厚生労働省労働局長登録教習機関
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化学物質の設備を提供する注文者は、作業を行う関係請負人の労働災害を防ぐために、措置を講じる必要がありました。
建設業の注文者も、特定の機械設備を使用させる場合に、また特別な措置を講じるよう規定されています。
これは安衛法第31条とも一部被ってっくるのですが、あえて別途条文として掲げられているのです。
これも背景には、重大な事故が起こったため、建設業の特定の機械を使用する注文者は、特に注意することとして、別途規定されたものだと思います。
特定の機械を用いた作業のことを、「特定作業」と言います。
建設業は、どうしても危険が伴う作業になります。
特定作業を行う場合には、その危険性は高まるのです。
今回は、建設業で、特定作業を関係請負人に注文する場合の措置は、安衛法第31条の3に規定されています。
【安衛法】
特定作業については、安衛則に規定されているので、後ほどまとめますが、特定作業を自ら行う発注者、または注文する場合問わず、必要な措置をとらなくていけません。
また設備を提供する注文者が複数いる場合は、1人を措置を講ずるものとして指名しなければなりません。
これは元方事業者等と同じですね。
また他の注文者と同様に、措置を講じなければならないのは、最も先次の注文者になります。
つまり、元方事業者、1次下請ともに施設を提供する場合は、元方事業者が措置義務を負い、1次下請けは義務はないということです。
その他の請負人は、協力して、事故防止に努めなければなりませんね。
さて、特定作業はどのような作業なのか、どのような措置を講じなければならないかは、安衛則にまとめられています。
【安衛則】
(法第31条の3第1項の厚生労働省令で定める機械) 第662条の5 法第31条の3第1項の厚生労働省令で定める機械は、 次のとおりとする。 1)機体重量が3トン以上の車両系建設機械のうち 2)車両系建設機械のうち令別表第7第3号1から3まで 3 )つり上げ荷重が3トン以上の移動式クレーン |
1号と2号では、安衛令別表7の機械を指定しているので、掲載します。
【安衛令】
以上のことから、特性作業の対象となる機械は、次のとおりですね。
1.機体重量3t以上の車両系建設機械(掘削用機械)
・パワー・ショベル
・ドラグ・ショベル
・クラムシェル
2.車両系建設機械(基礎工事用機械)
・くい打ち機
・くい抜き機
・アース・ドリル
・アース・オーガ
3.つり上げ荷重が3トン以上の移動式クレーン
掘削、基礎、移動式クレーンは、建設業では非常に多くの現場で使用します。
パワーショベルやドラグショベルは、大きなショベルカーのことです。
土を掘る、掘削するための機械で、用途は非常に広いです。
通常のショベルカーであれば、バケット部で土をすくい上げるのですが、クラムシェルはすくい上げるのではなく、2枚貝のようなバケットを持ち、土をつかむようにして掘ります。
クラムシェルは、機体より低い位置の土を掘るのに適しています。
基礎掘削などで使われます。
パワーショベル | クラムシェル |
基礎工事用の機械は、杭を打ち込んだり、基礎用の穴を掘り進むための機械です。
アースオーガー(基礎用機械) |
移動式クレーンは、タイヤやキャタピラがついていて、どこでも移動できるクレーンのことですね。
いわゆるクレーン車のことです。
移動式クレーン | 車載型移動式クレーン(ユニック車) |
市街地でもこれらの機械は使用しますので、もしかすると目にしたことはあるかもしれませんね。
ビルの建設工事などでは、必ずと言っていいほど、見かけるはずです。
これらの機械を使用する場合に、措置が必要になります。
では、措置について見て行きましょう。
1.機体重量3t以上の車両系建設機械(掘削用機械)等についての措置
27.くい打機等についての措置
28.移動式クレーンについての措置
パワーショベル等の運転を行う場合は、周辺で作業を行っている人に危険が及ばないようにしなければなりません。
車体重量が3t以上なのですから、かなりの大きさになります。
そんなものがぶつかったりすると、人であろうと、機械であろうと、ダメージは深刻です。
注文者(特定発注者と条文中で言われていますね)は、そんな事故を防止しなくてはいけません。
