
【安衛令】
ざっと数えて全部で33あります。こんなにもあるんですね。
作業主任者を必要とする作業は、危険や人体に有害な作業であると分かります。
作業に従事するためにも特別教育を必要としたり、資格を必要とする作業の指揮をとるのが作業主任者ということです。
そして一覧を見てもらえれば気づくかと思いますが、建設関係の作業が非常に多いです。
それだけ、危険を伴う作業が多いのですが、建設業は資格ビジネスなんですね。
ただこれらの作業に従事する人がいなければ、インフラなんて整いません。
ビルを作っている人、河川で仕事している人などは、思っている以上に、すごいことをしているのです。
さて、作業主任者の選任については、安衛則で規定されています。
【安衛則】
(作業主任者の職務の分担) 第17条 事業者は、別表第1の上欄に掲げる1の作業を同一の場所で行なう 場合において、当該作業に係る作業主任者を2人以上選任したときは、 それぞれの作業主任者の職務の分担を定めなければならない。 |
(作業主任者の氏名等の周知) 第18条 事業者は、作業主任者を選任したときは、当該作業主任者の 氏名及びその者に行なわせる事項を作業場の見やすい箇所に 掲示する等により関係労働者に周知させなければならない。 |
第16条では、作業主任者を必要とする作業と資格について、別表1でまとめているとしています。
別表1は下記でまとめます。
第17条では、同一の場所で複数の作業主任者を選任したら、役割分担を決めなさいということです。
第18条では、作業主任者の氏名を作業場を掲示して、関係者に周知しないさいということです。当然関係労働者は、該当作業を行うときには、作業主任者の指示に従わなければなりません。
さて、別表1をまとめます。
作業の区分 | 資格を有する者 | 名称 |
---|---|---|
令第6条第1号の作業 | 高圧室作業主任者免許を受けた者 | 高圧室内作業主任者 |
令第6条第2の作業 | ガス溶接作業主任者免許を受けた者 | ガス溶接作業主任者 |
令第6条第3号の作業 | 林業架線作業主任者免許を受けた者 | 林業架設作業主任者 |
令第6条第4号の作業のうち 取り扱うボイラーの伝熱面積の 合計が500平方メートル以上の 場合(貫流ボイラーのみを 取り扱う場合を除く。)における 当該ボイラーの取扱いの作業 | 特級ボイラー技士免許を受けた者 | ボイラー取扱作業主任者 |
令第6条第4号の作業のうち 取り扱うボイラーの伝熱面積 の合計が25平方メートル以上 500平方メートル未満の場合 (貫流ボイラーのみを取り扱う 場合において、その伝熱面積の 合計が500平方メートル以上の ときを含む。)における 当該ボイラーの取扱いの作業 | 特級ボイラー技士免許を受けた者 1級ボイラー技士免許を受けた者 | 同上 |
令第6条第4号の作業のうち取り扱う ボイラーの伝熱面積の合計が 25平方メートル未満の場合における 当該ボイラーの取扱い作業 | 特級ボイラー技士免許を受けた者 1級ボイラー技士免許を受けた者 2級ボイラー技士免許を受けた者 |
同上 |
令第6条第4号の作業のうち 令第20条第5号イからニまでに 掲げるボイラーのみを取り扱う作業 |
特級ボイラー技士免許を受けた者 1級ボイラー技士免許を受けた者 2級ボイラー技士免許を受けた者 ボイラー取扱技能講習を修了した者 |
同上 |
令第6条第5号の作業 | エックス線作業主任者免許を受けた者 | エックス線作業主任者 |
令第6条第5号の2の作業 | ガンマ線透過写真撮影作業主任者免許を受けた者 | ガンマ線透過写真撮影作業主任者 |
令第6条第6号の作業 | 木材加工用機械作業主任者技能講習を修了した者 | 木材加工用機械作業主任者 |
令第6条第7号の作業 | プレス機械作業主任者技能講習を修了した者 | プレス機械作業主任者 |
令第6条第8号の作業 | 乾燥設備作業主任者技能講習を修了した者 | 乾燥設備作業主任者 |
令第6条第8号の2の作業 | コンクリート破砕器作業主任者技能講習を修了した者 | コンクリート破砕器作業主任者 |
令第6条9号の作業 | 地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習を修了した者 | 地山の掘削作業主任者 |
令第6条10号の作業 | 地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習を修了した者 | 土止め支保工作業主任者 |
令第6条10号の2の作業 | ずい道等の掘削作業主任者技能講習を修了した者 | ずい道等の掘削作業主任者 |
令第6条10号の3の作業 | ずい道等の覆工作業主任者技能講習を修了した者 | ずい道等の覆工作業主任者 |
令第6条11号の作業 | 採石のための掘削作業主任者 | 採石のための掘削作業主任者技能講習を修了した者 |
令第6条12号の作業 | はい作業主任者技能講習を修了した者者 | はい作業主任者 |
令第6条13号の作業 | 船内荷役作業主任者技能講習を修了した者 | 船内荷役作業主任者 |
令第6条14号の作業 | 型枠支保工の組立て等作業主任者技能講習を修了した者 | 型枠支保工の組立て等作業主任者 |
令第6条15号の作業 | 足場の組立て等作業主任者技能講習を修了した者 | 足場の組立て等作業主任者 |
令第6条15号の2の作業 | 建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者技能講習を修了した者 | 建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者 |
令第6条15号の3の作業 | 鋼橋架設等作業主任者技能講習を修了した者 | 鋼橋架設等作業主任者 |