さていくつか、周辺で注意すべき作業があげられていますね。
吊り上げ作業用の玉掛けや誘導、その他の作業です。
玉掛けとは、クレーンなど吊り荷作業の時に、荷物をワイヤーなどでくくることです。この玉掛けは、荷物を高く吊り上げた時に、落下させないようにするため、重要な作業になります。
これらの作業を自社の労働者、または別の請負人の労働者が行っている側で、パワーショベルがパワフルに動いたり、くい打ち機が動いていたり、クレーン車が大きな荷物を吊り上げていたら、危なくて仕方ありません。
目前でゾウが暴れているような状況なので、その状況を想像してもらうと、危険度はわかるかもしれません。
そんな危険を回避するために、お互いの作業を把握するため、連絡調整を行わなければなりません。
また指示系統をはっきりさせるとともに、危険な場所であれば、立入禁止範囲も決めなければなりません。
大きな機械なので、その周辺での作業は、十分に気をつけなければなりません。
注文者は、周辺の安全を確保する義務があるのです。
注文者の責務と、元方事業者の責務とは似通っているものがあります。
建設業であれば、元方事業者、特定元方事業者、注文者、特定注文者など、わけが分からなくなるほどの措置義務があります。
あれもこれもだと混乱もしてしまいますね。
しかし1つ1つを整理していくと、そんなに特別なことではないと思いますし、関係労働者の安全を考えると、自然とやらなければならないものだと思います。
これだけの措置を執らなければならないのは、いかに事故が多いかということの証明だと思います。
しかも、これだけの対策を規定しているにも関わらず、事故をなくすことはできません。
また新たな要因による事故が出てきます。
そして、またその要因の対策を規定されるわけです。
しかし、事故は減ってきているのも事実です。
事故ゼロにするのは、かなり困難でしょう。もしかしたら無理かもしれません。
とはいえ、確実に減らすことは、できるのです。
それは、各現場での元方事業者の努力であり、関係請負人の努力であり、各労働者の努力であり、発注者の監督官の努力であり、労働基準監督署や厚生労働省の人たちの努力の結果であるといえます。
この努力を一層、結果に結びつけるのには、何があるでしょうか?
私が思うに、周囲の理解ではないかと考えます。
作業現場周辺の人々が、単なる義務を果たしているかという監視機能としてだけでなく、かっこいい仕事をしているんだなという理解ではないでしょうか?
傍から見ると、結構泥臭いような仕事をしているように見えますけど、実はものすごく高度で、かっこいい仕事をやっているんですよ。
しかも危険なことを、最大限危険を減らしていくという、知れば知るほどびっくりすることをやっています。
街中で、工事が邪魔だと思うことが多々あると思います。
そんな風に思われているのは、作業していると百も承知ですが、必要なことを細心の注意を払ってやっているのです。
もう一つ、最も強い安全モチベーションになるものは、家族からの理解ではないかと思います。
家族からの仕事の理解と、今日も無事に怪我なく、病気なく帰宅することへの期待があれば、あえて危険を犯そうとする人はいないのではないかと思います。
私はまだまだ拙さだらけのこのブログでの目的は、作業を行う人自身の安全意識が高まることと、家族の方の理解が高まればいいなと思っています。
街で見かける、またあなたの家族がされているお仕事は、とてもかっこいいのです。
同時に危険と隣り合わせでもあるのです。
それでも、毎日怪我なく帰ってきているのは、本人やその周囲の色んな人の努力の結果なのです。
怪我のなく、「ただいま」と言って帰宅される日が毎日、毎日継続していく。
そんなのが続くと、いいですね。
まとめ。
【安衛法】
第31条の3 建設業で2以上の事業者の労働者が一の場所において機械で作業する作業で 作業する注文者は、労働災害を防止するための措置をとらなければならない。 |
【安衛則】
第662条の5 注文者は、法第31条の3第1項の機械について必要な措置をとらなければならない。 |
第662条の6 注文者は、パワー・ショベル等について必要な措置をとらなければならない。 |
第662条の7 注文者は、くい打機等についての措置について必要な措置をとらなければならない。 |
第662条の8 注文者は、移動式クレーンについての措置について必要な措置をとらなければならない。 |