令第6条15号の4の作業 | 木材建築物の組立て等作業主任者技能講習を修了した者 | 木材建築物の組立て等作業主任者 |
令第6条15号の5の作業 | コンクリート造の工作物の解体等作業主任者技能講習を修了した者 | コンクリート造の工作物の解体等作業主任者 |
令第6条16号の作業 | コンクリート橋架設等作業主任者技能講習を修了した者 | コンクリート橋架設等作業主任者 |
令第6条第17号の作業のうち化学設備に係る 第一種圧力容器の取扱いの作業 | 化学設備関係第一種圧力容器取扱作業主任者技能講習を修了した者 | 化学設備関係第一種圧力容器取扱作業主任者 |
令第6条第17号の作業のうち化学設備に係る 第一種圧力容器の取扱いの作業以外の作業 | 特級ボイラー技士免許を受けた者 1級ボイラー技士免許を受けた者 2級ボイラー技士免許を受けた者 化学設備関係第一種圧力容器取扱作業主任者技能講習を修了した者 普通第一種圧力容器取扱作業主任者技能講習を修了した者 |
第一種圧力容器取扱作業主任者 |
令第6条第18号の作業のうち、次の項に掲げる作業以外の作業 | 特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習を修了した者 | 特定化学物質作業主任者 |
令第6条第18号の作業のうち、令別表第3第2号3の3 若しくは19の2に掲げる物又は同号37に掲げる物で 同号3の3若しくは19の2に係るものに掲げる物を 製造し、又は取り扱う作業 | 有機溶剤作業主任者技能講習を修了した者 | 特定化学物質作業主任者(エチルベンゼン等関係) |
令第6条第19号の作業 | 鉛作業主任者技能講習を修了した者 | 鉛作業主任者 |
令第6条第20号の作業 | 特定化学物質及び四アルキル鉛等 作業主任者技能講習を修了した者 |
四アルキル鉛等作業主任者 |
令第6条第21号の作業のうち、次の項に掲げる作業以外の作業 | 酸素欠乏危険作業主任者 酸素欠乏・硫化水素危険作業技能講習を修了した者 |
酸素欠乏作業主任者 |
令第6条第21号の作業のうち、令別表第6第3号の3、 第9号又は第12号に掲げる酸素欠乏危険場所 (同号に掲げる場所にあっては、酸素欠乏症に かかるおそれ及び硫化水素中毒にかかるおそれの ある場所として厚生労働大臣が定める場所に限る。) における作業 | 酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習を修了した者 | 酸素欠乏作業主任者 |
令第6条第22号の作業 | 有機溶剤作業主任者技能講習 | 有機溶剤作業主任者 |
令第6条第23号の作業 | 石綿作業主任者技能講習を修了した者 (平成18年以前の特定化学物質等作業主任者技能講習) |
石綿作業主任者 |
一覧の多くは、従事するにあたって、特別教育などを必要とする作業だと分かります。
必要とする資格は、大きく分けて2種類あるのが分かりますね。
高圧室、ガス溶接、林業架設、ボイラー、エックス線、ガンマ線での作業主任者は、免許が必要になります。
その他の作業では、技能講習を修了することで、作業主任者になることができます。
免許のほうが危険が大きいというわけではありません。
知識や経験などが一定以上身についていることを確認するためもあるのが、一応たてまえです。 あとは、外郭団体がどうのこうのや、利権云々なんてのもあるでしょうが。
ともかく、何かしらの経緯があり法律上区分されています。
いずれにせよ、作業する労働者自身の知識と技能に加え、作業全体をまとめ指揮しなければ、労働災害の可能性が高いんですね。
作業主任者が担うものは、単に作業の指揮だけではなく、労働者の命の安全であることが分かります。
労災事例を見ていると、表にある作業にあたって、作業主任者が選任されていない、もしくは選任されているが現場にいないという事故も、少なくありません。
たまたま作業場を外していたということもあるでしょう。
作業員だけならば、安全管理よりも作業効率を優先させる傾向があります。
なぜなら、早く仕事を進めたいから。
結果として、安全対策を疎かにすることも少なくありません。
また不測の事態が起こった時など、まとめる人がいなければ、にっちもさっちもいかなくなり、パニックにもなります。
作業主任者は、それをまとめ、効率的かつ安全に進めることが求められているのです。
大変な仕事ですが、それで事故なく無事に作業を終えること。その価値は計り知れません。
事業者自身も、こういった点を頭に置いておかなければなりませんね。
作業主任者を適切に配置するのは、事業者の義務です。
他の現場で手が足りないから、向かわせる。そんな状況もあると思います。
資格を取らせるのに費用が出せない。そんな状況もあると思います。
いつもいつも理想通り、というわけではありませんよね。
私の会社も同様の状況があるので、その気持というか状況は、ものすごく分かります。
でも、こんなブログを書いているのは、同時に危険な仕事での事故の悲惨さ、病気の苦しさをも思ってしまうわけです。
さて、作業主任者は現場ではどんな仕事を行うのか。
それは次回以降にまとめようと思います。
まとめ。
【安衛法】
第14条 事業者は、特定の作業を行うにあたって、免許または技能講習を 修了した者を、作業主任者として選任しなくてはなりません。 |
【安衛令】
第6条 作業主任者を選任しなくてはならない作業は、次の通り。 (いっぱいあります。) |
【安衛則】
第16条 作業主任者の選任にあたって必要な資格は、 別表1にまとめます。 |
第17条 事業者は、同一作業場で、2人以上の作業主任者を 選任する場合は、役割を決めなければなりません。 |
第18条 事業者は、作業主任者を選任したら、作業場の関係労働者に 周知しなくてはいけません。 |